何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

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第7話:ヒロイン救済、そして騎士の胸に芽生えるざわめき

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「紹介するわ。今日からこの領に滞在することになった子よ。」

母の紹介で現れたのは、どこか少年のような立ち振る舞いをした少女だった。
短く切り揃えられた黒髪に、真っ直ぐこちらを見つめる金の瞳。
立ち方も服装も、まるで兵士のような端正さ。

「名前はカミラ=エルンハルト。エルンハルト男爵家の次女よ。……いえ、“次男”として育てられているのだけれど。」

なるほど――この子か。

この世界の恋愛ゲームで、隠しヒロイン扱いだったキャラ。
男として扱われ、兄の影に押し込まれ、心を殺して生きてきた少女。

だが、作中で主人公と出会い、本当の“自分”を見つけていく……はずだった。

でも、またもや予定は前倒しになった。

「ねぇ、カミラ。一緒におままごとしない?」

「……は?」

その日、私はリリアとイザヴェラが新しく作ってくれた布のお人形を持っていた。
リドルたちは「おままごととか女の遊びじゃん!」と早々に離脱したが、リンと私は盛り上がっていた。

「君、男の子じゃなかったの?」

「いや、違う。私は女だ。だが……これはその……。」

顔を赤らめながら視線を逸らすカミラ。
本当はやりたい、でも許されない――その葛藤が、見え透いていた。

「だったら、やってみよう。ここでは誰も君を責めたりしないから。」

そう言って差し出した布のスカート。
カミラはしばらく迷ってから、おそるおそるそれを手に取った。

そして、始まった。

「きゃー!おひめさま、おにわにでちゃだめですわ!」

「うふふ、でもどうしてもリンごひいきのパンがたべたかったのよ!」

「そ、それなら僕が代わりに買ってきますわ、お姫様!」

……完全にノリノリである。

あれから、カミラは毎日のように私たちの遊びに混ざるようになった。
花を摘み、スカートをはき、お茶を注ぐ。

最初はぎこちなかった仕草も、今ではすっかり自然になっていた。

そして、その“変化”を見逃さなかった男がいた。

「ぼ、僕、トールっていいます!カミラさんの笑顔がすごく素敵で……あの、よければ僕と婚約を――。」

「はぁ!?」

「……いえ、すみません!! でも気持ちは本気です!!!」

トール=ベッカーマン、近隣の子爵家の次男。
まだ幼いながらに誠実でまっすぐな彼は、カミラの“目覚めた女の子らしさ”にまっすぐに惚れ込んだ。

カミラは悩んだ末、彼の申し出を受け入れた。
「この私を見て、ちゃんと“女の子”って言ってくれたのは……君が初めてだ」と言って。

そしてその光景を、庭の影から見ていた一人の少年がいた。

「……カノン様が、また……。」

アレス=クラヴィス。
ただの騎士候補として――いや、それ以上の存在として、カノンの傍にいることを“当然”だと思っていた彼の心が、ほんの僅かに軋んだ。

「これは……いけないな。」

その呟きは誰にも届かず、ただ秋の風だけがさらりと流れていった。

カノン・ライエル・フィルディア、3歳。
原作二人目のヒロインが幸せを掴んだ日、運命の歯車はまた一つ、確かにズレたのだった。
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