錬金術にしか興味のない最弱職アルケミストの異世界勘違い道中

奏穏朔良

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トロイヤ大陸の中心に位置する、チェントロ国。
唯一女神の森を管理することを許されたソラーレの一族が治める国。

そのチェントロ国に、この度、ひそかに各国の王族が集まっていた。

議題は勿論、突如降り立った女神の御子、ナタ・ディアーナについてである。

「おや?ソールは再び管理者になったのかい?」

チェントロの席に座すソールの姿に、北のノルド国代表、レトゥム・テネーブル第一王子は王子は意外そうに、魔族の特徴であるその大きな黒目を丸くする。
前回、御子の怒りを買ったとされた時にはソールの兄が急遽代理で管理者となり、祭壇の建設を進めた。
それは現場にいたソールも御子の怒りを買った可能性があったからだ。

「なんかねぇ、ナタ様全然怒ってなかったみたいだから、うちの方から再推薦したのぉ。まあ、戻るにしてももっと時間かかるかと思ったけどねぇ。」

と、聞こえてきた間の抜けた話し方に、レトゥムが視線をずらせば、だらしなく頬杖をついた東のエスト国代表、ネプト・フィウーメの姿が目に入る。仮にも国を代表してきているのに……と、レトゥムは苦言を吐きたくなったが、それよりも気になった言葉に吐き出しかけた苦言を飲み込んだ。

「ま、まさか、お会いしたのかい!?女神の御子に!?」

レトゥムの言葉に「まぁ、それは意外ですわ。女神の森を燃やしたのは獣人であるはずなのに……」と、西のオーヴェスト国代表、ファウナ・フォレスタ王女がその小さな口に手を添えた。

そんな二人の驚きようを横目に「へへへ~羨ましいでしょぉ?僕あの方の顔面全身で浴びたんだぁ~。」とにへにへ気持ち悪い笑みを浮かべるネプト。
正直何を言っているのか分からない。とりあえずレトゥムは気持ち悪いな……、と自身の座る椅子をネプトから少し遠ざけた。

そんなネプトをフォローするように、コホン、と一つ咳払いをし、

「私のまだやり残したことがございましたからネプト様の口添えは大変ありがたく……未熟者ですが、再び管理者としての仕事に誠心誠意努めたいと思います故、よろしくお願いいたします。」

と、お手本のように微笑んで見せるソール。
しかし、

「いや、単純にソールの兄貴が神の怒りの矛先向けられるのにビビっただけだろ。前回だって喚いてばっかりでうろせーったらねぇ。」

そう鼻で笑ったのは南のスッド国代表、ウェスタ・フィアンマ王位第一継承者。一つに結い上げられた赤い髪を揺らし、席に踏ん反り返る彼女の言い分に、ソールは

「……今は女神の御子様についてのみ、お話しましょう。」

と苦笑を零した。

「そうですわね。ネプト様、お会いされた時、御子様はどんなご様子でしたの?」

ファウナの言葉に、ネプトはでれりとその頬を緩ませる。レトゥムは更に席をずらした。

「なんかねぇ、織物が気に入ったみたいで嬉しそうにくるくるしてたのぉ。それがもう、ほんっっっとうに綺麗で!光り輝く月明かりを反射する御髪と伏せられた金の瞳の美しさと言ったら!」

きゃー!とくねくねするネプトにウェスタは道端の糞を見るかのような視線をネプトに向ける。
しかし気にも留めないネプトは

「しかも僕の怪我の事を気にしてくださってぇ!手からいきなりポーションが生成された時には驚いたなぁ~!」

「待て待て待て!」

サラリとぶち撒けられたとんでもない内容に、思わずレトゥムから静止の声が上がった。

「ポーションが手のひらで生成されただって!?」

錬金釜も無しにポーションを錬成するなんて聞いたことがない。まさに神の御業だろう。

実際にはナタも錬金釜を使って錬成したものをアイテムボックスに入れているだけなのだが、アイテムボックスの存在を知らない彼らからすればまさに奇跡の業なのだ。

「……ああ、そういえば私の護衛騎士も言っていました。いつの間にかその手に状態異常回復ポーションを持っていた、と。」

と、ソールが付け足した言葉にウェスタが目をむく。

「あ!?なんでそれ早く言わねーんだよ!」

噛みつくように吠えるウェスタに「一応、兄上にも報告はしたのですが……」と、今度はソールが目を丸くする番だった。

「あんのクソ皇子ぃ……やっぱ殴っておくべきだったか?」

「おやめください。一応あんなんでも我が国の第二皇子なのです。一応。」

「本音が漏れておりますわよ、ソール様。」

二人のやり取りに思わずと言った具合にファウナが言葉を挟む。
そして「御子様の話に戻りましょう。」と話を本筋に戻した。

「偉大なるルーナ・ディアーナ様が月を司る女神ですので、てっきり月に関する神かと思っていましたが、ポーションを作り出すとなると薬学や錬金術に関する神なのでしょうか?」

そう頬に手を添え小首を傾げたファウナに、レトゥムは「必ずしもそうとは言えないんじゃないかな?」と腕を組む。

「ソールの話によれば弓で雷を落としたんだろう?しかもその時『神の裁きジュスティーツィア・ディアーナ』と言っていたのなら、もしかしたら審判の神かもしれないよ。」

と、考察を述べたレトゥムに「……うぅ~ん。」と眉頭を寄せてネプトが唸る。

「そーゆー感じではなかったかなぁ?僕の怪我への反応から見ても薬学や治癒に関する神様かもぉ。」
「……そうですね、私が呪毒に犯された時もすぐに対応してくださいましたし、対価を求める様子はありませんでした。そのあたりが妥当な気がします。」

ネプトとソール、直接会ったことのある二人の言葉に「んじゃ、とりあえず治癒の神って民衆には説明しときゃいーだろ。」とウェスタは頭の後ろで腕を組んだ。

「……しかし、そうなるとソール様もネプト様の御子直々にその恩恵を与えられた、ということになるのでしょうか?」

と、少し眉尻を下げたファウナに、「もし御子様が治癒を司る神であるのなら、そういう事になるかもね。」とレトゥムが頷く。それにウェスタが顔を顰め

「カーッ!そうなりゃチェントロとエストが調子に乗るじゃねぇーか!」

なんて王族らしくない物言いで吐き捨てた。
それに苦笑しつつもソールやネプトも機嫌を損ねる素振りはなく、

「それ僕たちがいるとこで言っちゃうのウェスタ様って感じぃ。」
「は?なんでお前らに遠慮すんだよ。さっさと腐ってるトップを挿げ替えろや。」
「第十三王子に無理言う~~。」

と軽口をたたいている。

「……でも、そもそも恩恵や慈悲を与えたって言うのは違うのかもぉ。」

だが、不意にネプトがその顔に影を落とした。そんなネプトに「あ?なんでだ?」とウェスタが怪訝そうに眉を寄せる。

「『なんで神が下界の者をいちいち気にすると思うんだ?』って言ってたんだよぇ。」

それも心底不思議そうに、と続けたネプトの言葉にその場にいた誰もが思わず息を飲んだ。
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