新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい

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第八話 話がある、と言ったはずなんですが

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「カレン、今夜は話がある」

夕食の席で、ルーファスは意を決して言った。
母の言葉が頭から離れなかった。
嘘の上に関係は築けない。
正直に言わなければ。
今日こそ、全てを打ち明ける。

「話、ですか」

カレンが淡々と答える。

「ああ。食後に、二人で」

「わかりました」

妻の視線が冷静すぎて、心臓が縮む思いだった。



食後、居間に移動した。
暖炉の前で二人きり。

「それで、話とは何ですか?」

「ああ……その前に」

ルーファスはワインの瓶に手を伸ばした。

「一杯だけ……いや、少しだけ飲んでも?」

「どうぞ」

一杯飲んだ。喉が渇く。
もう一杯。まだ言葉が出てこない。

三杯目。

「……ルーファス様」

「もう少しだけ」

四杯目。

「あの」

「んー……」

五杯目を注ごうとした手が止まった。

「ルーファス様。話があるんですよね?」

「ある。あるんだ」

ルーファスは瓶を置いた。
置こうとした。
少し手元が狂って、テーブルに音を立ててしまった。

「あの、カレン」

「はい」

「俺……いや、私は……」

「俺、で構いませんよ。それで?」

「俺さ……」

ルーファスはカレンを見た。
暖炉の灯りに照らされた妻の顔が、やけに美しく見えた。

「お前って……綺麗だよな……」

「は?」

「いや、前から思ってたんだけど……目とか、すごく綺麗……」

「……話というのは、それですか?」

「違う……違うんだけど……」

ルーファスはふらりと立ち上がった。

そのままカレンの隣に座り直す。

近い。

「ちょっと、近いんですが」

「カレン」

「何ですか」

「俺……お前のこと……」

ルーファスがカレンの手を取った。

「好き……だと思う……」

「……は?」

「いや、わかんないけど……でも、気になる……」

「酔ってますよね?」

「酔ってない。酔ってないぞ」

明らかに酔っている。
目がとろんとしている。

「カレン……俺、ほんとはさ……」

「ほんとは?」

「ほんとは……」

ルーファスの頭が、ゆっくりとカレンの肩に落ちた。

「………………」

寝息が聞こえてきた。

「……話があるんじゃなかったんですか」

返事はない。

カレンは夫の重みを肩に感じながら、天井を仰いだ。

「……はあ」

ため息が漏れた。
使用人を呼んでルーファスを寝室に運ばせた後、カレンは一人で居間に残った。
握られた手の感触がまだ残っている。

「……好き、ですか」

呟いて、首を振った。

「酔っ払いの戯言はデータに含めません」

そう言い聞かせて、自室に戻った。

翌朝のことは、明日の自分に任せよう。
尋問の準備は万端だ。

---

「酔った勢いで言ったことには責任が伴います。覚悟してくださいね」

カレン・ベルンワード侯爵夫人
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