俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第十章 対抗戦 予選

第83話 チュートリアル:直進行軍

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 辺りは草と木がお生い茂っている。でも俺らが居る位置は整地されたであろう少し開けた場所。晴天。空を見上げれば半透明なドームの天井の向こうに、どこまでも青い空、雲が泳いでいる。

「うっし、うっし」

「疑似モンスターを倒しまくればいいんだよね」

「そうだ。今のうちに体を伸ばしておこう。はじめのようにな」

 屈伸していると二人とも各々体を伸ばし始めた。

「いっちに、さん、し!」

 腕をクロスして伸ばす瀬那。ジャージ越しのおっぱいが潰れてとんでもない事になっている。

「わーお」

「なんか言った?」

「いやなんでも……」

 ( ゚∀゚)o彡゜おっぱい! ( ゚∀゚)o彡゜おっぱい! と煩悩塗れな俺とは違いウホイイ男な月野は真面目だ。瀬那に一切興味ないのか全然見ない。……こいつホントに男か?

「萌、はじまるぞ」

「え、うん」

 月野に釣られて空を見ると、天井の中央から赤い網状の球体が出現。それは瞬く間に膨張していき、このバトルエリア全体に広がった。

 俺たちの体に沿った半透明のバリアが張られている。

 ブザーが鳴り響く。開始の合図だ。

 同時に。

『チュートリアル:対抗戦で良い成績を残そう! チーム戦編』

 視界端にチュートリアルが出現した。

「さて、このままここに居てもしかたない。移動するか?」

「移動でアタシも賛成だけど、目的地も分からないのはどうかと……」

「極端な話モンスターが目的地だからなぁ」

 そう、地形が変化し事前情報もほとんど無い。まさに実際のダンジョンそのものの構想だ。現実でもゲームでも現在地とマップ確認は必須。ならば現在地を確認するのも良さそうだ。

「ちょっと木に登って辺り確認してくるわ」

「この太い木に登るのか」

「気を付けてね!」

 オーラを纏って大きく跳躍。地面が小さく陥没したけど気にしない。

「よっと」

 木のてっぺんを掴んで斜めに足を沿わせて立つ。見渡す限り森林だけど、正面に丘がある。しかも戦闘による発光が見えるから間違いなくどこかのチームが点を稼ぎにいっている。

「ふーん」

 他の方向にも目を向けるとドンパチ戦闘しているのがわかる。そして後ろを向くと、あった。

「……とりあえずはあそこだな」

 天に向かってそびえ立つレンガ造りの塔。あそこには絶対にヤバいモンスターが居る。ゲーマーな俺としての意見だ。

 このチーム戦。点の競い合いだけど、強いモンスターを倒した方が得点も多い。当たり前だよなぁ?(大先輩風)

「っと」

 ッスタっと無事着地。

「さっそく周りでドンパチやってるけど、目的地は決まった」

「ほう」

「どこどこ?」

「ドルアーガの塔だ!」

「ど、どる?」

「俺たちが生まれる前に世に出たナむコが誇るアクションRPGだ!」

 何言ってんだコイツと同じ視線を俺に送る二人。俺はそんな二人にドルアーガの塔の魅力をたっぷり言いたいけど、残念ながら未プレイだ。あ、アニメは見た。

「とりあえずドルアーガの塔へ行進!」

「「お、おー……?」」

 スリーマンセル、三位一体、ガイア、マッシュ、オルテガ、黒い三連星と津々浦々だが、言ってしまえば俺らは精鋭の一戸団体。

 直侵攻軍であります!!

 ちなみに魁!!男塾は熱い漫画だけど一部を除いてキャラが全然死なない事で有名だ。背景に死者を偲ぶ模写あるのに全然感動しないからなぁ。(個人感想)

「たいちょー! 目の前に大きな木があります! 迂回しますか!」

 っざっざっざ、とひたすら直進した後に阻む大木。これでは通れない……。つか瀬那はノッてくれるのか……。

「我々は直進行軍! 直進あるのみ! ゆえに!!」

 オーラ剣を生成し天高く出力を伸ばした。そして。

「障害はすべて! 粉砕するべし!!」

 ドワオッ!!

 大木を縦にオーラ一文字斬いちもんじぎりで真っ二つ。バリバリと木が倒れる特有の音が響き渡る。

「直進再開ィ!!」

 っざっざっざ、とひたすら進んでいく。

 俺たちは行軍。気分は昭和の学ランを着ている。

「隊長! 前方にモンスターの群れを確認! 迂回しますか!」

 190センチと一番身長の高い月野が同じくノリで俺に振って来た。前方には俺たちに張ってあるバリアと同じ半透明の体を持つ疑似モンスター。クリボーらしき群れが闊歩《かっぽ》していた。

「我々は直進行軍! 直進あるのみ! ゆえに!!」

「「クリ!?」」

「障害はすべて、粉砕するべし!!」

 オーラ剣で斬る。

「フン!!」

 ガントレットが砕く。

「如意爆炎符!!」

 火球が焼く。

 疑似クリボーの群れを瞬く間に排除。パリンと割れるとリストバンドに点数獲得の音が鳴る。

「物足りないな」

「これくらいはねー」

 二人の会話を背にリストバンドをタッチ。映し出される俺らの得点。

「クリボーは一点換算なのか」

 まあ妥当な点数だろう。クリボーの攻撃と言ってもゆっくり突進してくるだけだし。

「他にどんなモンスターが居るのかな?」

「それは直に確かめていこう」

「そだなーん゛ん゛。直進再開ィ!!」

 直進行軍と言ってもドット絵に変えればただのドラクエ。そんなドラクエな俺らは時折エンカウントする疑似モンスターをテンポよく倒していき、順調に点数を稼いでいった。
 時々戦闘音が遠くの方から聞こえてきたりもしたけど、特に問題なしと思っていた。

 でもそれは――

「マズいかもしれない」

 月野がリストバンドを見ながら言った言葉で影を差す。

「どうしたんだ」

「このチーム戦は他のチームへの妨害は容認されてる。俺たちが身に纏うバリアは一定値で壊れる仕様で、モンスターの攻撃や妨害による破壊で脱落することも……」

「トレーニング施設のおなじやつだしね」

 そう。月野の言う通り妨害ありきでのチーム戦だ。俺はそれを念頭に置いて行軍しながら他のチームと遭遇しないか警戒していた。

 今の所遭遇はしていないけど警戒は……。

「!?」

 これはヤバいかもしれない!

 そう思ってすぐさまリストバンドを操作。画面に映るのは現在の点数を秘匿されたチーム。

 明るく提示されたチームが残存で暗く提示されたチームが脱落しているという事だ。

 そしてBクラスの残存チームが――

「B-3とB-5……」

「これってヤバいよね……」

「ああ。他のクラスも脱落チームが有るのはあるが、まだ一時間も経っていないのに俺たちBクラスだけ脱落チームが多い。よくない事が起きている可能性が高い……」

 戦闘中に得点が入った音とは違う音が聞こえたのはただの聞き間違いだと思っていた。でもこれが戦闘中を狙っただったとしたら。

「――」

 至高の肉体で培った視力で遠くを見渡す。

「ッ!!」

 双眼鏡やスキルを駆使し俺たちを監視する男子を発見。たまたま目が合ったと思い込んで微動だにしない。

 すぐに投擲に適したオーラ剣を生成。すぐさまに。

「オラア!!」

 筋肉を振る動員して勢いよく剣を投げる。

 空を斬りながら物凄い速度でターゲットめがけて進んでいくオーラ剣。胴体に突き刺さってバリアが破壊。そのまま消える様に退場した。

「フー」

 息をはいた時だった。

「うわあああああああああ!!」

「「!?」」

 遠くの方で聞き覚えのある声。間違いなくモブ男くんの声だった。

「超ダッシュで直進行軍!!」

 列なんて関係なくもうダッシュした。
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