12 / 22
本編
【日向視点】禁止している側
しおりを挟む
学食に着くと視線が勝手に動いた。
居た。入口から一番遠い、窓際の四人掛けの席。
誰かと向かい合って座っている。
知らない男だった。
真白と同い年くらい。
いちごミルクを飲みながら、真白と何か話している。
真白が笑っていた。
肩の力は抜けていて、姿勢も普通で、声も普通に聞こえる。
日向の前では見たことがない顔だった。
今日の日替わり定食を受け取った日向は
気付いたら足を動かしていた。
「真白」
声をかけた瞬間、真白の背筋が伸びた。
さっきまでの柔らかさが消えて、姿勢が正しくなる。
「先輩」
声のトーンも変わっている。
向かいに座っていた男が、ストローをくわえたまま日向を見上げた。
観察するような目だった。
「どーも。柊です。レンの幼馴染」
「……日向」
「知ってます。レンからよく聞くんで」
柊はそう言って、少しだけ口角を上げた。
笑っているのか、面白がっているのか、よく分からない表情だった。
日向は真白を見た。
真白はさっきまでと全然違う顔をしている。
姿勢が固いし挙動不審。
日向の方を見たり、視線を落としたり、落ち着かない。
柊といるときは、あんなに普通だったのに。
「もう食べた?」
「あ、はい。今、食べてました」
「そうか」
会話が続かない。柊がいちごミルクを吸う音だけが聞こえる。
日向は空いている椅子を指差した。真白の隣。
「座っていい?」
「はい!」
返事が早すぎる。声も大きい。
柊が「へえ」という顔をした。視線が日向と真白の間を行き来している。
「先輩、レンのこと気にかけてくれてるんすね」
「……まあ」
「いいと思いますよ。レン、先輩の話するとき楽しそうなんで」
真白が身を乗り出して「柊」と小さく言った。止めてくれ、という顔だった。
柊はいちごミルクを最後まで吸い上げて、立ち上がった。
「じゃ、俺帰りますね。レン、またメッセージして」
「うん」
「先輩もお元気でー」
それだけ言って、トレーを持って去っていった。
振り返りもしない。あっさりしたもんだ。
残されたのは日向と真白だけだった。
真白はまだ固い。
「……あいつと仲良いな」
「幼馴染なので」
「そうか。どれくらいの付き合い?」
「幼稚園からです。ずっと居ます」
日向は自分がモヤモヤしていることに気づいた。
柊の前ではリラックスして、自分の前では緊張する。
それは当然だ。
過ごしてきた時間が違う。
何より、自分は真白に色々禁止している側だから。
でも、当然だと分かっていても、面白くなかった。
「真白。昼、一緒に食えそうなら連絡して」
真白が目を丸くした。それから、嬉しそうな顔になった。
「……はい」
日向はその顔を見て、自分が何を言ったのか、ようやく理解した。
柊と一緒にいる姿にモヤモヤして、隣にわざわざ座りに行った。
また会うために、連絡してと自分から言った。
全部、自分からやっている。
なんでだ。
答えは出なかった。
出なかったけど、自分の行動で真白が嬉しそうな顔をした。
悪くないなと思った。
その感覚だけが、胸の奥にはっきり残った。
居た。入口から一番遠い、窓際の四人掛けの席。
誰かと向かい合って座っている。
知らない男だった。
真白と同い年くらい。
いちごミルクを飲みながら、真白と何か話している。
真白が笑っていた。
肩の力は抜けていて、姿勢も普通で、声も普通に聞こえる。
日向の前では見たことがない顔だった。
今日の日替わり定食を受け取った日向は
気付いたら足を動かしていた。
「真白」
声をかけた瞬間、真白の背筋が伸びた。
さっきまでの柔らかさが消えて、姿勢が正しくなる。
「先輩」
声のトーンも変わっている。
向かいに座っていた男が、ストローをくわえたまま日向を見上げた。
観察するような目だった。
「どーも。柊です。レンの幼馴染」
「……日向」
「知ってます。レンからよく聞くんで」
柊はそう言って、少しだけ口角を上げた。
笑っているのか、面白がっているのか、よく分からない表情だった。
日向は真白を見た。
真白はさっきまでと全然違う顔をしている。
姿勢が固いし挙動不審。
日向の方を見たり、視線を落としたり、落ち着かない。
柊といるときは、あんなに普通だったのに。
「もう食べた?」
「あ、はい。今、食べてました」
「そうか」
会話が続かない。柊がいちごミルクを吸う音だけが聞こえる。
日向は空いている椅子を指差した。真白の隣。
「座っていい?」
「はい!」
返事が早すぎる。声も大きい。
柊が「へえ」という顔をした。視線が日向と真白の間を行き来している。
「先輩、レンのこと気にかけてくれてるんすね」
「……まあ」
「いいと思いますよ。レン、先輩の話するとき楽しそうなんで」
真白が身を乗り出して「柊」と小さく言った。止めてくれ、という顔だった。
柊はいちごミルクを最後まで吸い上げて、立ち上がった。
「じゃ、俺帰りますね。レン、またメッセージして」
「うん」
「先輩もお元気でー」
それだけ言って、トレーを持って去っていった。
振り返りもしない。あっさりしたもんだ。
残されたのは日向と真白だけだった。
真白はまだ固い。
「……あいつと仲良いな」
「幼馴染なので」
「そうか。どれくらいの付き合い?」
「幼稚園からです。ずっと居ます」
日向は自分がモヤモヤしていることに気づいた。
柊の前ではリラックスして、自分の前では緊張する。
それは当然だ。
過ごしてきた時間が違う。
何より、自分は真白に色々禁止している側だから。
でも、当然だと分かっていても、面白くなかった。
「真白。昼、一緒に食えそうなら連絡して」
真白が目を丸くした。それから、嬉しそうな顔になった。
「……はい」
日向はその顔を見て、自分が何を言ったのか、ようやく理解した。
柊と一緒にいる姿にモヤモヤして、隣にわざわざ座りに行った。
また会うために、連絡してと自分から言った。
全部、自分からやっている。
なんでだ。
答えは出なかった。
出なかったけど、自分の行動で真白が嬉しそうな顔をした。
悪くないなと思った。
その感覚だけが、胸の奥にはっきり残った。
40
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
なぜかピアス男子に溺愛される話
光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった!
「夏希、俺のこと好きになってよ――」
突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。
ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!
使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。
ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と
主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り
狂いに狂ったダンスを踊ろう。
▲▲▲
なんでも許せる方向けの物語り
人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる