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第二部
ポチタロウと、サラの夜:6
しおりを挟む「ハンバーガーとコーラかよ!」
マルを描いて、自分を認めてあげて。
3回タップして、自分はまだまだだ、と言い聞かせる。
この2つについての説明をしたら、開口一番、サラがこう言った。
自己肯定をしつつ、自重もする。この組み合わせについて、サラはそう思ったらしい。絶妙な取り合わせだと言いたいらしい。
キレのいいツッコミだと思った。言い得て妙だとも思った。
でも「ご一緒にポテトもいかがですか?」って言いたくなった。
ハンバーガーとコーラには、ポテトも必要な気がした。
ー サラの例えがピザとコーラだったら、さらに良かったかもしれない。 ー
そう思った。それならば、完結しているように思えた。
僕はそんなアホなことを考えたし、アホなことを考え出しているのにも気づいた。
ここまでを考えて、なんだか上から目線になっているような気がした。そうして反省した。ツッコミは確かに僕のアイデンティティの一つな気はしたけれども、サラのツッコミの方がキレがあるように思った。
僕はひとまず、何にも言わないでおくことにした。ズボンの右ポケットの中で、太ももに小さくマルを描いた。太ももを指で3回、叩いた。
サラに「ピザとコーラの方がよくない?」なんてことを言い出さなかった自身を褒めつつも、自分はまだまだだって、言い聞かせた。
改めて、一連のルーティンの汎用性の高さを実感した。
「俺様もやってみてぇ!」
ちゃんと「何をしていたのか?」の説明をしたので「プロ野球の監督かよ!?」的なツッコミをされることはなかった。でも、サラはいつかと同じように、こんなことを言い出した。
僕はいつもと同じように「いいよ」と応えた。
■■■■■■
□□□□□□
ポチタロウと、サラの夜:6
■■■■■■
□□□□□□
サラは、何度か左胸の辺りでマルを描いて、3回タップすることを繰り返した。そうしてから、こう言った。
「なんかかっけぇな!? なんかこう、・・・ジワジワとくるな・・・」
「そうだねぇ・・・」
サラの言葉に僕は相づちを打った。
「かっけぇな・・・」
噛みしめるようにして、サラがそう繰り返した。
僕自身もジワジワと「良い物を見つけた」ような気にはなっていた。でも、あまりにもサラが褒めてくれるので、ジワジワと恥ずかしくなってきた。
「俺様用にも、なんかないか!?」
僕が返答に困っていると、手をクイクイさせながら、サラが言った。どうやらサラ的にも、自分なりのルーティンが欲しいらしい。
「えっと・・・サラはもうすでに持ってるよね?」
そう問い返した。
ー タンスに手を当てて、そこに書いてある「平常心」って言葉を見る。 ー
僕は、この一連のサラの流れを思い出していた。元々、サラのこれを見たことが、ルーティンを作ったきっかけだった。
「・・・? ・・・? んんーーっ?」
伝わらなかったらしい。サラが首を左右に傾げた。(その仕草も可愛らしいと思った)僕は説明を付け足した。
「ほら? タンスに手を当てるやつ・・・。あれも、言ってみれば、ルーティンの一つなんじゃないかな?」
サラにそう伝えた。
「あれか! たしかにあれはあれでそうだな。・・・ってぇ! タンスがいるじゃねぇか!」
サラのノリツッコミが炸裂した。僕はそのノリツッコミもやっぱり、キレがいいなと思った。
「俺様も、いつでもどこでも、できるやつがいい!」
サラがそう言ったので、僕はサラと一緒に、タンスを使わないで済む、サラ用のルーティンを考え始めた。
サラとまた「あーだ、こーだ」と言いあったんだけれども、ここもまた、割愛させてもらいたいと思う。
・・・
・・・
・・・。
サラが、左胸の辺りを右手のグー(の手のひら側)で2回タップした。
