362 / 416
【23】拍手喝采~戦場のハッピーバレンタインデー
多分絶対あの先輩
しおりを挟む
そう文句を言う幾久に、普は言った。
「いっくんは自由に出来るようにするからさ、あとは全部相手役に丸投げしたらいいじゃん。どうせみほりんはロミオ譲らないんでしょ?」
「うん。勿論」
「なるほどー、丸投げかあ」
だったら、セリフは思い出す必要も、覚える必要もない。
「それならいいや。知らない変な役より、ジュリエットの方がマシかも」
どうせ誰もジュリエット役をやりたがらないなら幾久がするしかないし、もう面倒だからどうでもいいや、と幾久は思った。
「じゃあ、ロミオが何人もいる設定で、面白い事なんか考えるよ!」
普が言うので、皆、それに賛同した。
「あ、でもセットは使えないよな。それどうする?」
山田が言う。
そう、すでにロミジュリの舞台セットは解体されてしまったし、そうなると多分、一番有名だろうバルコニーのシーンは出来ないことになる。
全員が来島を見ると、来島も頷いた。
「そうなんだよ。セットはとっくに解体されて木材だしな。でもそこをどうにかするのがお前らの仕事」
えぇ~、と一年生から不満の声が上がるも、来島は言った。
「どーしても、どーしても、いい考えが浮かばない場合は、責任もって二年生がなんとかどうにかしてやるよ」
「いや、セットなかったらどうにもならないんじゃ」
幾久が言うも、来島は首を横に振った。
「それをどうにか面白く仕上げろよ。地球部の腕の見せ所だろ」
んな無茶な、と一年生は全員思ったが来島は譲らない。
「内容がばれたらつまんねーから、当然だが三年、または外部に協力を頼むのは基本禁止だ。やりてえっつったのはお前らなんだから、一年で出来る限りの事を考えてみろ」
成程、と幾久は御堀と顔を見合わせた。
一年生が言いださないとやらないと言ったのは、こうして一年の力量を見る為か、と納得した。
「二年は協力する、っつってんだから、少々の無茶は聞いてやる。だけど、骨組みはお前らがしーっかり組み立てろよ。でねーと特に高杉や久坂なんか話も聞かねーぞ」
それは確かにそうだと幾久は頷く。
きちんと言えば大抵の事はしてくれるが、そうでないなら絶対に動いてくれないのがあの二人なのだから。
「うーん、なんか急に難しい事のように思えてきた」
入江が腕を組むと、品川も頷く。
「面倒くさそう」
「いや、実際面倒くさいんじゃないかな。僕は目立ちたいからやるけど」
あはは、と笑っているのは瀧川だ。
「僕が一番面倒じゃない?」
普が言うが、自分で言い出した事なので仕方がない。
「そりゃ、言い出しっぺだからやるけどさ」
「最低限の流れだけ作っておけばいいだろ。どうせ適当にどうにかできるって」
そう言ったのは山田だ。
「自信満々だね、御空」
普が言うと、山田は「まあな」と笑った。
「だってさ、桜柳祭の時みたいに、長い時間やるわけでもないし、絶対にセリフ間違えらんねえとかプレッシャーもないし、そもそも三年の先輩とか、在校生が見るんなら内輪だけだろ。チケットの売り上げとかの心配もねえし、好きにやればいいなら、俺らならどうにかできるよ」
山田のはっきりとした意見に、御堀は楽しそうに尋ねた。
「確かに、御空の言う通りだけど、でもそこまでうまくいく?」
「うまくいかなくていいんだよ」
山田は笑って言った。
「俺ら、所詮一年坊主じゃん。地球部の先輩とか、他にもお世話になった先輩に伝わればそれでいい。地球部、楽しかったです、これからも楽しみます、っていうのを先輩に伝えられたら、それで御の字って奴じゃねえ?」
山田の言葉に、一年生はそうだな、とほっとして、来島は思わず、ふ、と笑みをこぼし、山田の頭をぐしゃっと撫でた。
「それだけ判ってりゃ十分だろ一年坊主。じゃあ、これで決まりでいいな。脚本が三吉、詳しい事は二年に相談。脚本はいつ出来そうだ?」
「あ、すぐやります。明日は休みだし、今夜から突貫で」
三吉が言うと、山田も頷く。
「そうだな。早めに脚本やって、アドリブで逃げる所と、そうじゃない所だけでも決めたほうがいいな」
「いや、山田、お前大丈夫か?」
来島の問いに山田が首を傾げた。
「大丈夫っすけど?明日休みだし」
