俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第二十章 漏れ出す者

第257話 チュートリアル:雄バトル

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「――なにやってんだよ……?」

 揺れる瞳。

 何故ダイゴがボクのパジャマを勢いよく嗅いでいるのか。

「スー、スー」

「な、え、な……に……」

 ボクが居るのに、そのパジャマを着ていた本人が目の前にいるというのに、慌てる様子もなく、嗅ぐことを止める事をしないダイゴ。

 ダイゴがなにをしているのか分かるけど、この状況に頭がついて行かない。

「スー」

 嗅ぐことを止めないダイゴ。

 ボクは怒っていい。怒っていいはずだ。

 だけども長いまつ毛を羽ばたかせ、細目でボクを睨むダイゴに目が離せない。

 ――ドキドキが止まらない。

「お、おいおいダイゴ、あ、汗臭いだろぉ?」

 いつの間にか部屋に入りドアを閉じたボク。

 𠮟咤するべき状況なのに、感想を聞いてしまっている辺り、ボクの心は冷静ではないのかもしれない……。

 しかもそれを肯定するかのように、ボクのドキドキは止まらずどこかじれったい。

「返せよ」

 ダイゴに近づきパジャマを奪い返した。引っ張って抵抗してくるもんかと思っていたのに、意外とあっさりパジャマを離した。

 恥ずかしいから没収した。当然だ。

(でも……少しも抵抗ないなんて……)

 疑問じゃない。……それは嘘だ。疑問じゃないのは嘘。疑問も有りつつ、非力なボクの力でも解けてしまう手の力に、ダイゴのその気を期待していたのに、疑問と失望を感じてしまった……。

「まったく。久しぶりにここに顔だして来たと思ったら――」

 ボクは最後まで言えなかった。

 ダイゴがボクをベッドに押し倒したからだ。

「――くあ!?」

 肺から息が漏れる。

 キッとダイゴを睨みつけた。でも、ダイゴは悔しそうな表情。

 そして、怒っていた。

「ハジメ!! いい機会だから言っておく!! 俺だけを見ろ!!」

 必死な表情なダイゴ。

 真剣な眼差しを見ていると、そして「俺だけを見ろ」なんて言われてからか、胸の鼓動が激しい。

「な、なに言ってんだよ」

 目を逸らしてしまう。

 でもボクの両肩に体重を乗せるダイゴの感触に、背筋がゾクゾクしてしまう。

「隣の席の女! セナだったか!! あんな乳だけの女にデレデレしやがって!!」

「で、デレデレなんかしてないって!!」

「いいやしてたね!! 視線だって泳いでたし、チラチラ胸も見てた!!」

「い、言いがかりだ! そりゃセナさんはおっぱい大きいから目に付くけど、チラチラなんて見てない!!」

 ッキ、と下唇を噛むダイゴ。

「つか何でイラついてんだよ!? 手どけろよ!」

 ボクの言葉を否定するようにより強く肩を掴まれるボク。馬乗りになられた状態が、更にずいっとダイゴの顔が近くなる。

 だからだろうか。自然とダイゴの瞳の奥にボクが居るのを見えたのは……。

 一秒二秒三秒。ボクらは無言だった。

 そしてゆっくりとダイゴが口を開いた。

「……俺は、俺は嫉妬してんだよ」

「――嫉妬」

 紡がれる言葉は驚くべきもの。

「お前の笑顔が女に向けられてる。お前の匂いが他の男に嗅がれている。……それが堪らなく、嫌で、嫉ましくて、しんどくて、……めっちゃ羨ましかった」

 驚くボクを他所に、ダイゴが瞼に雫が溜まる。

「なぁ……。なんで俺に素っ気なくするんだよ……。なんで俺を見てくれないんだよ……。なんで俺を――」

 ――好きでいてくれないんだ。

 ボクの部屋の静けさの中でも、搔き消えてしまいそうなダイゴの声。

 瞼に溜まった雫が大きくなり、一滴が落ちる。

 その雫を、ボクは口を開けて飲み込んだ。

 ボクの突飛な行動に、ダイゴの眼が大きく開かれた。

 そしてボクは、彼の頬を優しく撫でる。

「……ボクらってさ、本当に不器用なんだな」

「ハジ……メ……?」

「お互い素直になれなかったし、お互いに変に気を使ってた」

 親指の先が涙で濡れる。

「だからさ、取り戻さない?」

「なにを……」

「二人の時間……」

「――」

 顔を赤くしていたダイゴがさらに顔を赤くし、頭に湯気が立ち昇る。

 それはボクも同じだったり……。

「次は、ボクが言う番だ」

「なに、を……」

 激しく動くボクの鼓動は彼に聞かれていないのだろうか。聞かれていた方が、今は、いいな……。

 聞いて欲しい。

「ダイゴ」

 ――好きです――

 夕日が暮れていく。

 遮ったカーテンの隙間から、眩しい日がボクらを射した。

 そして、そっと、顔を近づかせて――


「「ヴォエエエエエエエエエエエ!?!?!?!?」」

 俺と大吾は同時に口から虹色のゲボを吐く。

 グッバイ、床。

「無理無理無理無理無理無理無理!!」

 大吾の言葉による無理無理ラッシュがリビングに響く。

「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!」

 俺の嫌嫌ラッシュが炸裂。

「いや朗読ならイケルと思ったけどやっぱ無理だわ! 萌ちゃんキモイ!!」

「キモイ言うな!! お前が始めた物語だろうが!?」

「うわぁぁ筋肉野郎から告られたわぁ……。やめてよね!」

「やめてよね! じゃねぇよ!? キラかお前は!? サイに謝れ!!」

 まさかBL本の朗読会になるとは思わなかった。

 悪ふざけの範疇に輪をかけて、なんと登場人物がハジメとダイゴとシンタロウとツカサという俺たちだだ被りなキャラ。

 これは気持ちを込めて朗読するしかないと思い張り切るも、今に至る。

 否が応でも目に付く本。何となく左のページを見て見ると、思いっ切りケツにローション塗りたくってる。ハジメが……。

「俺が掘られるのかよ!?」

「そうだよお前が掘られるんだよ! ほら見ろ」

「うッ!?」

 これ見よがしにR18シーンを魅せつけてくる大吾。俺は顔を青ざめる。

(に、二本の竿がぶつかり合ってる……!! 最強雄筋肉チン〇バトルかよ……!?)

 や、やべぇ(戦慄)

 根元に紐締め付けて最強に巨大化した二振りのチ〇〇がエフェクトバリバリのしばき合いをしている(戦慄)

 終いには最強に巨大化した二振りのチ〇〇を用意したゴムを無理やり拡張して一本のデカ雄チ〇〇にしてる(戦慄)

 何喰ったらこんなヤバいの思いつくんだ……(戦慄)

 純愛アオハル物かと思ったらまさかの超絶過激シーン。入門書にしてはあまりにも過激すぎる……。花田さんが持ってる本に、これ以上の最強雄筋肉チン〇バトルがあるのか……。

「って言うかさ、何で二人はコレ知ってるん?」

 俺の疑問を訪ねてくれた大吾。

「まこと姉も同じ趣味だからな。俺は好かんが」

「♰つっちゃんも一時期読んでたからな。今は知らん♰」

「ふーん。女子って案外こういうの好きなんだな」

 フムフムと俺も首を縦に振って理解している。もしかしたらだけど、瀬那もBL本とか読んでるのかも知れない。こんど聞いてみるか。

 というか、進太郎の彼女さんである真《まこと》さんにも同じ趣味がって情報、俺たちに流していいのか……。まぁ話の流れでしゃーないけど……。

 そっとしておこう。

「で? 大吾は何で悩んでたんだ? 楽しんで読んでたんだろ?」

 あまりの衝撃に忘れてたけど、大吾は悩んでいた。

 てっきり彼女に勧められた事に悩んでいるのかと思ったけど、普通にBL本楽しんでるしな。

 そんな考えは、杞憂だった。

「いやまぁ。BL本はいいけど、やっぱり好んで読むタイプじゃないなってハッキリ思ったわ。無理やり読んでた感あったしな」

 頬をポリポリと掻く大吾。

「結論! 理解はするけどやっぱり素直に楽しめません! 俺には合わん!」

「なんか勝手に悩んで勝手に解決しやがった……」

『チュートリアル:BL本を楽しもう!』

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:力+』

 チャンチャン♪ と終わる所だけど、何やら進太郎とダーク=ノワールがBL本を覗いている。

「何々? ツカサのグスタフマックス凄いよー。俺のブラックホールがぐちゃぐちゃにー」

「♰こ、これがカタパルトタートルの異名を持つブラックホール♰」

 俺ってこんな感じだったんだ……。

 ヤバ(戦慄)
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