5 / 26
ウォルター・モーガン
しおりを挟む
翌日、学園に着くと教室ではクリスティンを中心に女生徒の輪が出来ていた。お祝いの言葉が溢れ、笑ったりはしゃいだりしているその中にアンジェリカは入って行く勇気を持てなかった。そっと横を通り過ぎようとすると、クリスティンに声を掛けられた。
「あらアンジェリカ。相変わらず暗いわねえ。そうそう、私ね、ウィリアム殿下の婚約者に選ばれたのよ。ごめんなさいね、あなたを差し置いて」
ごめんなさいとは口ばかりの勝ち誇った顔である。
「あ、あの、クリスティン。ご婚約、おめでとうございます」
アンジェリカは顔だけはクリスティンに向けていたが目を合わせることは出来なかった。
「ふふ、あなたにもいい縁談があるといいわね」
「ロバとの縁談だったりして」
誰かの声が聞こえた。一斉に皆が笑い出し、アンジェリカは顔を引き攣らせながらその場を離れ、廊下へ飛び出した。ちょうどその時、ウォルターが教室に向かって歩いて来るところだった。
「やあ、おはようアンジェ」
穏やかな笑みを浮かべてアンジェリカに話し掛ける。
「あ……おはよう、ウォルター。今日は、体調は大丈夫なの?」
「ありがとう。今朝はだいぶいいんだよ。それよりどうしたんだい、顔色が悪いよ」
ウォルターはドアから教室の中をチラッと覗くと納得の表情を浮かべた。
「クリスティン達だね。また嫌味を言われたのかい?」
「いいえ、そんなことないわ。平気よ」
「まったく、彼女達は性格が悪いよ。いくら君がロバに似ているからって」
アンジェリカは暗い顔をして俯いた。
「ああ、でもアンジェ、僕はそんな君が好きなんだからね。僕だけは君の味方だから」
ウォルターが優しく微笑む。男子としては少し低い身長と病気がちのため痩せ型の身体、鳶色の巻毛が彼を年齢より幼く見せていた。
「僕もやっと十八になったからね、そろそろ正式に君に婚約を申し込むよ。王太子殿下が君を選ばなくて本当に良かった。やっぱり、僕以外に君と結婚したがる男はいないと思うんだ。ぜひ受けておくれよ」
「……父に聞いてみませんと」
「ああもちろんさ。お父上によろしく」
もう一度微笑んでウォルターは教室に向かった。
誰にも聞こえないようにため息をつきながらアンジェリカも教室へ戻って行った。
「あらアンジェリカ。相変わらず暗いわねえ。そうそう、私ね、ウィリアム殿下の婚約者に選ばれたのよ。ごめんなさいね、あなたを差し置いて」
ごめんなさいとは口ばかりの勝ち誇った顔である。
「あ、あの、クリスティン。ご婚約、おめでとうございます」
アンジェリカは顔だけはクリスティンに向けていたが目を合わせることは出来なかった。
「ふふ、あなたにもいい縁談があるといいわね」
「ロバとの縁談だったりして」
誰かの声が聞こえた。一斉に皆が笑い出し、アンジェリカは顔を引き攣らせながらその場を離れ、廊下へ飛び出した。ちょうどその時、ウォルターが教室に向かって歩いて来るところだった。
「やあ、おはようアンジェ」
穏やかな笑みを浮かべてアンジェリカに話し掛ける。
「あ……おはよう、ウォルター。今日は、体調は大丈夫なの?」
「ありがとう。今朝はだいぶいいんだよ。それよりどうしたんだい、顔色が悪いよ」
ウォルターはドアから教室の中をチラッと覗くと納得の表情を浮かべた。
「クリスティン達だね。また嫌味を言われたのかい?」
「いいえ、そんなことないわ。平気よ」
「まったく、彼女達は性格が悪いよ。いくら君がロバに似ているからって」
アンジェリカは暗い顔をして俯いた。
「ああ、でもアンジェ、僕はそんな君が好きなんだからね。僕だけは君の味方だから」
ウォルターが優しく微笑む。男子としては少し低い身長と病気がちのため痩せ型の身体、鳶色の巻毛が彼を年齢より幼く見せていた。
「僕もやっと十八になったからね、そろそろ正式に君に婚約を申し込むよ。王太子殿下が君を選ばなくて本当に良かった。やっぱり、僕以外に君と結婚したがる男はいないと思うんだ。ぜひ受けておくれよ」
「……父に聞いてみませんと」
「ああもちろんさ。お父上によろしく」
もう一度微笑んでウォルターは教室に向かった。
誰にも聞こえないようにため息をつきながらアンジェリカも教室へ戻って行った。
27
あなたにおすすめの小説
白い仮面の結婚を捨てた私が、裁かれない場所を作るまで
ふわふわ
恋愛
誰もが羨む、名門貴族との理想の結婚。
そう囁かれていたジェシカの結婚は、完璧な仮面で塗り固められた**「白い誓約」**だった。
愛のない夫。
見ないふりをする一族。
そして、妻として“正しく在ること”だけを求められる日々。
裏切りを知ったとき、ジェシカは泣き叫ぶことも、復讐を誓うこともしなかった。
彼女が選んだのは――沈黙と、準備。
名を問われず、理由も裁きもない。
ただ「何者でもなくいられる時間」が流れる、不思議な場所。
そこに人が集まり始めたとき、
秩序は静かに軋み、
制度は“裁けないもの”を前に立ち尽くす。
これは、声高な革命の物語ではない。
ざまぁを叫ぶ復讐譚でもない。
白い仮面を外したひとりの女性が、
名を持たずに立ち続けた結果、世界のほうが変わってしまった――
そんな、静かで確かな再生の物語。
【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする
冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。
彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。
優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。
王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。
忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか?
彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか?
お話は、のんびりゆったりペースで進みます。
木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜
温故知新
恋愛
剣と魔法を王族や貴族が独占しているペトロート王国では、貴族出身の騎士たちが、国に蔓延る魔物ではなく、初級魔法1回分の魔力しか持たない平民に対して、剣を振ったり魔法を放ったりして、快楽を得ていた。
だが、そんな騎士たちから平民を守っていた木こりがいた。
騎士から疎まれ、平民からは尊敬されていた木こりは、平民でありながら貴族と同じ豊富な魔力を持ち、高価なために平民では持つことが出来ないレイピアを携えていた。
これは、不条理に全てを奪われて1人孤独に立ち向かっていた木こりが、親しかった人達と再会したことで全てを取り戻し、婚約者と再び恋に落ちるまでの物語である。
※他サイトでも公開中!
政略結婚した旦那様に「貴女を愛することはない」と言われたけど、猫がいるから全然平気
ハルイロ
恋愛
皇帝陛下の命令で、唐突に決まった私の結婚。しかし、それは、幸せとは程遠いものだった。
夫には顧みられず、使用人からも邪険に扱われた私は、与えられた粗末な家に引きこもって泣き暮らしていた。そんな時、出会ったのは、1匹の猫。その猫との出会いが私の運命を変えた。
猫達とより良い暮らしを送るために、夫なんて邪魔なだけ。それに気付いた私は、さっさと婚家を脱出。それから数年、私は、猫と好きなことをして幸せに過ごしていた。
それなのに、なぜか態度を急変させた夫が、私にグイグイ迫ってきた。
「イヤイヤ、私には猫がいればいいので、旦那様は今まで通り不要なんです!」
勘違いで妻を遠ざけていた夫と猫をこよなく愛する妻のちょっとずれた愛溢れるお話
【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~
ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。
騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。
母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。
そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。
望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。
※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。
※表紙画像はAIで作成したものです
噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
冷徹公爵閣下は、書庫の片隅で私に求婚なさった ~理由不明の政略結婚のはずが、なぜか溺愛されています~
白桃
恋愛
「お前を私の妻にする」――王宮書庫で働く地味な子爵令嬢エレノアは、ある日突然、<氷龍公爵>と恐れられる冷徹なヴァレリウス公爵から理由も告げられず求婚された。政略結婚だと割り切り、孤独と不安を抱えて嫁いだ先は、まるで氷の城のような公爵邸。しかし、彼女が唯一安らぎを見出したのは、埃まみれの広大な書庫だった。ひたすら書物と向き合う彼女の姿が、感情がないはずの公爵の心を少しずつ溶かし始め…?
全7話です。
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる