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石榴の月 第二話㊲
石榴の月~愛され求められ奪われて~
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指摘され、お民は笑った。
「どうやら図星のようだな」
源治の声も笑いを含んでいる。
「どれ、顔を見てみよう」
源治がお民の身体に両手をかけ、くるり回し自分の方へと向かせた。
「お前は考えてることが全部、顔に出ちまう嘘のつけねえ質の女なんだ。子どもみてえところは、ほんとに、変わっちゃいねえな」 揶揄するように言われ。
お民は頬を膨らませた。
「まあ、酷い。久しぶりに逢ったっていうに、お前さんの口の悪さも相変わらずですね」 こうして軽口を交わしていると、すべて嘘、悪い夢のような気がする。石澤嘉門と拘わりも、嘉門の子を身籠もり源治の許をび出してきてしまったことも。
そう、すべてがめざめて終わる夢ならばどんなにか良いだろう。
あれほど逢いたいと願った男の顔が眼のにある。本当に夢を見ているようだと、おは茫然と思った。
「また、きれいになったな」
いきなり直截に賞められ、お民は頬を染た。
「いやだ、何を言うかと思ったら、今度は世辞ですか」
「馬鹿言え。手前の女房に世辞まで言って今更口説いて何になる。俺はお前と一緒でなんかつけねえ。上に何とかがつくほど正なのはお互いさまだよ」
源治が笑いを含んだ声で言う。その視線すっと動き、大きく膨らんだ腹の上で吸いせられるように止まった。
「腹、大きくなったな。何ヶ月になるんだけ。俺は男だし、父親になったことがねえら判らないが、腹の赤児が動いたりするんって? そいつもやっぱり動くのか」
刹那、お民の顔が強ばり、さっと蒼褪めた。「お前さん―」
「触らせてくれねえか」
予期せぬ展開に、お民は言葉を失う。
源治がそろりと手を伸ばし、お民の丸い腹に触れた。
その瞬間。
腹の赤児が元気に、いつもよりひときわきく内側から腹壁を蹴った。
「おっ、動いたぞ。凄ぇなあ。こいつ、もう俺のことが判るのかもしれねえ。さぞかし利口なガキになるぜ。おい、判るか、俺が前の父ちゃんだぜ」
膨らんだ腹に向かって相好を崩して呼びける姿は、まさに、初めての子の誕生を待侘びる若い父親そのものだ。
「お前さん、それは!」
お民が首を振った。
できない。源治の一生を台無しになんてきない。源治が腹の子の父親になろうとま言ってくれるのは嬉しい。でも、その優しに甘えてしまっては駄目だ。
「お民、また一緒に暮らそう」
源治のきっぱりとした物言いに、お民はぶりを振る。
「それはできないわ」
「何故だ? 生まれてくる腹の赤ン坊と親三人で暮らせば良いじゃねえか。そうすれば腹の子は父親を失わずに、俺はお前を失わに済むんだ。お前が江戸に帰るのが厭だっいうのなら、俺はここに住んでも良い。なに仕事なら何とかなる。畑でも田んぼでも耕て、俄百姓になるさ」
「―お前さん、そこまで」
言葉こそ穏やかであったが、源治の瞳に揺るがぬ決意が既に込められている。
源治の気持ちは死ぬほど嬉しい。だが、当にその気持ちに寄りかかってしまってもいのかと、まだ一抹の迷いがある。
「―こんな私で良いの?」
「俺にはお前しかいねえ。いつかも言ったろう? 俺がお前の笑顔を一生守るって」 お民の脳裡に、初めて源治に想いを打ちけられたときの言葉が鮮やかに甦った。
―お前の笑顔が良いんだ。
―私の笑顔がなくなっちまったら?
