俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第四章 嫉妬の抱擁

第22話 チュートリアル:尾行

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 週末の土曜日。天気は曇りのち晴れ。夏日だが気温は比較的高くなく、時折涼しい風も感じる日。

 まさに絶好のデート日和だろうが、あ゛あ゛ん!?

「フフフ……」

 今日の俺は紳士的だ。そう紳士。ジェントルマンだ。服装は黒一色。何ならサングラスもかけてある。もう一度言う。俺は紳士だ。

「ママー、あれー」

「こら、見ちゃいけません!」

 ……俺は紳士だ。今親子連れがなんか言ったけど俺はジェントルマン。物陰に隠れているが、けっして怪しくない。

 今日の予定は期末試験に向けての勉強の予定だった。そう、だった、だ。

「むぅ……」

 俺の予定を過去に追いやったのは他でもない。学園駅前の待ち合わせスポット(カップル御用達)にて待つあの男、梶 大吾に他ならない。

「あの野郎……陰キャな俺でも分かる洒落たファッションじゃないか……!」

 思わず角のレンガを少し砕かせてしまった。

 今日の予定はそう、大吾の彼女とやらのご尊顔を拝みに来た。

 なぜ俺が待ち合わせ場所と時間を知っているかというと、文字通り締め上げて吐かせた。絶対に来るなという条件付きで。

 ん? 来てる時点で条件を破ってる?

 知らんなあそんな事……!

 今の俺は非モテ陰キャ童貞の看板を背負ってここにいる! ミッションだよミッション!

 ちなみに今のチュートリアルはこれだ。

『チュートリアル:試験に向けて勉強しよう』

 知るかああああ!! 俺には重大なミッションがあるんだよ!?

「大哥」

「なんだワトソン君」

「暑くないノ?」

 中華風の服を着ているリャンリャンが質問してきた。

「見て分からないか、この滝の様に流れる汗を」

「暑そうだネ☆」

 速攻で服が届いたので、一応は外出OKしている。もちろん門限順守に変な事しない等の条件付きだが。一万円のお小遣いもあげているので、ある程度は大丈夫だと思う。

「大哥は何で隠れてるノ? あの男子を見てるみたいだけド☆」

「俺の友達だ。だがあいつは敵だ敵! 尾行ターゲットだ!」

 細目イケメンが中華服を着ているので変に目立っている。

「あの野郎は試験が迫ってる学生なのに、女に現を抜かす不届き者だ」

「その不届き者を尾行する友達はどうなんだイ?」

「あえて言おう、カスだ」

「えぇ……」

 声だけで分かる困惑な表情。俺はジェントルマンだから一切関係ない。

「もしかして嫉妬心でこんな事してるのかイ……?」

「だから何だよ? これが俺だよ!」

「アイヤー大哥、カッコわるすギ……」

 イケメンに言われるとムカつくな。

「ほっとけ! つか散策するんだろ? その服装目立ってしかたないから早よ行け!」

「大哥楽しそうだシ、行ってくるネ☆ 門限までには帰るル☆」

 そう言ってリャンリャンはスタスタと歩いて行った。途中で手を振られたので小さく返した。

 AIとは言え体が手に入ったんだ。いろいろと思うところがあるんだような。それなりに自由にさせておこうと思う。

「む?」

 ターゲットがスマホを確認。駅入り口に向かった。

 彼女がもうすぐ着くからって入り口で待つわけか大吾。そんなに会いたいか大吾!

 俺も姿勢を低くして自販機を盾にする。ここからだとイイ感じに拝める。

 上のホームに電車が止まった。どうやらご到着の様だ。

 人がポツポツと駅から出てくる。俺は忙しなく出てくる人を追うが、女子高生の類は見られない。そう思っていると、大吾が少し歩き始め、俺の目も追った。

「な!?」

 そして驚愕した。

「わぁ、やっと会えたね大吾くん!」

「元気そうで何よりだよ。やっぱり直接会って、こうやってつぼみの手を握って、はじめて安心する。ハハ」

 何かの間違いだと、世界がバグったと、俺は震えた。

 綺麗な黒髪はロング。髪飾りを付け、水色のワンピースを着こなす美貌。整った顔立ちを見れば、お花の香が漂ってくる。

 まさに清楚系の権化。前の学校の全男子が悩むマドンナ、元クラスメイト、花田 蕾さん!?

「えへへ。大吾くん♡」

 花田さんが大吾の彼女!?

「バ、バカな……!? あ゛りえない……!?」

 思わずイシュタール家の別人格みたいな反応をしてしまった。しかも恋人繋ぎを見せびらかして俺の精神をガリガリ削って来る。

 やめとけ花田さん。そいつウンコして絶対に手洗ってないから! 汚いからおやめって! それに何だあのメスの顔は……! 私恋してます感半端ない!

