残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか

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ウォルターからの婚約申し込み

ハ歳の時、アンジェリカは学園初等部に入学したがその頃にはもう自分の顔のことは理解していたので、引っ込み思案で大人しい性格になっていた。

それでも、クラスには子供らしい正義感を持って一人ぼっちのアンジェリカに声を掛けてくれる女の子もいた。初めてお友達が出来たと思った矢先、ウォルターが割って入って来た。

「アンジェは僕と話すんだよ。君はあっちへ行って」

せっかくの友達は去っていってしまった。

「あの子は本当は君をバカにしてるんだよ。君の顔が可愛くないから。クラスメイトを信用しちゃいけない。君の味方は僕だけなんだから、他の人と話すのは駄目だよ」 

「みんな私をバカにしているの……?」

「そうさ。だから隅っこで目立たないようにしておくのが一番さ。大丈夫、僕が一緒にいてあげるからね」

それからアンジェリカの横にはいつもウォルターがいた。中等部、高等部になってもそれは変わらなかった。

彼はいつもアンジェリカに忠告をしていた。

「背が伸びてきたね。目立つといけないからもっと背筋を丸めておこう」

「この間の試験で一番だったね。可愛くないのに勉強が出来たらみんなに疎まれるよ。試験では手を抜いた方がいい。君が優秀なのは僕がわかっているからそれでいいだろう」

「放課後カフェに行きたい? ダメだよ、君みたいな顔の人が来たらお店に迷惑がかかるだろう。君はお洒落な場所には不釣り合いなんだ」

「僕がうるさく言うのは君を好きだからさ。こんな顔の君と結婚しようという人なんて他にいないよ。だから言うことを聞いてね」

アンジェリカはますます卑屈になり、他人の視線に怯え、背中を丸めて俯いたまま学園生活を送るようになった。そして、今もそのままなのである。





モーガン家からはその後婚約の打診があったが、父は返事を保留した。

「王太子殿下の婚約者に選ばれなかった途端に申し込んでくるとはな。だがモーガン男爵ごときに由緒正しきクスバート公爵家の娘を嫁に出すわけにはいかん。成り上がりの一代男爵になど、金はあるかもしれんがわしは許さんぞ」

モーガン男爵とウォルターが婚約の申し込みをして帰った後、父はブツブツと文句を言っていた。こんな娘でもクスバート家の一員だと思ってくれているのかと、アンジェリカは少し嬉しくなった。

しかしこんな醜い顔の自分を望んでくれるのはウォルターしかいない。二か月後にアンジェリカが十八歳の誕生日を迎えるまでに他の人からの申し込みが無ければ、彼と婚約することになるだろう。行き遅れてこの屋敷に残り続けるわけにもいかないのだから。

ウォルターのことを好きだと思う気持ちは無いが、望まれて結婚するのが幸せなのだとアンジェリカは思うようにした。
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