42 / 43
最終話:そして、この人生を生きていく
しおりを挟む
ふと、夢を見た。
どこかの教室で、ノートに落書きしながらため息をついていた、“前の俺”。
何も変わらず、何もできなかった、あの頃の俺。
――でも、今は違う。
目を開ければ、光が差していた。
鳥の声と、庭師の剪定する音。
そして、隣には、アレスがいた。
「……朝です。カノン様。」
「お前、もう“様”じゃなくていいって言ったじゃん。」
「では……カノン。おはようございます。」
彼の声が心地よかった。
私はゆっくりと体を起こし、窓の外を眺めた。
国も、世界も、大きな混乱はなかった。
誰かを救うための物語も、もう終わった。
もう、“転生者”としての使命は――
「……終わったんだな。」
「はい。」
アレスは静かにうなずいた。
「これからは、“俺”として生きていいんだよな。」
「ええ。あなたはカノン・ライエル・フィルディア。そのままで、十分です。」
私は深く息を吸って、笑った。
その日は、ふたりで町へ出かけた。
変装こそしていたけれど、王子と騎士としての姿のまま、堂々と。
驚いたことに、誰も冷たい目を向けなかった。
「……案外、優しい世界だな。」
「そうですね。あなたが、この国を“そういう場所”にしてきたからです。」
商人は笑いかけてくれた。
老婦人は手を取って祝福してくれた。
子供たちは、ふたりを見て「王子様と騎士様のカップルだー!」とはしゃいだ。
どれも、かつての世界では考えられなかった光景だった。
(この世界、案外、悪くない。)
(いや――すごく、いい。)
その夜。
月の下で、私はアレスの手を取った。
「お前といると、俺、ほんとに“ここに生まれてよかった”って思える。」
「それは、私の方も同じです。」
「だったらさ……これからも、一緒に。」
「はい。いつまでも、どこまでも。」
転生者は、もういない。
そこにいるのは、“ただのカノン”と、“彼を愛した騎士”だけ。
誰の物語でもない。
誰にも操られない。
自分で選び、自分で生きる――そんな人生が、ようやく始まった。
これは“ハッピーエンド”ではない。
“幸せな始まり”だ。
二人で、何気ない毎日を歩いていく。
それが、世界で一番尊い物語だった。
どこかの教室で、ノートに落書きしながらため息をついていた、“前の俺”。
何も変わらず、何もできなかった、あの頃の俺。
――でも、今は違う。
目を開ければ、光が差していた。
鳥の声と、庭師の剪定する音。
そして、隣には、アレスがいた。
「……朝です。カノン様。」
「お前、もう“様”じゃなくていいって言ったじゃん。」
「では……カノン。おはようございます。」
彼の声が心地よかった。
私はゆっくりと体を起こし、窓の外を眺めた。
国も、世界も、大きな混乱はなかった。
誰かを救うための物語も、もう終わった。
もう、“転生者”としての使命は――
「……終わったんだな。」
「はい。」
アレスは静かにうなずいた。
「これからは、“俺”として生きていいんだよな。」
「ええ。あなたはカノン・ライエル・フィルディア。そのままで、十分です。」
私は深く息を吸って、笑った。
その日は、ふたりで町へ出かけた。
変装こそしていたけれど、王子と騎士としての姿のまま、堂々と。
驚いたことに、誰も冷たい目を向けなかった。
「……案外、優しい世界だな。」
「そうですね。あなたが、この国を“そういう場所”にしてきたからです。」
商人は笑いかけてくれた。
老婦人は手を取って祝福してくれた。
子供たちは、ふたりを見て「王子様と騎士様のカップルだー!」とはしゃいだ。
どれも、かつての世界では考えられなかった光景だった。
(この世界、案外、悪くない。)
(いや――すごく、いい。)
その夜。
月の下で、私はアレスの手を取った。
「お前といると、俺、ほんとに“ここに生まれてよかった”って思える。」
「それは、私の方も同じです。」
「だったらさ……これからも、一緒に。」
「はい。いつまでも、どこまでも。」
転生者は、もういない。
そこにいるのは、“ただのカノン”と、“彼を愛した騎士”だけ。
誰の物語でもない。
誰にも操られない。
自分で選び、自分で生きる――そんな人生が、ようやく始まった。
これは“ハッピーエンド”ではない。
“幸せな始まり”だ。
二人で、何気ない毎日を歩いていく。
それが、世界で一番尊い物語だった。
23
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。
黒茶
BL
人気者だけど実は人間嫌いの嘘つき先輩×素直すぎる後輩の
(本人たちは気づいていないが実は乙女ゲームの世界である)
異世界ファンタジーラブコメ。
魔法騎士学院の2年生のクラウスの長所であり短所であるところは、
「なんでも思ったことを口に出してしまうところ。」
そして彼の秘密は、この学院内の特定の人物の個人情報が『ステータス画面』というもので見えてしまうこと。
魔法が存在するこの世界でもそんな魔法は聞いたことがないのでなんとなく秘密にしていた。
ある日、ステータス画面がみえている人物の一人、5年生のヴァルダー先輩をみかける。
彼はいつも人に囲まれていて人気者だが、
そのステータス画面には、『人間嫌い』『息を吐くようにウソをつく』
と書かれていたので、うっかり
「この先輩、人間嫌いとは思えないな」
と口に出してしまったら、それを先輩に気付かれてしまい・・・!?
