ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

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第三章 ランク戦開催

23話 思わぬ出会い

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「頭…行ってきます。お元気で!!」

「おう!お前ら、しっかりやってこいよ!」


各都市の軍部へと出発するロドたちに別れを告げるトヌス。
笑顔で激励すると振り返り、部下たちの声を背にゆっくりと歩いていくトヌス。

しかし、足元から突然黒い水が湧き出してきた。


「なっ!なんだこりゃ!」


驚いて足を上げたが、それらはドロドロと自分の足にまとわりついてくる。

そして、徐々に人の手の形になり始め、トヌスの足を掴み始めたのだ。


「うわぁぁぁ!!」


驚いて尻餅をつくトヌスに、無数の手は容赦なくまとわりつき、下へ下へと引きずり込んでいく。


「やめろ!やめてくれ!くそっ!なんだこれ!?」

『先生…』

「えっ!?」


もがくトヌスに、どこからともなく突然声がかけられた。

『先生…』

『先…生…』

『先生…』『こんにちは、先生!』『先…生…元気?』『先生?』『…先生!遊ぼうよ!』『先生。』『先生!!』
『先生、先生、先生、先生、先生、先生、先生、先生…』


さまざまな声色で自分を『先生』と呼ぶその声に、トヌスは戸惑いを隠せない。

愕然とした青い顔のまま、力なく黒い手に引かれ、トヌスはそのまま黒い水の中へと沈んでいった。





「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


トヌスは大声をあげて飛び上がった。
どうやら悪夢を見ていたようで、体中に汗をびっしょりかいている。


「なんでぇ…夢かよ。ハァ…」


そう言って大きく息を吐き、座ったまま後ろに両手をつこうとした瞬間、その手が空を切った。

それもそのはず。
彼は木の枝で寝ていたことを忘れていたのである。


「うおっ!!」

ガンッ!

ついたと思った手が空を切り、そのまま後頭部を枝にぶつけ、その反動でバランスを崩し、枝からおしりを滑らせてしまった。


「おぉぉぉぉぉぉ……グハッ!!!」


鈍い音を立てて地面に激突したトヌス。
大きく砂ほこりが巻き上がった。


「ゴホッゴホッ…イテテテ…くっそ!なんだってんだ!?」


煙を手でかき分けていると、胸ポケットに入った煙管に目が止まる。

謎の美女イザムから受け取った謎の『煙管(キセル)』。


『それを使うと魔力を代償にして、あなたが今一番欲しいSRを引くことができますよ。』


彼女のその言葉が頭をよぎった。
結局、彼女はそれだけ言い残し、姿を消したのだが。

ふと、煙管に目を落とす。
口元から吸い口にかけてと雁首(がんくび)から火皿の部分は金色で、羅宇(らう)と呼ばれる火皿と吸い口を繋ぐ部分には唐竹模様が施されている独特のデザイン。

それを眺めていたら、不思議な感覚に襲われた。

吸い口の部分に口を触れたくなる…
艶かしく輝く金色の吸い口に目を奪われてしまう…

少しずつ…少しずつ…煙管を口元へ近づけていくトヌスだったが、不意に我へとかえった。


「はっ!?まっ…まただ!この煙管を見てるとなんだが頭ん中がぼやけていきやがる!くそっ!」


トヌスは頭を横に振り、煙管を再びポケットへとしまった。

ふと空を見上げれば、空が白んできている。


「もうすぐ夜が明ける…。はぁ~さっきの夢…嫌な夢だったな。」


頭を掻きながらそうつぶやくトヌス。
思い出したくもない記憶が頭をよぎり、頭を横に何度も何度も振る。


「…俺もそろそろ向き合えってことなのか。」


大きくため息をついて立ち上がると、トヌスは森を彷徨うように歩き出した。





薄暗い森の中を、一人考えながら歩くトヌス。
すでに夜は明けているが、生い茂る木々の深さは太陽の光を通すことはない。


「あいつらはうまくやってくれるはずだからな…」


ぽつりとつぶやくトヌス。
ジパン国軍の人材不足については、部下たちの軍部登用で解消されるはずである。

理由は単純だ。

彼らが赴く各都市には、彼らと同じ境遇の者が多くいる。
彼らは仕事を欲しているため、声をかければ一気に人が集まるだろう。

そして、それぞれの都市に向かわせるのは、その都市で生まれ育った奴らだ。その土地、人をよく知る彼らならば、うまくやれるはずだ。

そうなるようにシャシイにもお願いしている。

あいつらならあと1ヶ月で問題を解決できる。
トヌスはそれを信じていた。

期待を背負った人間は、時に素晴らしい働きをするものだし、自分の仲間たちはそれを実現できるほどの力を持っていると、トヌスは見抜き信じているのだ。

そうなると、残りの問題は自分である。


「イノチのだんなも酷なことしてくれるぜ。」


『トウト』のプレイヤーたちを一致団結させる方法。
それについて、トヌスには良い案などまったくを持って浮かばない。

シャシイも遠征に行かなければならず、忙しそうだし、他に頼れる知り合いもいない。

現状、相談する者は皆無であり、トヌス的に詰みの状態なのである。


「しかもトウトの街じゃ、俺は有名人…」


公開処刑されそうになった男。
冤罪を証明し、大逆転劇を見せた男。

今のトウトで、トヌスを知らない者はいない。


「人の噂も75日とは言うが…まだまだ全然だしな…」


別に英雄ではないのだから、すぐに忘れ去られると思っていたが、人の興味の矛先はどの世界でも同じだった。

街を歩けば感じられる興味の視線。

トヌスはそれが嫌で嫌で仕方なく、仲間を軍に預けた後、すぐに街を出てここにいる。

知り合いもいない、街にも行きづらい。

もう一度言おう。

トヌスは詰んでいた。


「顔を隠すにも、仮面や被り物じゃ余計目立つしなぁ…くそっ!」


そうつぶやいて、足元にあった小石を蹴り飛ばした。
すると、それは大きな弧を描いて草むらに飛び込んでいく。


「痛てっ!」


聞こえてきたのは聞き覚えのある甲高い声だ。


「…ん?この声は…」


トヌスが声がした方は歩いていき、草をかき分けると、そこには見たことのある蛇面の男が、頭を押さえてしゃがみ込んでいた。


「すまん…。だっ…大丈夫か…?」

「…てぇ。…てめぇ!!何しやがんだ!!」


男は勢いよく立ち上がり、憤りながら振り返ったが、トヌスの顔を見てその動きを止める。


「あっ!」
「おっ…お前は!」


重なる声の片方には動揺の色が混じっている。
驚いたまま固まっている男を見て、トヌスは声を上げた。


「ヘスネビじゃねぇか!!」

「お前は…あの罪人…!」

「…違う。罪人じゃねぇよ。あれは冤罪だっただろ?俺の名前はトヌスだ。」


変な自己紹介だと思いつつ、ヘスネビに名を告げるトヌスに対して、ヘスネビは明らかに動揺して震えている。


(そこまで焦ることかよ…)


怯えすら感じさせるその様子に、トヌスは疑問を持った。


「お前、こんなとこで何やってんだ?」

「てっ…てめぇには関係ねぇだろ!」

「まぁ、そうだけどよ。」


トヌスはチラリとヘスネビのことを見回した。

ボロボロになってところどころに穴が空いたシャツに、汚れて裾が破れたズボンをまとうその姿は、これまでの煌びやかな貴族らしい姿とは大きくかけ離れていて、まるで貧民街の住人のようだ。

足元には焚き火の跡があったが、ヘスネビはトヌスの視線に気づいてこっそりと足で隠そうとした。


「お前、スネク商会から追い出されたのか?」

「…っ」


その問いはヘスネビにとってタブーであったようだ。
突然、大粒の涙を浮かべたかと思えば、子供のように抜き出したのである。


「うわぁ~ん…そうだよぉ!追い出されちまったんだよぉ!ちくしょ~!!」

「おっ…おいおい…」

「うるへぇ!何もかもお前のせいだ!お前なんかに関わったばっかりに!俺は…俺は…うわぁ~ん!」

「とんだ言いがかりだな。殺されかけたのは俺の方だぜ…」


苦笑いしながらつぶやくトヌス。

しかし、ボロボロの服、足元の焚き火の跡を見れば、彼がどこにも行き場をなくし、ここで一人、野宿しながら生き延びていたことが理解できた。

トヌスは小さくため息をつくと、ヘスネビを見てこう告げた。


「はぁ~しかたねぇ。美味い飯、食いにいくぞ。ついて来い。」


その言葉にヘスネビは泣き止んで、唖然とした表情を浮かべていた。
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