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ウインティア王国編
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世界が暗く見える。
エリーのそばにいる時は、あんなに世界が輝いて見えていたのに。
王宮で食べる食事も、学園で食べる食事も、何を食べても味がしない。
もう一度エリーの手作り弁当が食べたい。
編入初日、俺に向かって走ってくる黒髪黒目の女。
ゾルティーとアランが言っていた自分をヒロインだと思い込んでいる女だとすぐに分かった。
何人もの男と寝ている娼婦のような女が今度は俺を次のターゲットに選んだようだ。
どうせ目の前でワザと転ぶのだろう?
それともぶつかってくるのか?
今までの男には通用したのだろうが、俺にも同じ手が使えると思ったのか?
報告通り頭が足りないことは分かった。
コイツのせいで・・・
エリーは何年間、この女の存在に追い詰められて生きてきたんだ?
俺と初めて会った時なんて、まだ幼い子供だったんだぞ。
あんなに小さかった頃からエリーを苦しめてきたんだ。
俺の前で可愛く笑うその裏で、ずっと怯えていたのかと思うと胸が締め付けられて苦しくなる。
この女に殺意が湧く、いっそ殺してしまおうか・・・
コイツの存在自体が忌々しい。
殺意を込めた俺の目に睨まれた女は顔色を変えて俺の横を走り抜けて行った。
ヒロインだか転移者だかどうでもいいが、人の気持ちを思い通りに出来ると思うなよ。
俺がエリー以外の女に惹かれるなど有り得ない。
あの日以降あの女が俺に接触してくることはない。
最近、ガルザークが何故かいつも近くにいるような気がする。
あの女のような手を使って俺に接触しようと企んでいる令嬢を阻止してくれているようだ。
どの令嬢の目もギラギラしていて気持ち悪い。
王妃の椅子は余程魅力的に見えるようだ。
毎日着飾って贅沢な暮らしができると思っているのだろう。
そんなことをしていたらすぐに国が破綻してしまう。
王妃の執務は大量にある。
自分のことよりも、国や国民たちが安寧に暮らせる治世を国王を支えながら共にほぼ休みなく働いている。
王妃が開くお茶会ですら公務だと気付いている令嬢が一体何人いるのか。
そんなことも想像すら出来ない者が次期王妃の椅子を狙うなど烏滸がましいにも程がある。
貴族の令嬢として、それなりの教育は受けているのだろうがそれ以上のものを求められる。
他国相手に恥を晒すような王妃では舐められる。
近隣諸国の言葉はもちろん、他国の礼儀やマナーも完璧にこなせることが必要だ。
そこまで身に付けている令嬢が一体何人いるのだろうか。
学園では俺の婚約者候補に上がると勝手に決めつけた何人かの令嬢たちの派閥が出来ているそうだ。
王家から打診があったわけでもないのにだ。
王位を継ぐ者として婚姻して子を成すことを求められることは理解している。
ただ相手が誰だろうが俺は愛することは出来ないだろう。
俺に婚約者候補すらいないことも、度々議会で取り沙汰さているのも知っているが、煩く言う者ほど自分の娘を俺に宛がおうとしている。
今の俺に陛下である父上も、王妃である母上も強引に話を進めることはしない。
この半年間、学園に通っていても楽しいことなど何一つ無かった。
淡々と過ごす毎日の中でアトラニア王国での日々が色褪せることなく昨日のことのように思い出せる。
あのピクニックの日、エリーから目を離すとこっそり馬に1人で乗ろうとしてアランに怒られていたな。
アランから乗馬禁止の出来事を聞いて当然だと納得した。
何を考えて馬の背に立ったまま馬を走らせようとしたんだ?
一生残る傷が出来ていたかもしれないんだぞ?
たとえ傷があろうが、エリーがエリーでいる限り俺は気にしないけどな。
口を尖らせて拗ねた顔のエリーも可愛かったな。
その禁止令のおかげでエリーを俺の前に乗せることが出来たんだよな。
エリーは女性の中では背は高いが、前に座った体は華奢で腰なんて折れそうなほど細い。すっぽりと俺の腕の中におさまって、エリーの紫銀の髪がキラキラと輝き俺の顔にかかる。その髪からはほんのりとエリーの香りがした。
あの優しい香りがいつもエリーの隣にいた俺を癒してくれていたことを彼女は気付いていただろうか?
諦めたはずのエリーのことを俺が毎日思い出していることをエリーは思いもしないだろうな。
エリー、今も君はアトラニア王国で俺の大好きな笑顔で過ごせているかい?
エリーも俺と同じ16歳になったんだな。
結局俺はエリーに何もプレゼントすることが出来なかったな。
いつでも渡せるように用意していたのに・・・
俺が何よりも大事にしているエリーが刺繍を施したハンカチを貰ったように、俺を思い出してもらえるように渡せばよかった。
もうハンカチからエリーの香りは消えてしまった。
いつか同じようにエリーの記憶からも俺と過ごした日々の思い出が消えてしまうのだろうか。
それでも俺はエリーの幸せを願っているよ。
また、王家主催のお茶会が開かれる。
今回はゾルティーの意向で『マイ』も参加させるようだ。
あのゾルティーのことだ、何か企んでいることは想像できる。
優しい顔付きのゾルティーを外見だけで舐めてかかると痛い目を見ることになる。
男とするコトしか考えていないあの女は、ゾルティーにどんな手を使ってくるのか、アラン以外のゲームでいう攻略対象者が今度のお茶会で揃う。
エリーのそばにいる時は、あんなに世界が輝いて見えていたのに。
王宮で食べる食事も、学園で食べる食事も、何を食べても味がしない。
もう一度エリーの手作り弁当が食べたい。
編入初日、俺に向かって走ってくる黒髪黒目の女。
ゾルティーとアランが言っていた自分をヒロインだと思い込んでいる女だとすぐに分かった。
何人もの男と寝ている娼婦のような女が今度は俺を次のターゲットに選んだようだ。
どうせ目の前でワザと転ぶのだろう?
それともぶつかってくるのか?
今までの男には通用したのだろうが、俺にも同じ手が使えると思ったのか?
報告通り頭が足りないことは分かった。
コイツのせいで・・・
エリーは何年間、この女の存在に追い詰められて生きてきたんだ?
俺と初めて会った時なんて、まだ幼い子供だったんだぞ。
あんなに小さかった頃からエリーを苦しめてきたんだ。
俺の前で可愛く笑うその裏で、ずっと怯えていたのかと思うと胸が締め付けられて苦しくなる。
この女に殺意が湧く、いっそ殺してしまおうか・・・
コイツの存在自体が忌々しい。
殺意を込めた俺の目に睨まれた女は顔色を変えて俺の横を走り抜けて行った。
ヒロインだか転移者だかどうでもいいが、人の気持ちを思い通りに出来ると思うなよ。
俺がエリー以外の女に惹かれるなど有り得ない。
あの日以降あの女が俺に接触してくることはない。
最近、ガルザークが何故かいつも近くにいるような気がする。
あの女のような手を使って俺に接触しようと企んでいる令嬢を阻止してくれているようだ。
どの令嬢の目もギラギラしていて気持ち悪い。
王妃の椅子は余程魅力的に見えるようだ。
毎日着飾って贅沢な暮らしができると思っているのだろう。
そんなことをしていたらすぐに国が破綻してしまう。
王妃の執務は大量にある。
自分のことよりも、国や国民たちが安寧に暮らせる治世を国王を支えながら共にほぼ休みなく働いている。
王妃が開くお茶会ですら公務だと気付いている令嬢が一体何人いるのか。
そんなことも想像すら出来ない者が次期王妃の椅子を狙うなど烏滸がましいにも程がある。
貴族の令嬢として、それなりの教育は受けているのだろうがそれ以上のものを求められる。
他国相手に恥を晒すような王妃では舐められる。
近隣諸国の言葉はもちろん、他国の礼儀やマナーも完璧にこなせることが必要だ。
そこまで身に付けている令嬢が一体何人いるのだろうか。
学園では俺の婚約者候補に上がると勝手に決めつけた何人かの令嬢たちの派閥が出来ているそうだ。
王家から打診があったわけでもないのにだ。
王位を継ぐ者として婚姻して子を成すことを求められることは理解している。
ただ相手が誰だろうが俺は愛することは出来ないだろう。
俺に婚約者候補すらいないことも、度々議会で取り沙汰さているのも知っているが、煩く言う者ほど自分の娘を俺に宛がおうとしている。
今の俺に陛下である父上も、王妃である母上も強引に話を進めることはしない。
この半年間、学園に通っていても楽しいことなど何一つ無かった。
淡々と過ごす毎日の中でアトラニア王国での日々が色褪せることなく昨日のことのように思い出せる。
あのピクニックの日、エリーから目を離すとこっそり馬に1人で乗ろうとしてアランに怒られていたな。
アランから乗馬禁止の出来事を聞いて当然だと納得した。
何を考えて馬の背に立ったまま馬を走らせようとしたんだ?
一生残る傷が出来ていたかもしれないんだぞ?
たとえ傷があろうが、エリーがエリーでいる限り俺は気にしないけどな。
口を尖らせて拗ねた顔のエリーも可愛かったな。
その禁止令のおかげでエリーを俺の前に乗せることが出来たんだよな。
エリーは女性の中では背は高いが、前に座った体は華奢で腰なんて折れそうなほど細い。すっぽりと俺の腕の中におさまって、エリーの紫銀の髪がキラキラと輝き俺の顔にかかる。その髪からはほんのりとエリーの香りがした。
あの優しい香りがいつもエリーの隣にいた俺を癒してくれていたことを彼女は気付いていただろうか?
諦めたはずのエリーのことを俺が毎日思い出していることをエリーは思いもしないだろうな。
エリー、今も君はアトラニア王国で俺の大好きな笑顔で過ごせているかい?
エリーも俺と同じ16歳になったんだな。
結局俺はエリーに何もプレゼントすることが出来なかったな。
いつでも渡せるように用意していたのに・・・
俺が何よりも大事にしているエリーが刺繍を施したハンカチを貰ったように、俺を思い出してもらえるように渡せばよかった。
もうハンカチからエリーの香りは消えてしまった。
いつか同じようにエリーの記憶からも俺と過ごした日々の思い出が消えてしまうのだろうか。
それでも俺はエリーの幸せを願っているよ。
また、王家主催のお茶会が開かれる。
今回はゾルティーの意向で『マイ』も参加させるようだ。
あのゾルティーのことだ、何か企んでいることは想像できる。
優しい顔付きのゾルティーを外見だけで舐めてかかると痛い目を見ることになる。
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