「や、だって明日お前ら、ホーム部でバレンタインの菓子作るんだろ?」
幾久と御堀、服部と山田は顔を見合わせた。
「そういやそうだ」
「そうだった。忘れてた」
「すっかり頭から抜けてた」
「……」
まあいいや、と呑気に構える一年に、来島は言った。
「お前ら大丈夫か?去年、周布先輩も手伝ってたけど、材料かき混ぜるのにミキサー車よこせって発狂してたけど」
「えっ、そこまで大変なんすか?」
幾久は驚くが、来島は言った。
「お前ら、年末の団子づくり大変だったって言ってただろ?あの比じゃねーんじゃねえの?」
そこでやっと、幾久と御堀は、ひょっとして思ったより大変なのでは、気づく。
「え、どうしよう。明日そこまで大変なのかな」
幾久が心配すると、考えていた山田が言った。
「一応、明日の作業、俺らでするようにしてたけど、頼もう。普、タッキー、晶摩、饅頭、明日、ホーム部の作業手伝ってくれ。頼む」
山田が頭を下げると、皆、笑顔で言った。
「別にいいよ、そのくらい」
ね、と普がいうと、皆、うんと頷く。
「出来ることは協力するし、頼まれればやるよ」
「試験前でもないし、映えな場面もとれそうで賛成」
瀧川が御堀に尋ねた。
「撮影はOKかい?」
「僕らは構わないけど、八木先輩がどうかな。店内とかは駄目か
も」
御堀が明日、聞いてからに、と話していると品川が言った。
「……この打ち合わせからダイジェストとか作るの、面白そうじゃね?」
皆が顔を上げた。
「どうせ誉のことだ、予餞会の舞台もうまくいけば売るつもりだろ?だったら、この打ち合わせからして録画しとけば時間稼げるんじゃね?」
品川の意見に、御堀と瀧川が顔を見合わせて頷いた。
「それいいアイディア」
「詳しく聞かせて貰おうか」
そうして一年生たちは、またにぎやかに打ち合わせをはじめ、来島は苦笑しつつ、これならほっといても問題ないな、とちょっと安心したのだった。
さて、問題の翌日、祝日の月曜日の朝である。
御堀、幾久、服部に山田は商店街にある八木ベーカリーの前に集合していた。
約束の時間の五分前に到着し、店の前で待っていると、八木が現れた。
「よう!おはよう後輩ども!今日はよろしくな!」
ますく・ど・かふぇのマスター、よしひろとプロレス仲間というだけあって、ノリも同じだ。
「お世話になります」
御堀が深々と頭を下げると、八木は頷いた。
「さっすが鳳は行儀がいいなあ!なあいっくん!」
「オレも鳳っスけど」
むすっとして言うと、そうだった!とにぎやかに笑う。
いつでも元気のいい人だ。
「しかし、その細腕で大丈夫か?昨日来た連中も、一昨日も、どいつもこいつもヒーヒー言ってたぞ?」
「できなかったら諦めます」
幾久が言うと、御堀が首を横に振った。
「駄目だよ。今日作らないと絶対に数が合わないんだから」
「そん時は普とかに助けて貰おう。呼んどいてよかった」
脱落する気満々の幾久に、山田と服部は笑う。
「そこまで行く前に頑張ろうぜ」
「御空はそういうけどさ、周布先輩が文句言うってよっぽどだよ?」
ああ見えて手助けや後輩はすぐに助けてくれるし、文句を言わない周布がぶーぶー文句を言っていたというから、実は物凄く大変なんじゃないか、と幾久は不安だ。
「あー、去年な。去年はクッキーだったから余計に大変だったんだよ。今年はそこまでじゃないって!」
八木が言うと、幾久は御堀に尋ねた。
「本当?誉」
御堀は頷く。
「うん。クッキーはバターと砂糖と小麦粉が殆どだからすごくタネが重いんだ。数もいるだろうし、大変だったんじゃないのかな」
御堀の説明に、八木が、はっはっは、と笑った。
「そーうなんだよ!保存はきくんだが、なにせタネが重くてなー。来年もやるなら工事用のミキサー持ってくるぞって随分怒ってた子がいたなあそういや!」
(周布先輩だ)
(周布先輩……)
(間違いなく周布先輩だ)
(怒るなんてめずらしいなあ)
「心配するな!今回はそんなに重いタネじゃないから!ただ、手間はやっぱりかかるけどな!」
そんなに重くない、と言われても八木のむっちむちの腕を見ると、説得力に欠けるな、と思った一年生だった。
暫くすると、普と瀧川がやってきた。
「おはよーございます!」