―そしたら、俺が笑わせてやる。
ふいに懐かしい甘やかな記憶が呼び起これ、思わず泣き出してしまいそうになる。 ふっと涙ぐんで笑う。
「馬鹿だねえ。他の男の子を身籠もった女引き受けようだなんて」
「馬鹿でも良いよ。俺は一生、お前に傍にて欲しい。いつも俺と一緒にいて、お前のった顔を見ていてえんだ。それにな、正直うと、俺ァ、一日も早く、てて親ってものなってみたかったのさ」
源治は幼い時分に父を失くし、母親は苦して女手一つで二人の子を育てたという経がある。
一日も早く我が子をその腕に抱きたいとっていたという源治。でも、源治はお民にれまで一度もそんなことを言ったことはなかった。
「どうやら図星のようだな」
源治の声も笑いを含んでいる。
「どれ、顔を見てみよう」
源治がお民の身体に両手をかけ、くるり回し自分の方へと向かせた。
「お前は考えてることが全部、顔に出ちまう嘘のつけねえ質の女なんだ。子どもみてえところは、ほんとに、変わっちゃいねえな」 揶揄するように言われ。
お民は頬を膨らませた。
「まあ、酷い。久しぶりに逢ったっていうに、お前さんの口の悪さも相変わらずですね」 こうして軽口を交わしていると、すべて嘘、悪い夢のような気がする。石澤嘉門と拘わりも、嘉門の子を身籠もり源治の許をび出してきてしまったことも。
そう、すべてがめざめて終わる夢ならばどんなにか良いだろう。
あれほど逢いたいと願った男の顔が眼のにある。本当に夢を見ているようだと、おは茫然と思った。
「また、きれいになったな」
いきなり直截に賞められ、お民は頬を染た。
「いやだ、何を言うかと思ったら、今度は世辞ですか」
「馬鹿言え。手前の女房に世辞まで言って今更口説いて何になる。俺はお前と一緒でなんかつけねえ。上に何とかがつくほど正なのはお互いさまだよ」
源治が笑いを含んだ声で言う。その視線すっと動き、大きく膨らんだ腹の上で吸いせられるように止まった。
「腹、大きくなったな。何ヶ月になるんだけ。俺は男だし、父親になったことがねえら判らないが、腹の赤児が動いたりするんって? そいつもやっぱり動くのか」
刹那、お民の顔が強ばり、さっと蒼褪めた。「お前さん―」
「触らせてくれねえか」
予期せぬ展開に、お民は言葉を失う。
源治がそろりと手を伸ばし、お民の丸い腹に触れた。
その瞬間。
腹の赤児が元気に、いつもよりひときわきく内側から腹壁を蹴った。
「おっ、動いたぞ。凄ぇなあ。こいつ、もう俺のことが判るのかもしれねえ。さぞかし利口なガキになるぜ。おい、判るか、俺が前の父ちゃんだぜ」
膨らんだ腹に向かって相好を崩して呼びける姿は、まさに、初めての子の誕生を待侘びる若い父親そのものだ。
「お前さん、それは!」
お民が首を振った。
できない。源治の一生を台無しになんてきない。源治が腹の子の父親になろうとま言ってくれるのは嬉しい。でも、その優しに甘えてしまっては駄目だ。
「お民、また一緒に暮らそう」
源治のきっぱりとした物言いに、お民はぶりを振る。
「それはできないわ」
「何故だ? 生まれてくる腹の赤ン坊と親三人で暮らせば良いじゃねえか。そうすれば腹の子は父親を失わずに、俺はお前を失わに済むんだ。お前が江戸に帰るのが厭だっいうのなら、俺はここに住んでも良い。なに仕事なら何とかなる。畑でも田んぼでも耕て、俄百姓になるさ」
「―お前さん、そこまで」
言葉こそ穏やかであったが、源治の瞳に揺るがぬ決意が既に込められている。
源治の気持ちは死ぬほど嬉しい。だが、当にその気持ちに寄りかかってしまってもいのかと、まだ一抹の迷いがある。
「―こんな私で良いの?」
「俺にはお前しかいねえ。いつかも言ったろう? 俺がお前の笑顔を一生守るって」 お民の脳裡に、初めて源治に想いを打ちけられたときの言葉が鮮やかに甦った。
―お前の笑顔が良いんだ。
―私の笑顔がなくなっちまったら?
―そしたら、俺が笑わせてやる。
ふいに懐かしい甘やかな記憶が呼び起これ、思わず泣き出してしまいそうになる。 ふっと涙ぐんで笑う。
「馬鹿だねえ。他の男の子を身籠もった女引き受けようだなんて」
「馬鹿でも良いよ。俺は一生、お前に傍にて欲しい。いつも俺と一緒にいて、お前のった顔を見ていてえんだ。それにな、正直うと、俺ァ、一日も早く、てて親ってものなってみたかったのさ」
源治は幼い時分に父を失くし、母親は苦して女手一つで二人の子を育てたという経がある。
一日も早く我が子をその腕に抱きたいとっていたという源治。でも、源治はお民にれまで一度もそんなことを言ったことはなかった。
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