この作品はこの1作品だけでも読むことができますが、
同じくアルファポリスさんで公開させていただいております、
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」
とあわせて「乙女ゲー3部作」となっております。(だせぇ名前だ・・・笑)
キャラクターや舞台がクロスオーバーなどしておりますので、
そちらの作品と合わせて読んでいただけたら10倍くらい美味しい設定となっております。
全年齢対象です。
BLに慣れてない方でも読みやすいかと・・・
ぜひよろしくお願いします!
俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。
黒茶
BL
超鈍感すぎる真面目男子×謎多き親友の異世界ファンタジーBL。
※このお話だけでも読める内容ですが、
同じくアルファポリスさんで公開しております
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
と合わせて読んでいただけると、
10倍くらい楽しんでいただけると思います。
同じ世界のお話で、登場人物も一部再登場したりします。
魔法と剣で戦う世界のお話。
幼い頃から王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢のラルフだが、
魔法の名門の家系でありながら魔法の才能がイマイチで、
家族にはバカにされるのがイヤで夢のことを言いだせずにいた。
魔法騎士になるために魔法騎士学院に入学して出会ったエルに、
「魔法より剣のほうが才能あるんじゃない?」と言われ、
二人で剣の特訓を始めたが、
その頃から自分の身体(主に心臓あたり)に異変が現れ始め・・・
これは病気か!?
持病があっても騎士団に入団できるのか!?
と不安になるラルフ。
ラルフは無事に専属護衛騎士になれるのか!?
ツッコミどころの多い攻めと、
謎が多いながらもそんなラルフと一緒にいてくれる頼りになる受けの
異世界ラブコメBLです。
健全な全年齢です。笑
マンガに換算したら全一巻くらいの短めのお話なのでさくっと読めると思います。
よろしくお願いします!
【連載版】魔王さまのヒミツ♡ ~バレたら即・下剋上?!クール魔王の素顔は泣き虫チキンな箱入り息子~
黒木 鳴
BL
歴代最年少で魔王の地位に就いたレイには隠し通さなければならない秘密がある。それは……「魔王もうやだぁぁぁ~~!!下剋上こわいよぉぉぉーーー!!!」その実態が泣き虫ポンコツ魔王だということ。バレれば即・下剋上を挑まれることは必至!なので先々代の魔王を父に持ち、悪魔公爵ジェラルドが膝を折ったという2枚看板を武器にクールな魔王を演じている。だけどその実力を疑う者たちも出てきて……?!果たしてレイの運命は……?!溺愛腹黒系悪魔×初心な小悪魔系吸血鬼。お茶目なパパんも大活躍!!短編「魔王さまのヒミツ♡」文字数の関係で削ったシーン・設定などを大幅加筆の連載版となります。
BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた
さ
BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。
断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。
ーーそれなのに。
婚約者に婚約は破棄され、
気づけば断罪寸前の立場に。
しかも理由もわからないまま、
何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。
※最終的にハッピーエンド
※愛され悪役令息
【完結】待って、待って!僕が好きなの貴方です!
N2O
BL
脳筋ゆえ不本意な塩対応を只今猛省中、ユキヒョウの獣人
×
箱入りゆえガードが甘い愛され体質な竜人
愛しい幼馴染が有象無象に狙われて、居ても立っても居られなくなっていく余裕のない攻めの話。
(安心してください、想像通り、期待通りの展開です)
Special thanks
illustration by みとし (X:@ibarakiniarazu)
※独自設定かつ、ふんわり設定です。
※素人作品です。
※保険としてR設定にしていますが、基本健全。ほぼない。
もふもふ守護獣と運命の出会い—ある日、青年は異世界で大きな毛玉と恋に落ちた—
なの
BL
事故に巻き込まれ、雪深い森で倒れていた青年・ユナ。
命の危険に晒されていた彼を救ったのは、白銀の毛並みを持つ美しい人狼・ゼルだった。
ゼルは誰よりも優しくて、そして――独占欲がとにかく強い。
気がつけばユナは、もふもふの里へ連れていかれる。
そこでは人狼だけでなく、獣人や精霊、もふもふとした種族たちが仲良く暮らしており、ユナは珍しい「人間」として大歓迎される。
しかし、ゼルだけは露骨にユナを奪われまいとし、
「触るな」「見るな」「近づくな」と嫉妬を隠そうとしない。
もふもふに抱きしめられる日々。
嫉妬と優しさに包まれながら、ユナは少しずつ居場所を取り戻していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる