石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~

めぐみ

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石榴の月 第二話㉝

石榴の月~愛され求められ奪われて~

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 まるで源治と一緒にいたときのような、の安らぎを感じることができるのだ。とはっても、佐吉への親しみめいた気持ちはあまでも世話になっている恩人へのものにすない。
 江戸から流れてきて、ある日突然、村にみついたお民を快く思わない者も多い中、の村長は反感を買うことも怖れず、お民をってくれた。こうして時折、様子を見がて訪ねてきては、何か困ったことはないかと遣ってくれる。
「そういえば」
 佐吉が思い出したついでというように、から何かを取り出す。それは、まだ編み上たばかりの草鞋であった。紅い鼻緒が鮮やで、愛らしい。
「これを使って貰えないだろうか」
「もしかして、佐吉さんが編んだんですか」 お民は眼を見張った。
 ここの村人たちは主に農業を営んでいが、副業や内職として夜や農作業のできな冬場は草鞋を編むのだ。
「この間、今まで履いていた草履の鼻緒がれて困っていると聞いたものだから」
 訥々と喋る佐吉はけして饒舌ではない。顔で歳よりは若く見えるくせに、どこか老した雰囲気が漂い、普段から物静かな若者あった。そんなところも、こうしていると源治といた頃を思い出させる一因なのかもれない。
「ありがとうございます」
 お民は両手で押し頂くようにして草鞋をけ取った。
「大切に履かせて頂きます」
 数日前は、家で飼っている鶏が今朝生んのだと籠に盛った産みたての卵を持ってきくれた。
「村長」
「お民さん、その呼び方は」
 言いかけた佐吉に、お民はひっそりと微した。
 まだこの村に来てまもない頃、佐吉が口尖らせたことがある。
―村長だなんて他人行儀な呼び方をしなで、佐吉と呼んでくれねえか。
 そのときは微笑んで頷いたものだったけど。
「いいえ、村長は村長です」
 お民はきっぱりと言うと、佐吉の眼を真すぐに見つめた。
「村長、もう、ここにはいらっしゃらない下さいませんか」
「お民さん、何でそんなことを―」
 突然の言葉に、佐吉は蒼褪めていた。
「私と村長のことを、とやかく噂する人がると聞いています。村長が余所者の私に親にして下さるだけのおつもりでも、村の人ちはそういう風に理解してはくれません。のままでは悪い噂が広まり、村長と村人たの間に溝ができてしまうでしょう」
「言いたい奴には言わせておけば良い」
 いつもの沈着な佐吉らしからぬ激高した言いに、お民は微笑を消さぬまま首を振った。「そんなわけにはゆきません。村長には本によくして頂きましたけど、これ以上もうご厚意に甘えることはできないのです」
 この村に身を落ち着けるためには、お民身、あまり村人に反感を買いたくはない。「俺がただの親切心だけでお民さんに色々便宜を図っているのではないとしたら?」 今度は、お民が佐吉の言葉に愕く番だった。 眼を見開いたお民を、佐吉が怖いほど真なまなざしで見つめる。
「俺が下心でお民さんに近づいているのだしたら、お民さんはどうする?」
 奇妙な沈黙が落ちる中、お民と佐吉の視が束の間、絡み合った。
「佐吉さん」
 今度は名前で呼ばれ、佐吉が眼をまたたた。
 お民は普段はつとめて隠そうとしている部を少し前に突き出して見せた。そうやっ姿勢を取ると、少し膨らんできた腹部が目つ。
「お民さん、あんた、まさか―」
 佐吉の声が愕きに掠れていた。
 お民はにっこりと笑んだ。こんな状況なに、思わず佐吉が見惚れるほど艶な微笑だ。「私は、こういう女なんです。だから、私はあまり拘わり合いにならない方が良いでよ」
「お民さん、その腹の子の父親とはどうなてるんだ?」
 ひたむきな眼で問われ、お民は凄艶にもえる微笑を浮かべた。
「この子の父親とは別れました。でも、今も、私はそのひとのことが大好きなんです」 本当に、この子の父親が源治だったら、んなにか嬉しいだろう。源治には迷惑な話ろうが、お民はこの子を源治の子だと思っ育てようと考えている。
 子どもと父親は区別して考えてはいるつりだが、やはり、お民の身体を欲情のまま蹂躙したあの石澤嘉門の子だと思うのはや切れなかった。
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