処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ

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人形姫は涙の檻にて笑う

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嘆きの人形姫《エルヴィラ》は、血染めのドレスの裾を引きずり、顔を覆う長い髪の隙間から、涙に濡れた目がこちらを見ている。

ユージンは剣を構えながら、一歩ずつ進む。
隣には、弓を握るソフィアの姿。

「ここは僕が前に出ます……ソフィアさんは、援護を!」

「了解。でも油断はしないで。あの子、ただの人形じゃないわ……」

次の瞬間、エルヴィラの指先が震える。
細く、儚く、それでいて絶望的な魔力が空間に溢れ出す。

「……目を閉じていたいの。もう見たくないの……でも、あなたたちが来るから……」

――《怨嗟紡ぎ(スレッド・カース)》、発動。

エルヴィラの周囲に“黒糸”が舞い、ユージンとソフィアの足元に絡みつく。
その瞬間、過去の幻影が視界を覆った。

「う……っ!」

ユージンの前に現れたのは、血まみれの父親――
そして剣を持ち対峙するレオン―― 

「やめろ……僕は……僕は……!」

剣を構えた手が震える。
その隙を突くように、幻影の糸がユージンの心を締め上げる。

一方、ソフィアの視界にも現れたのは――
レオンの幻影だった。

「なぜ私を見てくれなかったの……私は、あんなに……っ!」

――矢が放てない。

かつて恋焦がれた男が、自分を見ず、誰にも信じられず処刑台に立った姿が蘇る。

「もういいでしょ? もう充分に、痛んだでしょう……」

エルヴィラの瞳から流れる涙が、黒い液体に変わる。
そしてその涙から、“人形の兵”が幾体も生まれ、ユージンたちに迫る。

「くっ……違う……僕は、もう……憎しみに支配されない……!」

ユージンは叫びと共に、己の心をえぐる幻影に刃を振るった。
ソフィアもまた、震える指で弦を引き、矢を放つ。

幻影の中のレオンが微笑む――「お前には無理だ」と。

「私はもう、“あの頃の私”じゃない!」

矢が唸りを上げて飛び、人形の兵を貫いた。
同時に、ユージンの剣が黒糸を断ち切る。

「……ほぉ……」
エルヴィラが、初めて口元に微笑を浮かべる。

「でもね、私の“舞台”はまだ終わらないの」

エルヴィラの背後に浮かぶ、新たな“後悔の影”。
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