「おはようございます」
「あれ?二人だけ?」
昨日の時点では、入江と品川も来るはずだったのに、と幾久が尋ねると普が苦笑した。
「あいつらまだ寝てる。もうちょっとしたら来るってさ」
「やっぱり……」
山田が呆れた。
品川も入江もマイペースが過ぎるので、そんな気がしていたらしい。
「起きたら来るだろうし、昼前には目が覚めるだろうから、なんか手伝いさせたらいいんじゃない?」
普が言うので、山田はため息をついた。
「仕方ねえな。じゃあ俺らは仕事に入るか」
八木には昨日のうちに撮影の許可を貰っていたので、全員で店に入った。
八木が言う。
「本当なら土日は休みだったり、午前中しか開けてねーこと多いんだけど、今日は完全にお休みだから、客が来る事もねえよ。安心して作業に集中しとけ」
店の中は、パンを並べる店舗があり、その奥に作業をする部屋があった。
作業の部屋は、腰から上がガラス張りになっており、オーブンや、銀色のトレイが所狭しと並んでいるのが店舗からも見える。
「あの奥が、工場っスか」
幾久が尋ねると、八木が頷いた。
「工場っていうほどでかくはねえけどな。報国院の生徒のパンと、マスターのパン、うちで売る程度は十分まかなえるぞ」
「報国院のパンって、いつも八木先輩の所のなんですか?」
毎日の定食でも、たまにパン食の時があるので御堀が尋ねると、八木が頷いた。
「そう!うち業務用の冷凍庫あっから、報国院で沢山いる時は冷凍した奴を持ってくんだよ!売ってる奴は、普通に朝、焼いた奴だけどな」
「いっくんは自由に出来るようにするからさ、あとは全部相手役に丸投げしたらいいじゃん。どうせみほりんはロミオ譲らないんでしょ?」
「うん。勿論」
「なるほどー、丸投げかあ」
だったら、セリフは思い出す必要も、覚える必要もない。
「それならいいや。知らない変な役より、ジュリエットの方がマシかも」
どうせ誰もジュリエット役をやりたがらないなら幾久がするしかないし、もう面倒だからどうでもいいや、と幾久は思った。
「じゃあ、ロミオが何人もいる設定で、面白い事なんか考えるよ!」
普が言うので、皆、それに賛同した。
「あ、でもセットは使えないよな。それどうする?」
山田が言う。
そう、すでにロミジュリの舞台セットは解体されてしまったし、そうなると多分、一番有名だろうバルコニーのシーンは出来ないことになる。
全員が来島を見ると、来島も頷いた。
「そうなんだよ。セットはとっくに解体されて木材だしな。でもそこをどうにかするのがお前らの仕事」
えぇ~、と一年生から不満の声が上がるも、来島は言った。
「どーしても、どーしても、いい考えが浮かばない場合は、責任もって二年生がなんとかどうにかしてやるよ」
「いや、セットなかったらどうにもならないんじゃ」
幾久が言うも、来島は首を横に振った。
「それをどうにか面白く仕上げろよ。地球部の腕の見せ所だろ」
んな無茶な、と一年生は全員思ったが来島は譲らない。
「内容がばれたらつまんねーから、当然だが三年、または外部に協力を頼むのは基本禁止だ。やりてえっつったのはお前らなんだから、一年で出来る限りの事を考えてみろ」
成程、と幾久は御堀と顔を見合わせた。
一年生が言いださないとやらないと言ったのは、こうして一年の力量を見る為か、と納得した。
「二年は協力する、っつってんだから、少々の無茶は聞いてやる。だけど、骨組みはお前らがしーっかり組み立てろよ。でねーと特に高杉や久坂なんか話も聞かねーぞ」
それは確かにそうだと幾久は頷く。
きちんと言えば大抵の事はしてくれるが、そうでないなら絶対に動いてくれないのがあの二人なのだから。
「うーん、なんか急に難しい事のように思えてきた」
入江が腕を組むと、品川も頷く。
「面倒くさそう」
「いや、実際面倒くさいんじゃないかな。僕は目立ちたいからやるけど」
あはは、と笑っているのは瀧川だ。
「僕が一番面倒じゃない?」
普が言うが、自分で言い出した事なので仕方がない。
「そりゃ、言い出しっぺだからやるけどさ」
「最低限の流れだけ作っておけばいいだろ。どうせ適当にどうにかできるって」
そう言ったのは山田だ。
「自信満々だね、御空」
普が言うと、山田は「まあな」と笑った。
