錬金術にしか興味のない最弱職アルケミストの異世界勘違い道中

奏穏朔良

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一方、そんなカルロの嘆き声など聞こえていないナタは、一旦マイルームでアバターをSRパーツ、白髪ロングヘアと薄い黄色の瞳をセットし、女神の森へと転移した。

ひと月経てばかなりの供物が祭壇に積み上がっており、「うへへ、全部タダ~、ラッキー。」と鼻歌をふんふん鳴らしてナタは供物をアイテムボックスにしまっていく。
以前に比べて花や薬草が多く、それがよりナタの機嫌を良くさせていた。

しかし、

「あ、御子様……」

(……うん、どうせそうなると思ったよ。チッ!)

聞こえてきた声にナタは内心悪態を付きながら、声のした方へと顔を向けた。
そして、声の主の姿を見て、ナタは目を丸くした。

「……えーと、確か、ソール・ソラーレ?」
「はい。御子様に覚えていただき光栄に存じます。」

どこか聞き覚えのある声だとは思ったがまさかこの世界で最初に出会った人と再会するとは。

(あ、でもソラーレが森の管理者とかなんちゃらって言ってたような……)

それならここで再会しても別に不思議じゃないのか、と思ったところで

(あれ?なんかネプトとかいう人が管理者替わったとか言ってなかったっけ?)

と、ナタは僅かに首を傾げる。疑問が全て顔に出ている。

そんなナタに耐えきれないと言わんばかりに「フフッ。」と小さく笑い声をもらしたソールは

「ネプト様の口添えで再び管理者となったのです。」

そうナタの疑問に対しての答えを口にした。

「ふーん……なんか大変そうだね。」

と他人事感満載の言葉を吐くナタにソールは眉尻を下げて苦笑をもらす。
そんなソールを横目に、ナタは再び供物をアイテムボックスに仕舞い始めた。
そろそろと近くに寄ってきたソールはそんなナタの手元を覗き込み、「それはどこかに転送しているのですか?」と疑問を口にした。

それにナタは首を傾げて

「え、(アイテムボックスに)取り込んでるだけですけど……」

と何言ってんだ?と言わんばかりの目をソールに向ける。
しかし逆にソールが「取り込む……?」と疑問符を飛ばしており、そこでようやくナタはあれ?と何かに気が付いた。

「……え、アイテムってどう持ち運んでるんですか?」
「どうって……手とか、大きい物なら荷馬車でしょうか?」

ナタの問いにソールは顎に指を添え、眉尻を下げた。
それにナタは更に「ま、魔法は?アイテムボックスは⁉」と言葉を重ねる。

「浮かせる魔法はあっても常に魔力の消費されるので、結局は手で運んだ方が楽ですね……そもそも魔法が使える人間は限られていますし。あいてむぼっくす、というのはスキルでしょうか?生憎、私は聞いたことなくて……」

しかし、ナタの言葉にソールが更に眉を下げるので、初めてナタは

「す、ステラートの人間なのに⁉なんで⁉」

と、本気で困惑を露わにした。

「な、なんでと言われましても……」

ナタの反応にソールが口ごもるも、「何で⁉この世界の人間なのになんで使えないの⁉獣人も魔族もエルフも使えないの⁉何でぇ!!?」と、完全に混乱しているナタはソールに更に詰め寄った。

そして、ナタははたと気付く。
当たり前に使えると思っていたからどこでも好き勝手にアイテムボックスから出し入れしていたが、もしかしてこれが人外と勘違いされた原因なのでは?と。

(嘘だろ~~~~!?)

だって異世界転移じゃアイテムボックス定番じゃん。アイテムボックスがなくても、魔法鞄とかがインベンドリーとか定番中の定番じゃん!

ナタは思わず頭を抱え、その場に蹲る。それに「どうされました!?」とソールが声をかけるも口から出るのは意味のない呻き声のみ。

そしてひとしきり唸った後、ナタはそろりと顔を上げ、

「俺は人間デス。アイテムボックスとかシリマセン。」

と今更過ぎる誤魔化しを試みた。

それに、まるで聖母のような慈愛に満ちた笑みを浮かべたソールは

「さすがに無理あると思います。」

とバッサリ切り捨てた。

だよね、俺もそう思う。ナタは再び頭を抱えた。


一方でそんなナタの様子を見て、ソールは以前の会議で出た推論、『ナタ・ディアーナは生まれたばかりの神ではないのか?』という説が正しいのではないか、と考えていた。


人間に出来ないということを本気で困惑して、あの取り乱し様……どう見ても演技とは思えなかった。

生まれたばかりで下界を知らないからこそ、神ができることと人間のできることの境界線が曖昧なのではないか?
ナタにとっての当たり前が人間にとっての当たり前ではない。その根本自体を理解出来ていないのではないか?

ソールが考察を深めているところ残念だが、本当にそいつはただの人間である。注釈として異世界産、と付くが。

「あの、人間だけど、俺も人間だけどさ、その、1つ聞きたいことあるんだけど……」

と、吃りながらナタがそろりと手を挙げた。

「も、もしかして、転移とかも、その、ポンポン出来ない……?」
「まあ、そうですね……ナタ様のように魔法を展開する素振りも見せずに突然消えるような転移は見た事ないですね……」

ナタは再び両手で顔を覆った。

嘘だろ異世界。ギルドや魔法使いがいるのに異世界あるあるが尽く通じないなんて!

結局のところリアルとフィクションは別物ということなのだろう。

ナタはなんかもうヤケクソな気分になり

「え、ナタ様!?」

「も~~~!知らなぁぁぁあ~~~~い!!!」

その場に大の字にひっくり返った。

驚きだろ?こいつ一応17歳なんだぜ??
5歳児もびっくりな素早い大の字。

「わけわかんない!逆に何なら出来るのさ(この世界の)人間は!!!」

と、逆ギレ満載の不満をぶちまけるナタに、ソールは少し視線をうろつかせた後

「な、ナタ様、お召し物が汚れてしまいますよ。」

と、ナタを抱き起こし、「わかんないもんはわかんないもん!誰も教えてくれなかったし!」とまだ喚くナタの背をさすり「そうですよねぇ、わかんないことばかりですよねぇ。」と優しく声を掛け続けた。

流石に年が近い少年にそうあやされては、ナタも少し気まずくなり、喚き声は次第に口をもごもごとさせる小声になり、

「……騒いでごめんね。」

と、錬金術で作った魔法石をソールの手にコロンと落とした。詫びのくせにレア度高くないあたりちょっとケチくさい。

そして気恥しさのあまり、ナタは顔を俯いたまま、スラムへと転移するためナタにしか見えない操作パネルをスライドした。

ちなみに肝心のソールは

(なんだろう……この懐かない猫が懐いたかのような……人見知りの時期の幼子を相手いているような……)

転移の際ちらりと手を降って消えたナタに

(もしかしてこれが……父性……!?)

なんかアカン扉開いてた。閉めろそんな扉。
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