◆平民出身令嬢、断罪されて自由になります◆~故郷で待つ幼馴染のもとへ~

ささい

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⋯⋯え、帰ってこれんの?

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一週間後、ニーナの家にほんとに執事が来た。
まじか。


「ほらー、わたしの言ったとおりでしょー」

得意げな顔やめろ。
朝一番にうちに駆け込んで来てすることがそれか。
椅子に座らせてお茶を出す。
ミッカンのジャムを塗ったパンを渡す。

「おばさんはなんて?」

「好きにしなさいって。なんかねえ、ずっと生活の面倒は見てもらってたみたいだよ」

それは見てればわかるが?
おばさん、つまりニーナの母親は普段は近所の子供の面倒をちょろっと見てるだけで収入なんてほとんど無い。

うちの親が心配してたまに収穫の手伝いを頼んだりして手間賃渡してる程度でも困ってる様子を見せなかった。

おばさんが大らかすぎるせいでニーナもこんな……。あほに。なんか泣けてきた。

ニーナが執事とやらと遠くに行くかもしれないから泣きそうなわけじゃない。

「で、ニーナはどうするか決めたのか?」

「うん、行ってみたいから行ってくるね! お土産何が良い」

ん? なんでそんなちょっとピクニック行ってくるねみたいな調子なんだ?

「え、帰ってくんの?」

「え、帰れないの?」

……。

コー茶を淹れ直してニーナの前に置く。
食べ終わったパン皿を下げる。
口の端についてるパンくずを拭う。
朝の二杯目はミルクを入れるからミルクピッチャーも置いてやる。
ミルクの量は気分で変わるから自分で入れるだろ。
今日は多めだろうな。

⋯⋯え、帰ってこれんの?

俺の常識がおかしいのか。これは常識で測れる範囲か?
おかしいのはニーナの頭か。
それは確かだな。

「迎え、いつ来るって?」

「三日後だって。お屋敷、どんなだろーね。貴族さんのお屋敷の中、初めて見るかも」

弾んだ声。
そうだな。初めてだ。
そして、それが、当たり前にずっと続くかもしれないな。

「荷物まとめんのこれから?」

「お洋服とかあんまり持っていかなくていいって。でもお気に入りのワンピ持っていっていいかなあ。
 学園でなら着れるかな。クローの目の色のワンピ!絶対持って行くんだ~」

「……。あっそ。男爵家ならもっといろんな色の服、揃えてもらえるだろ」

「えー、深緑の服たくさんあるかな。クローの目の色にもっと近いのとか!」

そんな地味な色の服、すぐに埋もれるだろ。
もっとキラキラしたきれいな色の服も宝石も好きに手にできるようになるんだから。

「手紙書くね。たくさん書いちゃうかも。毎日出すよ!」

「そんなにたくさんもらっても、収穫忙しくて返せねえよ」

「えー、じゃあ返事は週に一回まとめてで許すよー」

俺は笑って頷いた。届けばな。
仮にニーナから届いたとして、そっちに届くかどうかはわからん。

ニーナは三日後、男爵家の紋章がついた馬車に乗せられて村を出た。

俺はミッカン畑からそれを眺めた。
馬車が見えなくなるまで。
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