「じゃ行こうか」

「うん!」

 予定通り、学園都市が誇る複合施設でランチ。からのショッピングか。

「うふふ」

「ッハハ」

 嫉ましい……嫉ましいぞ大吾。清楚系大好きな俺にとって花田さんは憧れの的だ。同じって苗字付いてるからワンチャンあるかもって勝手に思ってた。

 ワンチャンどころかチャンスすら無かったけどな。

「ぐぬぬ。大吾め、イチャつきやがって……」

 目の前のカップルがどんどん進んでいく。観葉植物の間、柱の陰、観光用のプラスタンドの隙間、それらを駆使して尾行した。

「ん?」

 フードコートの店を物色している。どうやらここで昼食を済ますらしい。

 選択した店はオムライス専門店だ。老若男女御用達の無難なお店。これがリア充が選択する店だと驚愕する。

 俺だったら隣のステーキハウスを選択してしまうあたり、やはり大吾はモテるんだろうな。

「うわ、マジでいるじゃん」

 唐突に背後から聞き慣れた声がした。

「せ、瀬那!? なぜここに!?」

 学校の制服とは違うプライベートな服装。

 脚の根元まで見えそうなデニムショートパンツ。へそ出しファッションで、瀬那特有の胸部も長くて深い谷間を見せている。こんな格好で街に繰り出すなんて流石黒ギャルといったところか。

もえが尾行してるかもって梶から連絡きて、急いで来てみればホントに居るなんて……」

「大吾から連絡!? ッハ!」

 気付かれたと思って振り向いた拍子に大吾と目が合う。やっぱりかと言いたげなすごいジト目だ。

「バレたか!」

 そそくさと逃げ出そうとすると、耳に痛みを感じた。

「うお!? 痛いって!」

 瀬那に耳を引っ張られる。

「ほら行くよ!」

「ぬおおお!!」

 引っ張られる不自然な態勢で歩く。耳は痛いが内心焦ってる。向かう先は大吾と花田さんのテーブルだ。

「ヤッホー蕾ー。元気してた?」

「わぁあ瀬那久しぶり! そっちも元気そうだね!」

 女子二人が仲良く両手を握って挨拶している。俺はというと、四つある一つの椅子に座り、大吾に向けて呪いを口ずさむ。

「リア充死すべし慈悲は無い」

「絶対に来るって思ってた。萌ちゃんに知られたあの瞬間からこの光景が浮かんだわ」

 クソ、大吾の手の平って訳かよ。

 そんな事を思っていると、花の香りを漂わせる女性が話しかけてきた。

「久しぶりだね、花房くん! 元気してた?」

「は、花田さん! ぅうん元気にしてたしてた!」

 女神降臨である。

 やっぱり清楚な花田さんは最高だぜ。まさに一輪の花って感じ。

「おい」

 青筋を立てた大吾が眼前に迫った。

「なに鼻の下伸ばしてんだコラ。俺の彼女だぞ」

「伸ばしてねーよリア充。お前の彼女だろうが」

 俺の言葉が意外だったのか、大吾が驚きを顔に出した。

「なる様になったんだろ? じゃあ俺は応援する側になるだけだ」

はじめ……」

 友達として、親友として、その相手が誰であろうと応援するのが友達だ。ご尊顔を拝みたかったのは本当だが、別に恋路を邪魔するつもりはなかった。キリのいいところで帰るつもりだったし。

「まぁ美男美女って事で、よろしくやってくれや」

「ありがとう。花房くん」

「いやーそれほどでも~」

 笑顔が眩しい。でも隣の瀬那が何故か不機嫌そうにしている。なぜに?

 凄む大吾。

「おい、なにニヤついてんだよ。俺の彼女だぞ」

「めんどくせーなお前!」

 この流れはアレだな。とりあえず昼飯はみんなで食べて俺と瀬那は解散。カップルのデートを邪魔しちゃ悪いからな。

「ねぇ二人とも。この後予定あるの?」

「予定はまぁ別に……」

 花田さんの質問に俺は真顔。隣の瀬那はチラチラと俺を横目で見て返事した。どうやら瀬那は俺と一緒でこれと言った予定は無いらしい。

「じゃあさ! 四人でダブルデートしようよ! 素敵でしょ!」

「「「ダブルデート!?」」」

 大吾は心底嫌な顔で俺を見る。瀬那は顔を赤らめて俺を見る。俺はとち狂ったかと花田さんを見る。そして花田さんは、花の様な笑顔でみんなを見ていた。
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