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第8章
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「この後は? 暇なら飲み直すか」
「……んー」
ショーウィンドウいっぱいに飾られているソリに乗ったサンタクロースのイルミネーションを見ながら生返事をすると、「行くぞ」と声をかけられた。いつの間にかタクシーを拾っていて、後部座席のドアが開いて待っていた。
(冬って、こんなに明るかったっけ。あぁ、雪が積もってるからか。黒いアスファルトが白く覆われると、電飾が反射してこう見えるんだ……)
隣でポツポツと話題を振ってくる元彼の話に相槌を打ちながら、窓を流れるイルミネーションばかり見ていた。最近は個人宅でも飾っているところがちらほらあって、一種のお祭りみたいだった。
大学と自分の家を通り過ぎてから、元彼が「家にある酒が足りないかもしれない」と言うので、元彼の家の近くにあるコンビニで降車する。
なんで付いてきたんだっけ。
明るい店内に入った瞬間、現実に引き戻された気分になった。これから元彼の部屋に行って飲み直して、それで終わりにならないことくらいわかるはずなのに。
店内を見るふりをしながら闇雲に歩いているとスマホが鳴った。……ユウマくんからだ。
カップラーメンの売り場を見ている元彼の視界に入らないように避けてトイレに入る。
「……はい」
『先輩? 今どこ?』
「あ、今日はちょっと、友達とご飯食べてて、……ごめん」
『そっか』
「うん」
『何時に終わる? 迎えに行っていい?』
「え、ユウマくん、今日、忘年会じゃないの?」
『あぁ、でも行かないから』
「どうして? ……なんかあった?」
『いや、何も』
電話口で即答するユウマくんに違和感を覚える。なんだか、妙な胸騒ぎがした。
「……家に戻るまで三十分くらいかかるから、あったかいところで待ってて」
『いいの?』
「うん」
トイレから出て、私を探してキョロキョロしている元彼の肩を後ろから叩く。
「うわ、びっくりした。どこいたんだよ」
「ごめん、教授から電話かかってきた」
「卒論?」
「うん。ごめん、行ってくる」
「は、今から!?」
声を上げる元彼から離れて、何か言われて引き止められる前にコンビニを出る。さっき乗ってきたタクシーはもういなかった。仕方なく、はらはらと舞う雪の中をできる限り急いでユウマくんのところへ向かう。
雪のない日でも三十分はかかる道だから、どう頑張ってもそれ以上になってしまう。
家の近くのコンビニとか、スーパーとか、とにかく外よりは暖かいところで待っててくれたらいいけど……。
早歩きと小走りを繰り返しているうちに、あっという間に三十分が過ぎてしまった。それなのに積もり出した雪に足を取られてまだ着かない。もう一度ユウマくんに電話をかけて、まだ少しかかると伝える。
『今どの辺? 迎えに行こうか』
「大丈夫、走ってすぐ、あと五分くらい」
『走らなくていいよ、転ぶから』
電話を繋いだままにして、息を切らしながら急いだ。大学とアパートが並ぶ直線道路の先に、真っ黒な人影が見える。
アパートの前で待っていたユウマくんは、私を見つけると「お疲れ」と片手をひらひらさせて笑った。電話越しでは元気がなさそうだったのに、案外普通で拍子抜けする。
「だ、大丈夫……?」
「何が?」
「や、電話……、忘年会、行かないって」
「あぁ。俺もさっきまで友達と飯食ってて予定合わなかっただけだよ。先輩こそ大丈夫? 息きれまくって死にそうじゃん」
「ん、うん……」
よかった。てっきりまた、藤さんに会って何か言われたのかと思った。
呼吸を整えながら部屋を開ける。「お邪魔しまーす」と間延びした声で、ユウマくんがベッドへダイブした。
「もう、寝転ぶ前にコート早くよこして」
「はいはい」
ベッドの上でユウマくんから脱いだコートを受け取って、ポケットから取り出したスマホを渡す。
それから私はユウマくんを置いてお風呂に入る。ユウマくんはユウマくんで適当に冷蔵庫から飲み物を出したりテレビを観たりしている。同じ空間にいてもベッドに入るまでそれぞれが好き勝手やっている、もうそれがいつもの光景だった。
「先輩、就職先決まったってほんと?」
お風呂からあがり部屋に戻ると、ベッドで寝ながらテレビを観ていたユウマくんが顔を上げた。
どうして私の情報がいろんなところに筒抜けになっているんだろうと考えたけど、そうだ。元彼もユウマくんも、サークルの中では同じグループにいたんだった。
「あ、うん、おかげさまで」
邪魔にならないように同じベッドの壁側に入る。これ以上、嘘をつくのは無理そうで認めると、ユウマくんが少し身体を動かした。
「へえ、おめでとう。どこ?」
「んー、秘密」
「なにそれ」
「うそ。バイト先でね、そのまま社員として入れることになったの」
「リモートなんだっけ。じゃあ、このままここにいる?」
「それはないよ。ここ一応、学生用アパートだし、出て行かなきゃ」
「どこに配属されるかは決まった?」
「さぁ、それはもう少し先かな。入社して研修やって、それからじゃない?」
「ふーん」
ユウマくんの地元に決まったなんて言ったら、どんな反応をされるだろう。
とっさについた嘘はバレず、ユウマくんがもう一度「おめでとう」と言った。優しく微笑んでくれる顔を見て、罪悪感で胸が詰まる。
「じゃ、寝るかー」
少し機嫌のいい声で、ユウマくんが照明のリモコンを操作した。部屋がゆっくりと暗くなる。
布団の中にモゾモゾと潜って、当たり前のように抱き寄せられた。シャワーを浴びなかったユウマくんからは、飲食店の煙と外の冷たい空気の匂いがする。
(——ユウマくんは? また、彼女ができたって本当?)
元彼が私に言いたかったことはこういうことなんだろう。だけど大事な後輩だから、本人のいないところで貶めることは言いたくなくて、言葉を濁したんだろう。
私も私で、ユウマくんを前に聞きたいことを聞こうとすると、喉に異物が引っかかる感じがして言えない。
こんなに心が乱されるならやっぱり終わりにしたい。でもこの関係がなくなったら、私たちはきっとなんの接点もなくなる。
知り合う前の、他人になるのは嫌だ。だけど、一緒にご飯を食べに行ったり世間話をしあったりするようなただの友達にはなれそうになくて、他にいい着地点が見つからない。
理性も情緒もぐちゃぐちゃになる。ユウマくんの彼女になりたかった。「なりたかった」なんて、過去形になっている時点で、腹は決まってるはずなのに。
心の中で、何度も「でも」と「だけど」を繰り返す。
深夜や早朝、関係なくユウマくんのスマホに届くしつこいメッセージは、これまで何度も来ている。ユウマくんはそれに返信をしたりしなかったりしていた。今も、音は消しているけど、伏せたスマホの画面が時折、白く光る。布団を頭まですっぽり被っているユウマくんは朝までそれに気づかない。
誰かが私たちのことを監視して、私だけが咎められている気分だ。夜毎これを見るのも正直、疲れてしまった。
離れるなら、今しかないと思った。
「……ユウマくん、起きてる? あのね」
「……ん」
「こうやって会うの、もう終わりにしよっか」
ユウマくんが顔を出した。私の首の下にあった腕も抜かれて、じっと向かい合う。
「…………なんで?」
間を置いて聞こえてくる、さっきとは真逆の冷ややかな声に息を呑む。「あ……」と呟いて、どうにか彼を傷つけない穏便な言葉を探す。
「あの、就活は終わったんだけど卒論がまだ残ってて、あとバイトの時間も増やしたから、前みたいに毎週会える感じじゃなくなってて。年末年始は実家にも帰るし、ここも、もしかしたら早めに引き払って実家に戻るかもしれなくて」
冷え切った頭を使ってその場で考えた即席の嘘をペラペラと並べる私に、ユウマくんは何も言わなかった。じっと天井を見上げていて、その沈黙が怖い。だけど私もこれ以上、何も言えなかった。口を開けばまた、嘘ばかり出てきそうだ。
しばらくすると暗い部屋の中で起き上がる気配がして、同じように体を起こす。
ベッドから降りたユウマくんは電気を点けないままクローゼットの中からコートを取り出し始めた。
「え、ユウマくん……?」
「帰る。忙しいのにごめん」
無表情の顔で見下ろされて、怯む。あぁ、やっぱり、嘘だということがバレている……。
前回みたいに引き下がることなく、ユウマくんが部屋から出ていった。
追いかけることもできないまま、ベッドの上で呆然とする。
玄関のドアが閉まる音が、やけに重く冷たく響いた。
「……んー」
ショーウィンドウいっぱいに飾られているソリに乗ったサンタクロースのイルミネーションを見ながら生返事をすると、「行くぞ」と声をかけられた。いつの間にかタクシーを拾っていて、後部座席のドアが開いて待っていた。
(冬って、こんなに明るかったっけ。あぁ、雪が積もってるからか。黒いアスファルトが白く覆われると、電飾が反射してこう見えるんだ……)
隣でポツポツと話題を振ってくる元彼の話に相槌を打ちながら、窓を流れるイルミネーションばかり見ていた。最近は個人宅でも飾っているところがちらほらあって、一種のお祭りみたいだった。
大学と自分の家を通り過ぎてから、元彼が「家にある酒が足りないかもしれない」と言うので、元彼の家の近くにあるコンビニで降車する。
なんで付いてきたんだっけ。
明るい店内に入った瞬間、現実に引き戻された気分になった。これから元彼の部屋に行って飲み直して、それで終わりにならないことくらいわかるはずなのに。
店内を見るふりをしながら闇雲に歩いているとスマホが鳴った。……ユウマくんからだ。
カップラーメンの売り場を見ている元彼の視界に入らないように避けてトイレに入る。
「……はい」
『先輩? 今どこ?』
「あ、今日はちょっと、友達とご飯食べてて、……ごめん」
『そっか』
「うん」
『何時に終わる? 迎えに行っていい?』
「え、ユウマくん、今日、忘年会じゃないの?」
『あぁ、でも行かないから』
「どうして? ……なんかあった?」
『いや、何も』
電話口で即答するユウマくんに違和感を覚える。なんだか、妙な胸騒ぎがした。
「……家に戻るまで三十分くらいかかるから、あったかいところで待ってて」
『いいの?』
「うん」
トイレから出て、私を探してキョロキョロしている元彼の肩を後ろから叩く。
「うわ、びっくりした。どこいたんだよ」
「ごめん、教授から電話かかってきた」
「卒論?」
「うん。ごめん、行ってくる」
「は、今から!?」
声を上げる元彼から離れて、何か言われて引き止められる前にコンビニを出る。さっき乗ってきたタクシーはもういなかった。仕方なく、はらはらと舞う雪の中をできる限り急いでユウマくんのところへ向かう。
雪のない日でも三十分はかかる道だから、どう頑張ってもそれ以上になってしまう。
家の近くのコンビニとか、スーパーとか、とにかく外よりは暖かいところで待っててくれたらいいけど……。
早歩きと小走りを繰り返しているうちに、あっという間に三十分が過ぎてしまった。それなのに積もり出した雪に足を取られてまだ着かない。もう一度ユウマくんに電話をかけて、まだ少しかかると伝える。
『今どの辺? 迎えに行こうか』
「大丈夫、走ってすぐ、あと五分くらい」
『走らなくていいよ、転ぶから』
電話を繋いだままにして、息を切らしながら急いだ。大学とアパートが並ぶ直線道路の先に、真っ黒な人影が見える。
アパートの前で待っていたユウマくんは、私を見つけると「お疲れ」と片手をひらひらさせて笑った。電話越しでは元気がなさそうだったのに、案外普通で拍子抜けする。
「だ、大丈夫……?」
「何が?」
「や、電話……、忘年会、行かないって」
「あぁ。俺もさっきまで友達と飯食ってて予定合わなかっただけだよ。先輩こそ大丈夫? 息きれまくって死にそうじゃん」
「ん、うん……」
よかった。てっきりまた、藤さんに会って何か言われたのかと思った。
呼吸を整えながら部屋を開ける。「お邪魔しまーす」と間延びした声で、ユウマくんがベッドへダイブした。
「もう、寝転ぶ前にコート早くよこして」
「はいはい」
ベッドの上でユウマくんから脱いだコートを受け取って、ポケットから取り出したスマホを渡す。
それから私はユウマくんを置いてお風呂に入る。ユウマくんはユウマくんで適当に冷蔵庫から飲み物を出したりテレビを観たりしている。同じ空間にいてもベッドに入るまでそれぞれが好き勝手やっている、もうそれがいつもの光景だった。
「先輩、就職先決まったってほんと?」
お風呂からあがり部屋に戻ると、ベッドで寝ながらテレビを観ていたユウマくんが顔を上げた。
どうして私の情報がいろんなところに筒抜けになっているんだろうと考えたけど、そうだ。元彼もユウマくんも、サークルの中では同じグループにいたんだった。
「あ、うん、おかげさまで」
邪魔にならないように同じベッドの壁側に入る。これ以上、嘘をつくのは無理そうで認めると、ユウマくんが少し身体を動かした。
「へえ、おめでとう。どこ?」
「んー、秘密」
「なにそれ」
「うそ。バイト先でね、そのまま社員として入れることになったの」
「リモートなんだっけ。じゃあ、このままここにいる?」
「それはないよ。ここ一応、学生用アパートだし、出て行かなきゃ」
「どこに配属されるかは決まった?」
「さぁ、それはもう少し先かな。入社して研修やって、それからじゃない?」
「ふーん」
ユウマくんの地元に決まったなんて言ったら、どんな反応をされるだろう。
とっさについた嘘はバレず、ユウマくんがもう一度「おめでとう」と言った。優しく微笑んでくれる顔を見て、罪悪感で胸が詰まる。
「じゃ、寝るかー」
少し機嫌のいい声で、ユウマくんが照明のリモコンを操作した。部屋がゆっくりと暗くなる。
布団の中にモゾモゾと潜って、当たり前のように抱き寄せられた。シャワーを浴びなかったユウマくんからは、飲食店の煙と外の冷たい空気の匂いがする。
(——ユウマくんは? また、彼女ができたって本当?)
元彼が私に言いたかったことはこういうことなんだろう。だけど大事な後輩だから、本人のいないところで貶めることは言いたくなくて、言葉を濁したんだろう。
私も私で、ユウマくんを前に聞きたいことを聞こうとすると、喉に異物が引っかかる感じがして言えない。
こんなに心が乱されるならやっぱり終わりにしたい。でもこの関係がなくなったら、私たちはきっとなんの接点もなくなる。
知り合う前の、他人になるのは嫌だ。だけど、一緒にご飯を食べに行ったり世間話をしあったりするようなただの友達にはなれそうになくて、他にいい着地点が見つからない。
理性も情緒もぐちゃぐちゃになる。ユウマくんの彼女になりたかった。「なりたかった」なんて、過去形になっている時点で、腹は決まってるはずなのに。
心の中で、何度も「でも」と「だけど」を繰り返す。
深夜や早朝、関係なくユウマくんのスマホに届くしつこいメッセージは、これまで何度も来ている。ユウマくんはそれに返信をしたりしなかったりしていた。今も、音は消しているけど、伏せたスマホの画面が時折、白く光る。布団を頭まですっぽり被っているユウマくんは朝までそれに気づかない。
誰かが私たちのことを監視して、私だけが咎められている気分だ。夜毎これを見るのも正直、疲れてしまった。
離れるなら、今しかないと思った。
「……ユウマくん、起きてる? あのね」
「……ん」
「こうやって会うの、もう終わりにしよっか」
ユウマくんが顔を出した。私の首の下にあった腕も抜かれて、じっと向かい合う。
「…………なんで?」
間を置いて聞こえてくる、さっきとは真逆の冷ややかな声に息を呑む。「あ……」と呟いて、どうにか彼を傷つけない穏便な言葉を探す。
「あの、就活は終わったんだけど卒論がまだ残ってて、あとバイトの時間も増やしたから、前みたいに毎週会える感じじゃなくなってて。年末年始は実家にも帰るし、ここも、もしかしたら早めに引き払って実家に戻るかもしれなくて」
冷え切った頭を使ってその場で考えた即席の嘘をペラペラと並べる私に、ユウマくんは何も言わなかった。じっと天井を見上げていて、その沈黙が怖い。だけど私もこれ以上、何も言えなかった。口を開けばまた、嘘ばかり出てきそうだ。
しばらくすると暗い部屋の中で起き上がる気配がして、同じように体を起こす。
ベッドから降りたユウマくんは電気を点けないままクローゼットの中からコートを取り出し始めた。
「え、ユウマくん……?」
「帰る。忙しいのにごめん」
無表情の顔で見下ろされて、怯む。あぁ、やっぱり、嘘だということがバレている……。
前回みたいに引き下がることなく、ユウマくんが部屋から出ていった。
追いかけることもできないまま、ベッドの上で呆然とする。
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