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本編
100.夜空に輝く満月に誓う想い
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夜空に満月が昇る晩、花咲く『魔法の花園』で黒狼王子と白豚王子が共に過ごせる最後の夜が訪れる。
夢見心地で歩んでいた白豚王子は、月明かりに照らし出される巨大な暗黒色の狼を見つけ、喜々として駆け寄っていく。
「ダーク!」
振り返る黒狼に白豚王子は抱き付こうとして飛び込み、黒狼は腕を広げフワリと抱き留める。
フワフワの胸毛に抱き付いて頬擦りしていた白豚王子は、おもむろに黒狼を見上げ躊躇いがちに口を開く。
「ダーク、隣国が大変な事になってるって聞いたよ。心配だよね……」
『ああ、そうだな。明日、ここを発つ事になった……』
黒狼王子は返答しつつも、これが最後の逢瀬になるのだと考えれば、腕の中にある白豚王子の温もりを手放したくないと思ってしまう。
(いっそ、このまま時が止まってしまえばいいのに……そうすれば、二人でずっと共に居られる。欠けていた心が満たされたまま、幸福でいられるのに……だが、それは叶わない夢だ。これは、幸福な夢の一時でしかないのだから……)
気を落とした様子の黒狼を励まそうと、白豚王子が真剣な表情をして告げる。
「難民達の事は大丈夫だよ。僕、頑張るからね!」
『……無茶はしなくていい。悪役を演じてるとはいえ、自己犠牲が過ぎるからな』
「全然、大丈夫だよ。甘い考えかもしれないけど、やっぱりみんなでハッピーエンドになりたいし、僕、絶対にみんなが幸せになれるように頑張るからね!!」
無理をしてしまいそうな白豚王子を黒狼王子は案じるが、白豚王子は皆の為に頑張りたいのだと力強く語り、揺るがない信念を感じさせた。
「必ず、みんなをハッピーエンドにするんだ」
黒狼王子は白豚王子のたゆまぬ努力と献身を垣間見てきたからこそ、尚更、そのひたむきな真意が理解できる。
白豚王子の言葉が心に染み入り、黒狼王子は頷き返す。
『ああ、そうだな』
――夜空に浮かぶ月に雲が掛かり、辺りが一瞬闇に包まれ、黒狼の金色に光る目だけがそこに浮かぶ。
(王族として生まれた使命があり、お互いに背負う宿命があり、いずれは違える運命であっても、願う事は共に同じ唯一の真意)
――月に掛かる雲が流れていき、満月が辺りを明るく照らすと、そこには獣化を解いた黒狼王子の姿があった。
月明かりに照らし出される黒狼王子は端麗で気高く、どこか神秘的な雰囲気を纏うその姿は神聖な存在にすら感じられる。
白豚王子がうっとりと見惚れていると、黒狼王子は白豚王子の頬に手を添えて、月を思わせる金色の目で真っ直ぐに見据え告げる。
「今宵の満月に誓おう。俺の想いも同じく、共にあり続けると」
真摯な眼差しを白豚王子に向け、黒狼王子は誓った。
「闇夜に浮かぶ月の如く、姿は見えずとも夜空にあり続ける月と同じく、俺の真意も共にあり続けると誓う」
満月に照らされるその光景は、厳かで神聖な儀式のようにも見えた。
白豚王子が心を奪われ只々見惚れていると、黒狼王子の相貌が白豚王子に近付いていき、顎が掬われてそっと唇が触れる。
刹那の時の後、黒狼王子の相貌が離れていき、白豚王子は混乱する。
(え? 今、何したの? ダークの顔が近付いて、唇に触れた気がしたんだけど? ダーク、僕に何したの? え? ええ? えええ?)
