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「では月末評価を始めます」
スーツを着た大人達が練習室にゾロゾロと入ってくる。いつまで経っても慣れない緊張感にそっと首元のネックレスをギュッと握った。シルバーのチェーンに掛かっている指輪は婚約した時にもらったものだ。
そう、アイドルを目指す練習生なのに僕には婚約者がいる。
名前は朝峰楓。同い年の幼馴染で頭も運動神経も良いだけでなく、自分なんかよりよっぽどアイドルに向いているといつも思うほどの顔整い。経営者である2人の親がいつの間にか決めていた彼との婚約ではあったが、僕は凄く嬉しかった。なんてったって初恋の相手だから。
20歳までにデビューしたら婚約破棄
デビューできなかったら練習生を辞めて結婚
これが婚約の条件だ。アイドルとしてデビューしたら結婚なんてできないから婚約破棄。デビューできなくても路頭に迷わないよう、御曹司の楓と結婚。中学生の時から練習漬けの日々を送っていた僕を心配しての婚約なのだと思う。お互いの家族が集まった場でサプライズで聞かされたこの婚約に目を丸くした後、楓はいつも通り優しく「これからもよろしくね」と微笑んでくれた。
「次、緋夏」
「はい」
前に出てマイクを口元に近づける。
1ヶ月ひたすら練習してきたのだから完璧なものを披露したいのに心のどこかで“失敗したい”と願っている自分もいる。
そうして今月もまたデビューと初恋成就が乗った天秤が激しく揺れ動きながらの月末評価が始まった
________________________
「緋夏のバラードはいつ聞いても最高だな!」
練習終わりの深夜。モップ片手に水分補給をしていると後ろからガバッと抱きつかれる。
「あー!悠人のせいで服に水が掛かった」
ごめんごめんとヘラヘラしながら濡れたTシャツを僕のタオルで拭くこの男は僕と同じAクラスの練習生の悠人である。Aクラスはデビューに最も近いと言われているクラスで、今月も僕たち2人はAクラス存続評価だった。
「ところで、うちの事務所から新しいアイドルグループがデビューする話は聞いた?」
首を傾げると、途端に顔を近づけてきて内緒話をしているような格好になる。SNSに疎い僕は時々流行り物が好きな悠人から色々な情報を聞かせられる。
「ボーイズグループをデビューさせるって内部情報が漏れたみたいでネットニュースになっていたんだ。俺たちももうすぐデビューできちゃったり...なーんて」
「デビュー...?」
「そう!緋夏なんてもう5年も練習生だろ?そろそろ本当にデビューしたいよな」
「う、うん...そうだね。でもその話は確かじゃないし本人達が勘づいてるって事務所が気づいて白紙になったら嫌だから僕以外に言ったらダメだぞ」
頭が真っ白になりながらも悠人にそう念押ししてから練習室から追い出す。掃除当番は僕一人で、悠人がいなくなった部屋は静かすぎて物思いに耽ってしまう。
デビュー...
今まで現実味のなかったことがグンと近づいてきた気がして心臓がバクバク音を立始める。落ち着くために首元の指輪に触りながら取り敢えず今は目の前のことに集中しようと掃除を再開したのだった。
スーツを着た大人達が練習室にゾロゾロと入ってくる。いつまで経っても慣れない緊張感にそっと首元のネックレスをギュッと握った。シルバーのチェーンに掛かっている指輪は婚約した時にもらったものだ。
そう、アイドルを目指す練習生なのに僕には婚約者がいる。
名前は朝峰楓。同い年の幼馴染で頭も運動神経も良いだけでなく、自分なんかよりよっぽどアイドルに向いているといつも思うほどの顔整い。経営者である2人の親がいつの間にか決めていた彼との婚約ではあったが、僕は凄く嬉しかった。なんてったって初恋の相手だから。
20歳までにデビューしたら婚約破棄
デビューできなかったら練習生を辞めて結婚
これが婚約の条件だ。アイドルとしてデビューしたら結婚なんてできないから婚約破棄。デビューできなくても路頭に迷わないよう、御曹司の楓と結婚。中学生の時から練習漬けの日々を送っていた僕を心配しての婚約なのだと思う。お互いの家族が集まった場でサプライズで聞かされたこの婚約に目を丸くした後、楓はいつも通り優しく「これからもよろしくね」と微笑んでくれた。
「次、緋夏」
「はい」
前に出てマイクを口元に近づける。
1ヶ月ひたすら練習してきたのだから完璧なものを披露したいのに心のどこかで“失敗したい”と願っている自分もいる。
そうして今月もまたデビューと初恋成就が乗った天秤が激しく揺れ動きながらの月末評価が始まった
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「緋夏のバラードはいつ聞いても最高だな!」
練習終わりの深夜。モップ片手に水分補給をしていると後ろからガバッと抱きつかれる。
「あー!悠人のせいで服に水が掛かった」
ごめんごめんとヘラヘラしながら濡れたTシャツを僕のタオルで拭くこの男は僕と同じAクラスの練習生の悠人である。Aクラスはデビューに最も近いと言われているクラスで、今月も僕たち2人はAクラス存続評価だった。
「ところで、うちの事務所から新しいアイドルグループがデビューする話は聞いた?」
首を傾げると、途端に顔を近づけてきて内緒話をしているような格好になる。SNSに疎い僕は時々流行り物が好きな悠人から色々な情報を聞かせられる。
「ボーイズグループをデビューさせるって内部情報が漏れたみたいでネットニュースになっていたんだ。俺たちももうすぐデビューできちゃったり...なーんて」
「デビュー...?」
「そう!緋夏なんてもう5年も練習生だろ?そろそろ本当にデビューしたいよな」
「う、うん...そうだね。でもその話は確かじゃないし本人達が勘づいてるって事務所が気づいて白紙になったら嫌だから僕以外に言ったらダメだぞ」
頭が真っ白になりながらも悠人にそう念押ししてから練習室から追い出す。掃除当番は僕一人で、悠人がいなくなった部屋は静かすぎて物思いに耽ってしまう。
デビュー...
今まで現実味のなかったことがグンと近づいてきた気がして心臓がバクバク音を立始める。落ち着くために首元の指輪に触りながら取り敢えず今は目の前のことに集中しようと掃除を再開したのだった。
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