そうして「平常心」を思い出す。「自分は大丈夫だ」って言い聞かせる。サラのルーティンはこんな感じになった。
「俺様のは、これでいいな!」
サラは満足げにそう言った。
「うん。なんだかサラによく似合ってる感じがするよ?」
僕は素直にそう応えた。
「おぅ!」と言いながら、サラはもう一度、自分用のルーティンを繰り返した。
それを見ながら僕は思った。
サラのルーティンの方が、男らしい感じがして、カッコ良かった。新しく作ったので、よりブラッシュアップされた感もあった。
「もし困ったら、その・・・僕も使っていいかな? それ?」
思った瞬間には言葉に出てしまっていた><。
ー 僕もサラみたいになりたい。 ー
その想いはまだ残っていた。自分なりのやり方を探しながらも、ほんの少しでも「男らしさ」を身につけたいと思った。
「おぅ! 当たり前だ!」
サラのその返答もまた、(アニメ幼女声なのに)カッコイイなって思った。
ーーーーーー
ー 今後の計画を立てる。 ー
そう決めたハズなのに、僕は脱線していた。脱線したことには気づいていた。でも、それをわかりながらも、サラに聞いてみたいことができていた。
僕が3回タップするルーティンを考案してる間、サラは僕を見ていた。それを見て思い出したことがあったのだ。
僕が線の動きでいったりきたりしている時も、サラは僕を見ていた。その時のサラはなんだか、面白い物を見るような目で僕を見ていた。
僕が自分の尻尾を、平静な時の位置で維持しようとしている時も、サラは僕を見ていた。そのときは、何か笑いを堪えているように見えた。
こっちについては「笑っていたわけではない」とサラは言った。
でも、笑いを堪えていたわけじゃなかったら、何を堪えていたのか?
僕はこれを聞きたいと思っていた。今さらな気はしたけど、今後の参考になるような気はした。サラになら、聞いてみてもいいような気もしてきた。ついでなので、ここらへんを聞いておこうと考えた。
僕は、置いておいたタブレットを拾い上げて、時刻を確認した。
タブレットの時刻は、前見た時から、6分しか進んでいなかった。
予想したとおり、時刻表示は、魔王を倒した世界の時間に準拠しているようだった。まだ慌てる時間じゃない・・・って思ったし「あまり慌てないで行動しよう」と、思ったところでもあった。
ー 旅を楽しめばいい。 ー
サラが教えてくれたこれを実践してみるのもいいかな? そう思えた。
「ねぇ、サラ?」
僕はサラに呼びかけた。サラが「んー?」っと応えた。
ーーーーーー
「サラを責めるつもりは全くないんだけどさ? 今後の参考の為に、聞きたいことがあるんだけど?」
「なんだその前置きは? 俺様にわかることなら、何でも答えるぜ?」
僕が話しかけるとサラがこう応えた。(やっぱりカッコイイと思いつつも)僕は言った。
「僕が行ったりきたりしてるのを見て、サラはちょっと面白そうな顔してたよね? 何か変だったかな? って、行ったりきたりしてる時点で変か・・・」
一生懸命頑張ってても「格好いい」って言ってもらえる場合と、面白そうな顔で見られることがある。この違いが僕は知りたかった。
それで本題に入ってみたんだけれども、なんだかノリツッコミ的になってしまった。(しかもサラのそれよりも弱い感じになった)
(それにツッコミを入れたりはせずに)サラは、こう答えてくれた。
「あれか? いつも行ったりきたりしてるのを、ポチ公視点で見てきたからな? 実際にその姿が見れて、こう・・・感動したんだよ・・・」
「感動したんだ・・・」
サラからは予想外の答えが返ってきた。僕は言葉を反復することしかできなかった。
「おぅ! いつもこうやって歩いてたんだなって。実際に見れて良かった!」
サラは、嬉しそうにそう言った。
「そうなんだ・・・」
「おぅ!」
そんなのが見れて嬉しいのかな? そんなことを考えながら、一つ気づいた。
「・・・って僕って、結構いっつも、行ったりきたりしてたの!?」
この事実もこの時まで僕は知らなかった。驚いてやっぱりノリツッコミみたいになった。
「してたぞ? 小屋の中でも、小屋の外でも。ちょっと頭がグルグル回るかと思った」
ここまでのサラの話を聞いて、僕はこう考えた。
魔王を倒しに行く旅の序盤。夜、寝る為の簡易的な家は、二つ作っていた。僕はその片方の家の中で、次の日の計画を立てていた。たぶんそのクセは、その時についたものなのだろう。狭い部屋の中を歩き回った結果なのだろう。
途中から、ワフルが僕の方の仮家で寝るようになって、いつしか家は大きめに1つだけ建てるようになった。そこでみんなで一緒に寝るようになった。
それ以来、僕は、外で次の日の計画を立てるようになった。でも小さい家の中でついたそのクセは、その後も残ったままだったのだろう。
そう推測しながらも、僕はまた恥ずかしくなってきた。
「そうなんだ・・・なんか、ごめんね」
ひとまず、行ったりきたりしていたことで、グルグル目が回りかけたらしいサラ対して、僕は謝った。
「いや、いいって」
いつもどおり、やっぱりサラはそれを許してくれた。久々にこのやり取りをしたような気がした。
・・・
・・・
・・・。
(今さら、考えてもしょうがないか・・・)
僕はサラに全部見られていたことを、改めて自覚した。
この子には、隠し事とかは、もうできないんじゃないかと思った。ここまで来たら、開き直るしかないような気がした。
考える時に行ったりきたりすることについては「もうしないようにするね」ってサラに伝えた。でも「そっちの方が考えがまとまるなら、それでいい!」ってサラは言ってくれた。僕はサラに感謝を告げた。
「次からはせめて、ゆっくり歩くね」
「あわてない」を実践しようとしていたところでもあったので、僕はサラにそう伝えた。
「それで十分だ!」
サラはやっぱりかっこよく、こう応えた。
こうして僕は、一つ目の話を聞き終えた。
ーーーーーー
次に僕は「笑いを堪えていたんじゃなかったら、何を堪えていたのか?」これを聞いてみた。
「あー・・・。あれは、だな・・・」
サラは、ここまでを言って言葉に詰まった。少し赤い顔をして、頬を右手の人差し指でポリポリと掻いた。今までとは打って変わって歯切れが悪くなった。
「うん?」
言葉を促してみた。
・・・
・・・
・・・。
「・・・って、思ったんだ」
(・・・?)
サラが(アニメ幼女声で)ゴニョゴニョと何か言った。でも、後半しか聞き取れなかった。
僕は(唐突なんだけれども事実として)志○けんさんを思い出した。あの人みたいに「あんだって!?」って言えたら、どんなに楽だろうと思った。
結局の所、僕は志村○んでもなかったし、自分の言葉を探した。
「ごめんサラ・・・。ちょっと、最後の方しか聞き取れなかった」
素直にそう伝えた。
「その・・・さ? 一生懸命頑張ってるのを見て、か、可愛いな・・・って思ったんだよ・・・。なんかこう・・・グッと来たんだよ。それに耐えてたんだ」
サラはさっきよりは声量を上げてそう言った。でもその言葉は少し途切れ途切れだった。
「・・・わりーかよ?」
そう付け足しながら、サラは、少し恨めしそうに僕をにらんだ。
(また可愛いか><)
・・・なんて思ったけど、「悪いかよ?」と問われて「悪い」と答える機能を僕は持っていなかった。それに、サラに対してキュンとするのは僕だって同じだった。
「悪くないよ? いろいろと教えてくれてありがとね、サラ」
僕はサラに「なるべく笑顔で」を心がけてそう言った。
「お、おぅ・・・」
恥ずかしそうにサラはそう応えた。
(こんなサラも、やっぱり可愛いな・・・)
お姫様みたいになった時ともちょっと違う。そんなサラを見て僕はそう思った。
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