困惑して固まっている白豚王子に、黒狼王子は微笑みを浮かべ悪戯っぽく囁く。
「お返しだ。俺からしてもいいだろう?」
優しく微笑む黒狼王子に白豚王子は口付けられたのだとようやく理解が追いつき、白い肌がどんどん赤くなり全身を真っ赤にして、プルプルと震えて叫ぶ。
「ダ、ダ、ダ、ダーク! な、な、な、なんで!! キ、キ、キ、キッスーーーー!?」
(キスされた!! ダークが大好きだけど、キスされたいなんて僕は思って――たのかな? そんな願望が僕にあったの!? でも、全然嫌じゃないし、むしろ嬉しいって言うか――ダークは獣姿でも人姿でも超絶格好良いし、そんなダークが僕は大好きで、キスされる夢を見るほど好きで、大好きで、好きで、キスで――)
口付けの衝撃に白豚王子はキャパオーバーし、プシューと蒸気を立ち昇らせてオーバーヒートし、目をぐるんぐるんと回して倒れ――
「はぅわぁ~……」
「おっと、大丈夫か?」
――そうになるところを黒狼王子が抱き留めて、端正な相貌が近付いて覗き込む。
黒狼王子の唇が目前に見えて、白豚王子は更に熱に浮かされ、ぶつぶつと呟く。
「ダ、ダークが、ぼ、僕に、キ、キ、キ、キ、ッス、ス、ス、スキ、キス、スキ」
「ん? キスして欲しいのか」
白豚王子の呟きに首を傾げる黒狼王子は、口付けを強請られたのだと解釈し――
チュッ
――軽く唇に口付けして、ワンテンポ遅れて白豚王子が小さな悲鳴を上げる。
「きゃあぁっ!」
「なんだ、その反応は? 俺には散々してきただろう? ……ふ、ふふふ、あはは」
白豚王子の可愛い悲鳴に一瞬きょとんとしていた黒狼王子だったが、自分は大胆な事を平気でする癖に軽い口付け程度で過剰反応する白豚王子が可笑しくて、笑いが零れてしまう。
楽しげに笑う黒狼王子の笑顔が眩しくて、白豚王子が糸目をショボショボさせていると、黒狼王子は淡紅色の柔らかい髪を撫でて顎を擽り、面白がって口付けをする。
頬や鼻や額や目元などいたる所にバードキスされて、白豚王子はパニックに陥り堪りかねて泣き言を喚く。
「わ、わ、わ、わ! ダ、ダ、ダ、ダーク!! も、もも、もももう、い、いい、いいよぉ! そんなにされたら、僕おかしくなっちゃうよぉ! 大好きなダークの過剰摂取で好きが爆発して死んじゃうよぉ!! ごめんなさい、もう許してぇ!?」
「はははは。そうか、それは困ったな」
白豚王子が必死に訴えるもので、黒狼王子は仕方なく眉尻を下げて口付けを止め、代わりに白豚王子を抱き寄せる。
「では、触るだけで許してやろう」
「ひゃあぁっ!」
黒狼王子の腕の中に囚われ抱きしめられる白豚王子は小さく悲鳴を上げて、衝撃の余り抵抗する気力も無くなり大人しく撫でられる。
触り心地の良いフワフワの髪やもちもちの肌や弾力のある身体の感触を黒狼王子は堪能して、いつものお返しと言わんばかりに抱きすくめて頬擦りし、髪に鼻を埋めて匂いを嗅ぐ。
「やはり良い匂いだ、美味そうな匂いがする。それに、とても温かいな」
「ダ、ダークの方が良い匂いするし、ダークの手なんだかすごく気持ち良い……」
優しく温かい大きな手に頭や背中を撫でられて、心地良い感触と包み込まれる安心感に白豚王子はフワフワとした気分になり、夢見心地で次第に微睡んでいく。
暫く撫で続けていた黒狼王子は、鼻を鳴らす白豚王子に気付いて呟く。
「あ、また寝たな」
「……ぷひぃ、ぷひぃ」
心地良さそうに寝息を立てている白豚王子を覗き込み、黒狼王子は頬をプニプニと突っついてぼやく。
「そんなに無防備でいたら、食べてしまうぞ?」
白豚王子はむにゃむにゃと寝ぼけながら、黒狼王子の手にすりすりと頬擦りする。
