【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

珊瑚

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つまりは時間稼ぎ。彼らが万が一にも侯爵家に帰らないための。
そして、王家に目を付けられていると理解した上で証拠隠滅を図られない為の。
アイリーンには、クラリスが彼女を殺そうと画策した時に使った薬剤をのこしているだろう、という、確信めいた何かがあった。
きっと、今回失敗した彼女はそのうちもう一度やろうとするだろう、と。

アイリーンの予想を聞いたギルバートは、素早く概要を両親に伝えた。
アイリーンへの殺人未遂は万が一立証出来ずとも、他の部分で王城に引きずって来ることが可能であるくらいには侯爵家はあらゆる場所でやらかしてきたのだ。
そして家宅捜索する間、引き止める方法が必要だった。もしも万が一、資金をやりくりする、と言って家に戻り、証拠隠滅でも図られたらたまったものではない。

見事に彼らの策が成った瞬間であった。


「そやつらを牢に入れろ。次に会うのは刑が決まった時だ。」

国王の言葉とともに、彼らはあっという間に連れていかれた。後に残されたのは、疲れきった顔を見せる面々だ。


「さてアイリーン。こちらで彼らの罪の精査をするが……何か希望はあるか?全部聞けるとは限らないが。」
「……そうですね……。特にはありませんが……。あ、一つだけ。無駄な情け容赦は無用です。徹底的に追及してください。」
「そうか。それは勿論だ、安心して任せてもらおう。」

国王はそう言うと、にやりと笑みを浮かべた。


「では、落ち着いたらゆっくりお話しましょうね。」

王妃もそうアイリーンに声をかけると、国王と共に部屋を後にした。
後に残されたのはアイリーンとギルバートのみだ。


「疲れただろう?少し休んで行くといい。帰ったらやることは盛りだくさんだ。君が使っていた部屋で仮眠を取るといい。僕も、少し疲れた……。」

ギルバートとアイリーンの二人は特に、昨日侯爵家から抜け出てきてから一睡もしていなかった。
アイリーンを気づかうギルバートだが、その顔には隠しきれない疲労が浮かんでいる。
アイリーンも、安心もあってか、すぐにでも瞼が落ちてきてしまいそうだったので、素直に甘えることにしたのだった。
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