22 / 22
本編
【日向視点】偶然の顔をした必然
しおりを挟む
真白と付き合い始めて、一ヶ月が経った。
毎日メッセージが来る。
毎日会いたいと言われる。
毎日好きだと言われる。
最初は多いなと思っていたが、今では来ないと落ち着かなくなった。
慣れって怖いな。
何時に、どこで、何を食べたかを毎日聞かれる。
多分、一般的にはかなりうざがられる質問じゃないかと思うが
俺はそれを嫌だと思うどころか嬉しく感じる。
付き合いたてだからかもしれない。
この先はわからないが、嫌がる自分を想像できなかった。
紙には記録していないと言っているから信じている。
柊への報告は黙認。
一応外部とのコミュニケーションの範囲と考えておく。
……外部ストレージ? 考えるのはやめよう。
最初は記録はやめるように言っていた。今はもう好きにさせている。
真白家の話を聞いてから、諦めたとも言う。
遺伝には勝てないし、楽しそうな真白を否定したくはない。
俺も真白の一日を聞くようになった。
何を食べたか、誰と話したか、何を考えていたか。
聞いて、覚えて、安心する。
真白を矯正するつもりだった。 普通にしてやるつもりだった。
気づいたら、自分が真白側に寄っていた。
柊に「どっちが矯正されたんすかね」と笑われた。
やっぱり否定できなかった。
振り返ってみる。
最初は気持ち悪かった。図書館でノートを拾って、中身を見て、背筋が冷たくなった。
『日向先輩動向ログ』。
俺の行動が全部記録されていた。
普通なら逃げるか通報する。もしくは、関わらない。
俺は逃げなかった。
なんでだろう、と今でも思う。気持ち悪かったのは本当だ。でも、それだけじゃなかった。
真白の目がまっすぐだった。俺を見る目に、悪意がなかった。ただ純粋に、俺を見ていた。
放置できなかった。
こいつを放っておいたら、いつか本当に道を踏み外す。そう思った。思ってしまった。
長男の性だ、と言い訳した。
世話焼きなんだ、と。下に双子がいるから、面倒を見るのが癖になっているんだ、と。
全部嘘だった。
最初から、真白が気になっていた。
気持ち悪いと思いながら、目が離せなかった。
矯正すると言いながら、近くにいる理由を作っていた。
偶然じゃない。
真白が俺を見つけたのも、俺が真白を放置できなかったのも、全部必然だった。
◇
「先輩」
隣を歩く真白が、俺を見上げている。
「何」
「今、何考えてましたか」
「お前のこと」
「嬉しいです。俺も先輩のこと考えてました」
「知ってる」
真白が笑った。嬉しそうに、眩しそうに。
この顔を見ると、安心する。この顔を見ないと、不安になる。
共依存だと、柊に言われた。否定しなかった。否定する気もなかった。
俺たちは普通じゃない。
でも、普通じゃない俺たちなりの形がある。
ストーカー後輩を放置できなくて、矯正してたら、なぜか付き合うことになった。
……なぜか、じゃないな。
放置できなかった時点で、もう決まってたんだ。
偶然の顔をした、必然だった。
毎日メッセージが来る。
毎日会いたいと言われる。
毎日好きだと言われる。
最初は多いなと思っていたが、今では来ないと落ち着かなくなった。
慣れって怖いな。
何時に、どこで、何を食べたかを毎日聞かれる。
多分、一般的にはかなりうざがられる質問じゃないかと思うが
俺はそれを嫌だと思うどころか嬉しく感じる。
付き合いたてだからかもしれない。
この先はわからないが、嫌がる自分を想像できなかった。
紙には記録していないと言っているから信じている。
柊への報告は黙認。
一応外部とのコミュニケーションの範囲と考えておく。
……外部ストレージ? 考えるのはやめよう。
最初は記録はやめるように言っていた。今はもう好きにさせている。
真白家の話を聞いてから、諦めたとも言う。
遺伝には勝てないし、楽しそうな真白を否定したくはない。
俺も真白の一日を聞くようになった。
何を食べたか、誰と話したか、何を考えていたか。
聞いて、覚えて、安心する。
真白を矯正するつもりだった。 普通にしてやるつもりだった。
気づいたら、自分が真白側に寄っていた。
柊に「どっちが矯正されたんすかね」と笑われた。
やっぱり否定できなかった。
振り返ってみる。
最初は気持ち悪かった。図書館でノートを拾って、中身を見て、背筋が冷たくなった。
『日向先輩動向ログ』。
俺の行動が全部記録されていた。
普通なら逃げるか通報する。もしくは、関わらない。
俺は逃げなかった。
なんでだろう、と今でも思う。気持ち悪かったのは本当だ。でも、それだけじゃなかった。
真白の目がまっすぐだった。俺を見る目に、悪意がなかった。ただ純粋に、俺を見ていた。
放置できなかった。
こいつを放っておいたら、いつか本当に道を踏み外す。そう思った。思ってしまった。
長男の性だ、と言い訳した。
世話焼きなんだ、と。下に双子がいるから、面倒を見るのが癖になっているんだ、と。
全部嘘だった。
最初から、真白が気になっていた。
気持ち悪いと思いながら、目が離せなかった。
矯正すると言いながら、近くにいる理由を作っていた。
偶然じゃない。
真白が俺を見つけたのも、俺が真白を放置できなかったのも、全部必然だった。
◇
「先輩」
隣を歩く真白が、俺を見上げている。
「何」
「今、何考えてましたか」
「お前のこと」
「嬉しいです。俺も先輩のこと考えてました」
「知ってる」
真白が笑った。嬉しそうに、眩しそうに。
この顔を見ると、安心する。この顔を見ないと、不安になる。
共依存だと、柊に言われた。否定しなかった。否定する気もなかった。
俺たちは普通じゃない。
でも、普通じゃない俺たちなりの形がある。
ストーカー後輩を放置できなくて、矯正してたら、なぜか付き合うことになった。
……なぜか、じゃないな。
放置できなかった時点で、もう決まってたんだ。
偶然の顔をした、必然だった。
41
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
なぜかピアス男子に溺愛される話
光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった!
「夏希、俺のこと好きになってよ――」
突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。
ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!
使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。
ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と
主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り
狂いに狂ったダンスを踊ろう。
▲▲▲
なんでも許せる方向けの物語り
人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる