俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第十六章 強く激しく

第177話 チュートリアル:共通点

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 七月に入った最初の土曜日の夜。俺は理性を掲げるルーラーズの大将であるホワイト・ディビジョンの主――白鎧ことベアトリーチェに呼びだしをくらった。

 三年の一学期ももうすぐ終わり夏休み直前に迫る俺ら攻略者の卵。他の生徒は夏休みを使って初心者ダンジョンに潜ったり、現役サークルについて行き難易度の高いダンジョンへと足を運ぶ。要は経験値を積みに行きながら自分を売り込んでいくスタイルだ。

 俺や瀬那、大吾と進太郎にダーク=ノワールもそれに習い、夏休みで遊ぶのはほどほどにして他の生徒と同じ経験値、自分の売り込みをしに行く事に決まった。

 どこのサークルへと足を運び同行のお願いをするのかはまぁ簡単な選別。オファーが来ているサークルを転々とし、表面だけでなく込み入った内情を視察しようと思う。まぁ上から目線な表現だけど、俺たちはれっきとした選べる側の卵だ。明らかなゴマすりなんて受けようもんならマイナス百点だな。うん。

 そんな感じの話をグループチャットでメッセージを送り合ってた時に、急に呼びだしを貰った訳だ。

 ティアーウロングに顕現していざホワイト・ディビジョンへ。

 扇状に広がる会議室の俺の椅子隣りにゲートを開いて転移。

 まぁ案の定席には誰もおらず、周りを見渡すと白色の鎧を着こんだ人がいた。

「お待ちしておりました。ティアーウロング様」

「あ、ども」

 BARのテンダーである宰相以外の虚無家臣ヴァニティヴァッサル。会ったのは初めてだけど、声から察するに女性っぽい。

「こちらへ」

 そう言って会議室の正面扉ではなく別の扉へと案内された。何とも広い階段。横一列何人並べるんだと思いながら、窓から一望できる城下町の夜の姿を瞳に映していた。時のオカ○ナのガノン城を彷彿とさせる長い長い階段。真っ白な城だけどオルガンのメロディが聞こえてきそうな雰囲気だ。

「こちらです。中へ入り、どうぞ。紅茶を用意していますので、そちらを召し上がりながらソファでおくつろぎください」

「あ、はい」

 白を基本色とした金色の装飾が施された少し大き目な扉。家臣の彼女はどうぞと軽くお辞儀しながら手を扉に向けている。そっとドアの取っ手を掴み、ゆっくりと開け、中へと入った。

 ――ガチャリ

「……」

 閉まるドア。

 デンデデン♪

『チュートリアル:◆◆◆の部屋に入ろう』

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:技+』

「……白い」

 それがこの部屋の印象。まぁ白いのはこの城にして当然だけど、目に悪い白色じゃなくて陰影がハッキリとした白色の部屋だ。天井は高く半透明のシャンデリアがいくつも吊るされていて何処か幻想的。
 家臣の彼女が言ってた通りテーブルを囲む様にソファがある。もちろんティーポットセットも常備。

 白色の棚には金持ちが持ってそうな酒瓶が並べてあり、中身の減っている瓶もある。白鎧はお酒を嗜む様だ。
 観葉植物として百合の花に似た白いお花が。

 そして一際目を引くのは何とも柔らかそうな白色のベッドが置いてある。しかもデカい。一人で眠るには広すぎるベッドだ。

「寝室かよ……」

 そう。俺が案内されたのは間違いなく寝室。白鎧のプライベートルームだった。

「マジかぁ」

 とりあえず言われた通りにふかふかソファに座ってはみたものの、全然落ち着かない。つかそもそも白鎧はどこだよ。部屋にいないじゃん。

「……ん?」

 妙に落ち着かない俺は内心そう愚痴りながら縮こまって座っていると、どこからか水の流れる音が聞こえてきた。つかシャワーの音だ。

(も、もしかして白鎧、シャワーしてる……?)

 風呂もあんのかよこの部屋。この城には家臣たちや住み込みのお手伝いさんたち用の大浴場があったりする。まぁ俺は入った事ないけど、城主ともなると専用風呂なんて用意するんだな。

「……はぁ」

 来たタイミング悪かったなぁ。シャワー浴びてるなら言ってくれれば外で待ったのに。

 そう思いながらティーポットを傾け紅茶を入れる俺。フードを脱いで紅茶を飲むと、飲んだことある味だった。

「これ……ネクロスさんの……」

 舌に蕩ける紅茶。これは思い出の紅茶だ。知ってか知らずか分からないけど、俺の好きな紅茶を用意したって事なのかも。

 ――キュッ

「!?」

 急いでフードを深く被る。部屋にある扉の向こうから何かが閉まる音が聞こえたからだ。

(来る! きっと来る! きっと来る!)

 平成ホラー映画の主題歌みたいに復唱したけど、まさに来るだ。なんだかドキドキが止まらない。俺は童貞を卒業したけど、精神的童貞は捨てきれていなくて未だに映画でえっちなシーンがあると一人でも気まずくなる。今、そういった心持だ。

 そして一分二分経過。

「ふぅ……。待たせたな、ティアーウロング。……なにをしている」

「え、別に。ただハズカシイからフードを被ってるだけ……」

 俺は紳士。ジェントルマン。女性の柔肌を気安に見るなんてできないぜ。

「頭蓋の形が分るほど引っ張るほどか? 我は貴殿に見られても問題ないが」

「俺が問題あるからこうやってんでしょうが!?」

 おかしな奴だ。そう言って柔らかなカーペットを裸足で歩いて来る音を耳が拾う。

 そして対面のソファに座る音も聞こえてきた。

「いつまでそうしてるつもりだ?」

「いや、アニメとかでこう言ったシチュエーションはだいたい裸で登場するってお決まりがあるんですわ。だからそれを危惧してる」

 中性的で少し低い白鎧の声。凛とした声だ。だけど、御託を並べてフードを深く被るのは他の理由もある。

「アニメ。地球の文化か……。ふふ、裸ではないから大丈夫だ。さぁ、フードを脱いでも構わないぞ」

「……わかった」

 スッとフードを後ろに下げて脱ぐと、青い瞳をした大人びた瀬那――ベアトリーチェの顔がそこにはあった。

 清潔なバスローブを羽織り頭にはタオルが巻かれている。

 吸い込まれそうな青い瞳。すこし目が合っただけで思わず目を逸らしてしまう。

「ふふ、やっぱり慣れんか」

「そりゃそうだろ……。兜を脱いだあんたの顔を見る度に心臓がキュウキュウ締まるんだよ」

「そうか」

 逸らした目の位置が悪い。バスローブ姿で脚を組み直したベアトリーチェの太ももをつい目で追ってしまった。心の中で南無阿弥陀仏と唱えて雑念を捨てる。

「……ふぅ」

 ため息混じりに一呼吸。意を決してベアトリーチェに顔を向けた。

「まぁシャワータイムってのはタイミングが悪かったけど、夜遅くに呼びだすなんてどんな用事だよ」

 ジト目で質問した。ジト目じゃないとまた目を逸らしてしまいそうだから。

「本題へ入る前に聞いておこう。ここの空気には慣れたか」

「ここの空気ぃ?」

 本題へ入れよと思ったけど、ここの空気――つまりはルーラーズに入ってどうだったと聞いている。

「慣れる訳ないじゃん。ネクロスさんは重い話してくるわ、フリードさんは喧嘩しようぜ! とか言って迫ってくるし、エルドラドは相変わらずだし……」

 その他にガスタくんもヴェーラさんも個性的だし、存在が空気のバルムンクさんも何考えてるか分からない。個性派ルーラーどころか家臣も個性派で揃ってる。ベアトリーチェ然り。慣れろとか無理だろ。

「そうか。慣れんか」

「うん。慣れないな。まぁ本能から守る理性の活動ってのは忙しのはわかる。学生生活してる俺を尊重してくれてるのもありがたい。でも慣れないものは慣れない」

 俺はそうキッパリと言った。

「ふふふ」

 俺の正直な答えにベアトリーチェは微笑む。その顔は果てしなく瀬那に似ているどころか本人。俺の心臓が締まる。

「実のところ、我も慣れんのだ」

「なんだよそれ」

「わかるだろ。こうもマイペースが過ぎる連中が集まっているんだ。我と言う旗の下に集まったが……いや、違うな」

「?」

「まぁ貴殿の苦労は分かってるつもりだ」

 そう言っていつの間にか入れていた紅茶を飲むベアトリーチェ。

 静かにソーサーにカップを置く。

 理性の頭領である白鎧にも人並みの苦労は感じるらしい。ここに関しては共感できる。

「ん゛ん。では本題に入ろう」

「いきなりだな」

「ああ。不服か?」

「いやぁ? 速く帰ってゲームしたいし」

 優しみのある顔から一転。真剣な表情になったベアトリーチェ。

 何を言うのかと身構えていると、予想だにしない事を聞いて来た。

「我とは別の魂を持つ、並行世界の同一人物。つまりは貴殿の番である者の話だ」

「……瀬那……か……?」

 俺は唾を飲み込んだ。

「何の因果か、我を含む並行世界の同一人物は必ず大きな壁に遭遇する。我は其れを試練と呼んでいる」

「試練……?」

「そうだ。その様子だとまだ事が起きていないらしい」

 まるで俺を見透かすような瞳。壁、試練。仙気の修行といったものなら壁や試練に当て余るかも知れないけど……。

「どういった形の試練か同一人物の数だけ各々違うが、一つだけ共通点がある」

「共通点?」

「ああ。その試練を乗り越えられなかった我々は、総じて――」

 ――死を遂げている。

「――ッ」

 瀬那の笑顔が、俺の脳裏に過る。
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