処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ

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紅き劇場、開幕の斬歌

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黒と紅の貴族装束、赤い瞳には常に笑みを湛える《グラン=バロック》。

「若き剣士よ。さあ、幕は上がった……君はどんな“役柄”を演じてくれるのかな?」

対するは、正義を信じる熱血の剣士見習い――シリル・アーデン。

「ふざけるな……人を“見せ物”にするつもりか!」

「ええ、ええ。苦悶、葛藤、怒り、絶望……そのどれもが、実に美しい」

不敵に微笑むグラン=バロックが、指先で空を切ると――
彼の足元から血が滲み、無数の紅い鎖が《血鎖顕現(ブラッドリンク)》としてせり上がる。

「っ……!」

シリルは即座に跳び退き、抜刀と同時に踏み込む。
鮮やかな一閃。しかし、グランの身体はふっと“霧”となって消える。

「――偽物か!」

「ふふ、見抜けるかい? 《鮮血分身体(ブラッド・ミラージュ)》。」

“グラン=バロック”が三人、四人、五人……と、次々に増殖する。

シリルは剣を振るい、幻影を一体ずつ切り裂いていく。
だが切っても切っても霧となり、また現れる。
やがて彼の足に、紅い切り傷が走った。

「……っ!?」

「ふふ、いただきましたよ……君の“血”」

グランの微笑が深くなる。
足元から這い上がるのは、さっきまでの幻影ではない。
――シリル自身の血から伸びる血鎖。

「さあ、第二幕だ……紅き劇場の主役は、君自身だよ。シリル・アーデン」

血鎖が跳ね上がり、彼の足を、腕を、喉元を縛ろうとする。
それでもシリルは、吠える。

「俺は……俺は、お前なんかに負けない!」

剣を強く握り締め、地面に足を打ち付けてその勢いで回転斬り。
巻き上がる風と共に、鎖を断ち切り、血の霧を払い散らす。

グラン=バロックがゆっくりと立ち上がる。
今度こそ本体を叩く。シリルは、彼の存在に焦点を合わせた。
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