「だってさ、桜柳祭の時みたいに、長い時間やるわけでもないし、絶対にセリフ間違えらんねえとかプレッシャーもないし、そもそも三年の先輩とか、在校生が見るんなら内輪だけだろ。チケットの売り上げとかの心配もねえし、好きにやればいいなら、俺らならどうにかできるよ」
山田のはっきりとした意見に、御堀は楽しそうに尋ねた。
「確かに、御空の言う通りだけど、でもそこまでうまくいく?」
「うまくいかなくていいんだよ」
山田は笑って言った。
「俺ら、所詮一年坊主じゃん。地球部の先輩とか、他にもお世話になった先輩に伝わればそれでいい。地球部、楽しかったです、これからも楽しみます、っていうのを先輩に伝えられたら、それで御の字って奴じゃねえ?」
山田の言葉に、一年生はそうだな、とほっとして、来島は思わず、ふ、と笑みをこぼし、山田の頭をぐしゃっと撫でた。
「それだけ判ってりゃ十分だろ一年坊主。じゃあ、これで決まりでいいな。脚本が三吉、詳しい事は二年に相談。脚本はいつ出来そうだ?」
「あ、すぐやります。明日は休みだし、今夜から突貫で」
三吉が言うと、山田も頷く。
「そうだな。早めに脚本やって、アドリブで逃げる所と、そうじゃない所だけでも決めたほうがいいな」
「いや、山田、お前大丈夫か?」
来島の問いに山田が首を傾げた。
「大丈夫っすけど?明日休みだし」
「や、だって明日お前ら、ホーム部でバレンタインの菓子作るんだろ?」
幾久と御堀、服部と山田は顔を見合わせた。
「そういやそうだ」
「そうだった。忘れてた」
「すっかり頭から抜けてた」
「……」
まあいいや、と呑気に構える一年に、来島は言った。
「お前ら大丈夫か?去年、周布先輩も手伝ってたけど、材料かき混ぜるのにミキサー車よこせって発狂してたけど」
「えっ、そこまで大変なんすか?」
幾久は驚くが、来島は言った。
「お前ら、年末の団子づくり大変だったって言ってただろ?あの比じゃねーんじゃねえの?」
そこでやっと、幾久と御堀は、ひょっとして思ったより大変なのでは、気づく。
「え、どうしよう。明日そこまで大変なのかな」
幾久が心配すると、考えていた山田が言った。
「一応、明日の作業、俺らでするようにしてたけど、頼もう。普、タッキー、晶摩、饅頭、明日、ホーム部の作業手伝ってくれ。頼む」
山田が頭を下げると、皆、笑顔で言った。
「別にいいよ、そのくらい」
ね、と普がいうと、皆、うんと頷く。
「出来ることは協力するし、頼まれればやるよ」
「試験前でもないし、映えな場面もとれそうで賛成」
瀧川が御堀に尋ねた。
「撮影はOKかい?」
「僕らは構わないけど、八木先輩がどうかな。店内とかは駄目か
も」
御堀が明日、聞いてからに、と話していると品川が言った。
「……この打ち合わせからダイジェストとか作るの、面白そうじゃね?」
皆が顔を上げた。
「どうせ誉のことだ、予餞会の舞台もうまくいけば売るつもりだろ?だったら、この打ち合わせからして録画しとけば時間稼げるんじゃね?」
品川の意見に、御堀と瀧川が顔を見合わせて頷いた。
「それいいアイディア」
「詳しく聞かせて貰おうか」
そうして一年生たちは、またにぎやかに打ち合わせをはじめ、来島は苦笑しつつ、これならほっといても問題ないな、とちょっと安心したのだった。
さて、問題の翌日、祝日の月曜日の朝である。
御堀、幾久、服部に山田は商店街にある八木ベーカリーの前に集合していた。
約束の時間の五分前に到着し、店の前で待っていると、八木が現れた。
「よう!おはよう後輩ども!今日はよろしくな!」
ますく・ど・かふぇのマスター、よしひろとプロレス仲間というだけあって、ノリも同じだ。
「お世話になります」
御堀が深々と頭を下げると、八木は頷いた。
「さっすが鳳は行儀がいいなあ!なあいっくん!」
「オレも鳳っスけど」
むすっとして言うと、そうだった!とにぎやかに笑う。
いつでも元気のいい人だ。
「しかし、その細腕で大丈夫か?昨日来た連中も、一昨日も、どいつもこいつもヒーヒー言ってたぞ?」
「できなかったら諦めます」
幾久が言うと、御堀が首を横に振った。
「駄目だよ。今日作らないと絶対に数が合わないんだから」
「そん時は普とかに助けて貰おう。呼んどいてよかった」