腕の中で安心しきり擦り寄ってくる姿を見てしまうと、胸がキュンと切なくなって黒狼王子は起こしてしまうのが忍びなくなってしまう。
最後の一時を惜しみつつ、黒狼王子は白豚王子を優しく抱きしめて、寝かしつけたのだった。
寝所のベッドへと白豚王子を運び、寝顔を見つめながら黒狼王子は考えていた。
(現在、祖国の危機的状況を打開する為には、王城で厳重に保管される黒狼石の封印を解き脅威の力を駆使するしかない。そして、その力を使えるのは呪われの色を持つ俺だけなのだ。あの力を使う他に方法はない)
黒狼王子がその暗黒色から呪われの王子と呼ばれる最たる所以は、黒狼石の強大な力を使役できる唯一の存在であるからだった。
それと同時に、黒狼石に宿る悪魔に魅入られる『暗黒色を持つ者』は、力を駆使すればするほど悪魔に狂わされ、精神が崩壊して狂人へと変異し化け物に成り果ててしまうのだ。
『暗黒色を持つ者』が狂えば強大な脅威になる為、そうなる前に自決する因習があり、短命な事から使い捨てとして扱われてきた。
(祖国だけではなくひいては同盟国を救う事にも繋がるのだ。今宵の満月に誓った、二人の真意を必ず果たすと……フランが俺に特別な意味をくれたのだから、大丈夫。悪魔に惑わされたりなどしない、俺は狂いなどしない)
白豚王子との出会いから思い出を振り返り、黒狼王子は決意した。
(長きに渡る紛争に終止符を打つ。その為なら、どんなに事でも耐え抜いてみせる。俺は気高き神獣フェンリルの末裔、紛争を終結させ悪魔に打ち勝つ者、ダーク!)
心地良さそうに眠る白豚王子を見つめ、黒狼王子は思う。
(紛争が終わり安定したら、フランを迎えに来よう。フランを蔑ろにするこんな国より、獣人の国の方がきっと幸せになれる――否、それは言い訳だな、俺が離れ難いだけだ。フランが望むなら、どこへでも連れて行こう……)
黒狼王子は白豚王子の髪を梳いて、額におまじないの口付けをし囁く。
「……次は攫いに来る……それまで、良い夢を……」
幸福な夢を見る白豚王子にそう言い残し、黒狼王子は黒い影に溶けて立ち去っていった。
こうして、満月の夜に見る甘い夢の一時は終わりを迎えたのだ。
◆
夢見心地で歩んでいた白豚王子は、月明かりに照らし出される巨大な暗黒色の狼を見つけ、喜々として駆け寄っていく。
「ダーク!」
振り返る黒狼に白豚王子は抱き付こうとして飛び込み、黒狼は腕を広げフワリと抱き留める。
フワフワの胸毛に抱き付いて頬擦りしていた白豚王子は、おもむろに黒狼を見上げ躊躇いがちに口を開く。
「ダーク、隣国が大変な事になってるって聞いたよ。心配だよね……」
『ああ、そうだな。明日、ここを発つ事になった……』
黒狼王子は返答しつつも、これが最後の逢瀬になるのだと考えれば、腕の中にある白豚王子の温もりを手放したくないと思ってしまう。
(いっそ、このまま時が止まってしまえばいいのに……そうすれば、二人でずっと共に居られる。欠けていた心が満たされたまま、幸福でいられるのに……だが、それは叶わない夢だ。これは、幸福な夢の一時でしかないのだから……)
気を落とした様子の黒狼を励まそうと、白豚王子が真剣な表情をして告げる。
「難民達の事は大丈夫だよ。僕、頑張るからね!」
『……無茶はしなくていい。悪役を演じてるとはいえ、自己犠牲が過ぎるからな』
「全然、大丈夫だよ。甘い考えかもしれないけど、やっぱりみんなでハッピーエンドになりたいし、僕、絶対にみんなが幸せになれるように頑張るからね!!」
無理をしてしまいそうな白豚王子を黒狼王子は案じるが、白豚王子は皆の為に頑張りたいのだと力強く語り、揺るがない信念を感じさせた。
「必ず、みんなをハッピーエンドにするんだ」
黒狼王子は白豚王子のたゆまぬ努力と献身を垣間見てきたからこそ、尚更、そのひたむきな真意が理解できる。
白豚王子の言葉が心に染み入り、黒狼王子は頷き返す。
『ああ、そうだな』
――夜空に浮かぶ月に雲が掛かり、辺りが一瞬闇に包まれ、黒狼の金色に光る目だけがそこに浮かぶ。
(王族として生まれた使命があり、お互いに背負う宿命があり、いずれは違える運命であっても、願う事は共に同じ唯一の真意)
――月に掛かる雲が流れていき、満月が辺りを明るく照らすと、そこには獣化を解いた黒狼王子の姿があった。
月明かりに照らし出される黒狼王子は端麗で気高く、どこか神秘的な雰囲気を纏うその姿は神聖な存在にすら感じられる。
白豚王子がうっとりと見惚れていると、黒狼王子は白豚王子の頬に手を添えて、月を思わせる金色の目で真っ直ぐに見据え告げる。
「今宵の満月に誓おう。俺の想いも同じく、共にあり続けると」
真摯な眼差しを白豚王子に向け、黒狼王子は誓った。
「闇夜に浮かぶ月の如く、姿は見えずとも夜空にあり続ける月と同じく、俺の真意も共にあり続けると誓う」
満月に照らされるその光景は、厳かで神聖な儀式のようにも見えた。
白豚王子が心を奪われ只々見惚れていると、黒狼王子の相貌が白豚王子に近付いていき、顎が掬われてそっと唇が触れる。
刹那の時の後、黒狼王子の相貌が離れていき、白豚王子は混乱する。
(え? 今、何したの? ダークの顔が近付いて、唇に触れた気がしたんだけど? ダーク、僕に何したの? え? ええ? えええ?)
困惑して固まっている白豚王子に、黒狼王子は微笑みを浮かべ悪戯っぽく囁く。
「お返しだ。俺からしてもいいだろう?」
優しく微笑む黒狼王子に白豚王子は口付けられたのだとようやく理解が追いつき、白い肌がどんどん赤くなり全身を真っ赤にして、プルプルと震えて叫ぶ。
「ダ、ダ、ダ、ダーク! な、な、な、なんで!! キ、キ、キ、キッスーーーー!?」
(キスされた!! ダークが大好きだけど、キスされたいなんて僕は思って――たのかな? そんな願望が僕にあったの!? でも、全然嫌じゃないし、むしろ嬉しいって言うか――ダークは獣姿でも人姿でも超絶格好良いし、そんなダークが僕は大好きで、キスされる夢を見るほど好きで、大好きで、好きで、キスで――)
口付けの衝撃に白豚王子はキャパオーバーし、プシューと蒸気を立ち昇らせてオーバーヒートし、目をぐるんぐるんと回して倒れ――
「はぅわぁ~……」
「おっと、大丈夫か?」
――そうになるところを黒狼王子が抱き留めて、端正な相貌が近付いて覗き込む。
黒狼王子の唇が目前に見えて、白豚王子は更に熱に浮かされ、ぶつぶつと呟く。
「ダ、ダークが、ぼ、僕に、キ、キ、キ、キ、ッス、ス、ス、スキ、キス、スキ」
「ん? キスして欲しいのか」
白豚王子の呟きに首を傾げる黒狼王子は、口付けを強請られたのだと解釈し――
チュッ
――軽く唇に口付けして、ワンテンポ遅れて白豚王子が小さな悲鳴を上げる。
「きゃあぁっ!」
「なんだ、その反応は? 俺には散々してきただろう? ……ふ、ふふふ、あはは」
白豚王子の可愛い悲鳴に一瞬きょとんとしていた黒狼王子だったが、自分は大胆な事を平気でする癖に軽い口付け程度で過剰反応する白豚王子が可笑しくて、笑いが零れてしまう。
楽しげに笑う黒狼王子の笑顔が眩しくて、白豚王子が糸目をショボショボさせていると、黒狼王子は淡紅色の柔らかい髪を撫でて顎を擽り、面白がって口付けをする。
頬や鼻や額や目元などいたる所にバードキスされて、白豚王子はパニックに陥り堪りかねて泣き言を喚く。
「わ、わ、わ、わ! ダ、ダ、ダ、ダーク!! も、もも、もももう、い、いい、いいよぉ! そんなにされたら、僕おかしくなっちゃうよぉ! 大好きなダークの過剰摂取で好きが爆発して死んじゃうよぉ!! ごめんなさい、もう許してぇ!?」
「はははは。そうか、それは困ったな」
白豚王子が必死に訴えるもので、黒狼王子は仕方なく眉尻を下げて口付けを止め、代わりに白豚王子を抱き寄せる。
「では、触るだけで許してやろう」
「ひゃあぁっ!」
黒狼王子の腕の中に囚われ抱きしめられる白豚王子は小さく悲鳴を上げて、衝撃の余り抵抗する気力も無くなり大人しく撫でられる。
触り心地の良いフワフワの髪やもちもちの肌や弾力のある身体の感触を黒狼王子は堪能して、いつものお返しと言わんばかりに抱きすくめて頬擦りし、髪に鼻を埋めて匂いを嗅ぐ。
「やはり良い匂いだ、美味そうな匂いがする。それに、とても温かいな」
「ダ、ダークの方が良い匂いするし、ダークの手なんだかすごく気持ち良い……」
優しく温かい大きな手に頭や背中を撫でられて、心地良い感触と包み込まれる安心感に白豚王子はフワフワとした気分になり、夢見心地で次第に微睡んでいく。
暫く撫で続けていた黒狼王子は、鼻を鳴らす白豚王子に気付いて呟く。
「あ、また寝たな」
「……ぷひぃ、ぷひぃ」
心地良さそうに寝息を立てている白豚王子を覗き込み、黒狼王子は頬をプニプニと突っついてぼやく。
「そんなに無防備でいたら、食べてしまうぞ?」
白豚王子はむにゃむにゃと寝ぼけながら、黒狼王子の手にすりすりと頬擦りする。
腕の中で安心しきり擦り寄ってくる姿を見てしまうと、胸がキュンと切なくなって黒狼王子は起こしてしまうのが忍びなくなってしまう。
最後の一時を惜しみつつ、黒狼王子は白豚王子を優しく抱きしめて、寝かしつけたのだった。
寝所のベッドへと白豚王子を運び、寝顔を見つめながら黒狼王子は考えていた。
(現在、祖国の危機的状況を打開する為には、王城で厳重に保管される黒狼石の封印を解き脅威の力を駆使するしかない。そして、その力を使えるのは呪われの色を持つ俺だけなのだ。あの力を使う他に方法はない)
黒狼王子がその暗黒色から呪われの王子と呼ばれる最たる所以は、黒狼石の強大な力を使役できる唯一の存在であるからだった。
それと同時に、黒狼石に宿る悪魔に魅入られる『暗黒色を持つ者』は、力を駆使すればするほど悪魔に狂わされ、精神が崩壊して狂人へと変異し化け物に成り果ててしまうのだ。
『暗黒色を持つ者』が狂えば強大な脅威になる為、そうなる前に自決する因習があり、短命な事から使い捨てとして扱われてきた。
(祖国だけではなくひいては同盟国を救う事にも繋がるのだ。今宵の満月に誓った、二人の真意を必ず果たすと……フランが俺に特別な意味をくれたのだから、大丈夫。悪魔に惑わされたりなどしない、俺は狂いなどしない)
白豚王子との出会いから思い出を振り返り、黒狼王子は決意した。
(長きに渡る紛争に終止符を打つ。その為なら、どんなに事でも耐え抜いてみせる。俺は気高き神獣フェンリルの末裔、紛争を終結させ悪魔に打ち勝つ者、ダーク!)
心地良さそうに眠る白豚王子を見つめ、黒狼王子は思う。
(紛争が終わり安定したら、フランを迎えに来よう。フランを蔑ろにするこんな国より、獣人の国の方がきっと幸せになれる――否、それは言い訳だな、俺が離れ難いだけだ。フランが望むなら、どこへでも連れて行こう……)
黒狼王子は白豚王子の髪を梳いて、額におまじないの口付けをし囁く。
「……次は攫いに来る……それまで、良い夢を……」
幸福な夢を見る白豚王子にそう言い残し、黒狼王子は黒い影に溶けて立ち去っていった。
こうして、満月の夜に見る甘い夢の一時は終わりを迎えたのだ。
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