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石榴の月 第二話②
石榴の月~愛され求められ奪われて~
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その時、源治は烈火のごとく憤った。そは何も源治でなくとも、当然のことであっろう。突如として自分の女房を取り上げられしかも自分たちの暮らす長屋の取り壊しを件に差し出せと言われて、大人しく従う男いるまい。
源治はあの時、お民に言った。
―他の連中のことなんぞ気にすることはぇ。どこかに引っ越して、お前は知らん顔していれば良い。
だが、お民にとってこの裏店は九年間、み慣れた懐かしい我が家であった。ここで初の良人兵助との新婚生活を過ごし、兵太いう愛し子を授かり、また失った。幾ら我身が助かりたい一心からとはいっても、徳店の人々を見捨てて、自分だけがのうのう別の場所に逃げて生き存えることはできなった。
結局、お民は嘉門の許に上がる道を選んだあのときの源治の落ち込み様は、当人のおの方が見ていられないほどだった。
そして、今、嘉門の許から無事帰ってきお民は、こうして良人と共に表面だけは何変わらぬ毎日を過ごしている。
嘉門の許で送った日々は、まさに思い出たくもないような地獄であった。嘉門のおへの執着と寵愛は並々ならぬものがあり、いそのものは五百石の旗本の寵姫として身綺羅で飾り、豪奢な部屋に住み、何一つ不由のないものであった。しかし、近隣の住たちからは半ば蔑みを込めて〝妾御殿〟とばれる離れに住まわされ、夜毎、嘉門の慰ものにされた日々はまさに快楽地獄に囚わ続けた日々の繰り返しであった。
お民は一年という約定よりは随分と早くされてきた。嘉門の許にいたのは八ヵ月ほの間のことだ。その間、お民は嘉門の望んどおり、嘉門の子を宿した。が、子は半年どで流れ、流産したお民は暇を出され石澤屋敷から徳平店に帰されてきたのだ。
あれから半年が経った。お民が嘉門の屋に上がって丁度一年が経とうとしている。ったの一年がその何十倍にも感じられるど、様々なことがありすぎるほどあった一間であった。
それでも、お民はとにかくこうして良人側にいる。今、この瞬間、心から求め必要する男の腕に抱かれ、この男の温もりに好なだけ身を委ねることができる。それがどほど幸せなことか。嘉門の許で過ごした悪のような日々を思うにつけ、今の生活はたえその日暮らしの貧しさでも極楽にいるよなものだと思うのだった。
だが。お民には、けして源治にさえも打明けられぬ葛藤があった。―否、源治であばこそ、訴えられぬ悩みだ。嘉門の許からってきてひと月ほど、源治はけしてお民にれようとしなかった。最初、良人は他の男慰みものになった女を最早以前のように受容れてはくれないのかと思った。
哀しいし、辛いことだけれど、それは当り前のことだとも。ただの間違いで片付けしまうには、お民は嘉門の許に長居をしすた。それがけして、お民自身が心から望んものではなかったとしても、源治が嘉門にんざん穢されたこの身体を厭わしいものだ感じてしまったとしても致し方ない。
やはり、自分はここに戻ってこられない戻ってはならない身だったのだ。そう思って出ていくことを考えたときもあった。が、民の不安は杞憂であったらしい。お民が源との別離をいつ切りだそうかと懊悩していある夜、源治は傍らのお民の布団にすべりんできた。以来、以前のように源治とお民臥所を共にしている。
とはいえ、お民の方がこの頃では、二、日に一度の良人の求めに引き気味になってた。むろん、絶対に態度にも口にも出せぬとだ。どんなに気が進まなくても、お民は治が求めてきたときには、素直に身を任せいた。
男の舌が口中に割り込んでくる。歯茎を念になぞられる。お民はこの頃、違和感をえることがあった。以前はけして荒々しく執拗でもなかった良人の愛撫が微妙に変化ている。昔の源治であれば、お民が呼吸もきないような乱暴さで口づけを延々と続けことはなかった。
そこに、お民は男の苛立ちというか焦りようなものを感じてしまうのだ。
自分の中の形容しがたい想いが、もしや人に気取られているのか。こんな時、お民ぎくりとしてしまう。源治は見かけは寡黙何を考えているか知れぬところがあるが、外に勘が鋭い。お民の心なぞとうに見抜いいるのかもしれない。
源治の舌がお民の舌を追いかけてくる。が寸でのところで、お民は逃げた。それでも源治は舌を絡ませようと躍起になる。
―いやっ。
お民は咄嗟に心の中で叫び、顔を背けた。
「お民―」
源治の声が心もち低くなる。
源治はあの時、お民に言った。
―他の連中のことなんぞ気にすることはぇ。どこかに引っ越して、お前は知らん顔していれば良い。
だが、お民にとってこの裏店は九年間、み慣れた懐かしい我が家であった。ここで初の良人兵助との新婚生活を過ごし、兵太いう愛し子を授かり、また失った。幾ら我身が助かりたい一心からとはいっても、徳店の人々を見捨てて、自分だけがのうのう別の場所に逃げて生き存えることはできなった。
結局、お民は嘉門の許に上がる道を選んだあのときの源治の落ち込み様は、当人のおの方が見ていられないほどだった。
そして、今、嘉門の許から無事帰ってきお民は、こうして良人と共に表面だけは何変わらぬ毎日を過ごしている。
嘉門の許で送った日々は、まさに思い出たくもないような地獄であった。嘉門のおへの執着と寵愛は並々ならぬものがあり、いそのものは五百石の旗本の寵姫として身綺羅で飾り、豪奢な部屋に住み、何一つ不由のないものであった。しかし、近隣の住たちからは半ば蔑みを込めて〝妾御殿〟とばれる離れに住まわされ、夜毎、嘉門の慰ものにされた日々はまさに快楽地獄に囚わ続けた日々の繰り返しであった。
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あれから半年が経った。お民が嘉門の屋に上がって丁度一年が経とうとしている。ったの一年がその何十倍にも感じられるど、様々なことがありすぎるほどあった一間であった。
それでも、お民はとにかくこうして良人側にいる。今、この瞬間、心から求め必要する男の腕に抱かれ、この男の温もりに好なだけ身を委ねることができる。それがどほど幸せなことか。嘉門の許で過ごした悪のような日々を思うにつけ、今の生活はたえその日暮らしの貧しさでも極楽にいるよなものだと思うのだった。
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哀しいし、辛いことだけれど、それは当り前のことだとも。ただの間違いで片付けしまうには、お民は嘉門の許に長居をしすた。それがけして、お民自身が心から望んものではなかったとしても、源治が嘉門にんざん穢されたこの身体を厭わしいものだ感じてしまったとしても致し方ない。
やはり、自分はここに戻ってこられない戻ってはならない身だったのだ。そう思って出ていくことを考えたときもあった。が、民の不安は杞憂であったらしい。お民が源との別離をいつ切りだそうかと懊悩していある夜、源治は傍らのお民の布団にすべりんできた。以来、以前のように源治とお民臥所を共にしている。
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そこに、お民は男の苛立ちというか焦りようなものを感じてしまうのだ。
自分の中の形容しがたい想いが、もしや人に気取られているのか。こんな時、お民ぎくりとしてしまう。源治は見かけは寡黙何を考えているか知れぬところがあるが、外に勘が鋭い。お民の心なぞとうに見抜いいるのかもしれない。
源治の舌がお民の舌を追いかけてくる。が寸でのところで、お民は逃げた。それでも源治は舌を絡ませようと躍起になる。
―いやっ。
お民は咄嗟に心の中で叫び、顔を背けた。
「お民―」
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