脱落する気満々の幾久に、山田と服部は笑う。
「そこまで行く前に頑張ろうぜ」
「御空はそういうけどさ、周布先輩が文句言うってよっぽどだよ?」
ああ見えて手助けや後輩はすぐに助けてくれるし、文句を言わない周布がぶーぶー文句を言っていたというから、実は物凄く大変なんじゃないか、と幾久は不安だ。
「あー、去年な。去年はクッキーだったから余計に大変だったんだよ。今年はそこまでじゃないって!」
八木が言うと、幾久は御堀に尋ねた。
「本当?誉」
御堀は頷く。
「うん。クッキーはバターと砂糖と小麦粉が殆どだからすごくタネが重いんだ。数もいるだろうし、大変だったんじゃないのかな」
御堀の説明に、八木が、はっはっは、と笑った。
「そーうなんだよ!保存はきくんだが、なにせタネが重くてなー。来年もやるなら工事用のミキサー持ってくるぞって随分怒ってた子がいたなあそういや!」
(周布先輩だ)
(周布先輩……)
(間違いなく周布先輩だ)
(怒るなんてめずらしいなあ)
「心配するな!今回はそんなに重いタネじゃないから!ただ、手間はやっぱりかかるけどな!」
そんなに重くない、と言われても八木のむっちむちの腕を見ると、説得力に欠けるな、と思った一年生だった。
暫くすると、普と瀧川がやってきた。
「おはよーございます!」
「おはようございます」
「あれ?二人だけ?」
昨日の時点では、入江と品川も来るはずだったのに、と幾久が尋ねると普が苦笑した。
「あいつらまだ寝てる。もうちょっとしたら来るってさ」
「やっぱり……」
山田が呆れた。
品川も入江もマイペースが過ぎるので、そんな気がしていたらしい。
「起きたら来るだろうし、昼前には目が覚めるだろうから、なんか手伝いさせたらいいんじゃない?」
普が言うので、山田はため息をついた。
「仕方ねえな。じゃあ俺らは仕事に入るか」
八木には昨日のうちに撮影の許可を貰っていたので、全員で店に入った。
八木が言う。
「本当なら土日は休みだったり、午前中しか開けてねーこと多いんだけど、今日は完全にお休みだから、客が来る事もねえよ。安心して作業に集中しとけ」
店の中は、パンを並べる店舗があり、その奥に作業をする部屋があった。
作業の部屋は、腰から上がガラス張りになっており、オーブンや、銀色のトレイが所狭しと並んでいるのが店舗からも見える。
「あの奥が、工場っスか」
幾久が尋ねると、八木が頷いた。
「工場っていうほどでかくはねえけどな。報国院の生徒のパンと、マスターのパン、うちで売る程度は十分まかなえるぞ」
「報国院のパンって、いつも八木先輩の所のなんですか?」
毎日の定食でも、たまにパン食の時があるので御堀が尋ねると、八木が頷いた。
「そう!うち業務用の冷凍庫あっから、報国院で沢山いる時は冷凍した奴を持ってくんだよ!売ってる奴は、普通に朝、焼いた奴だけどな」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~
root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。
そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。
すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。
それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。
やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」
美人生徒会長の頼み、断れるわけがない!
でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。
※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。
※他のサイトにも投稿しています。
イラスト:siroma様
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる