悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ

文字の大きさ
85 / 147
もう15歳

12

しおりを挟む
 目をそらしてから少しすると再びこちらへ視線を向けられるので、その度に微笑んでみます。しかしやはり目をそらす、アレクシス様。
 先程、殿下に上手くなったというお言葉をいただきましたが、まだ精進が足りないみたいです。笑顔が嘘臭く見えてしまうのを直しておかなくては。
 それにしても、彼の私への恐怖は根深いようですね。あぁ、そうだ。ついでにもうひとつ、アレクシス様にお願いしておきましょう。

「アレクシス様、もうひとつよろしいですか?」
「は・・・はい。なんでしょうか? カー・・・カム」

 そう訊ねてきたアレクシス様は、ただでさえ鋭く見える目をさらに少しだけ細めながら、頑張って私から目をそらさないようにされています。そう無理しなくとも、目をそらされたくらいで不機嫌にはなりませんよ。

「私に丁寧にお話しいただかなくても大丈夫です。殿下にするようにお話しください」
「は、はい。わかりま・・・わかった」
「ありがとうございます」

 嘘臭くとも無表情よりましだろうと、にっこり笑ってみます。
 するとアレクシス様が目を泳がせて、すーはー深呼吸を始めました。彼はそろそろ限界のようです。話題を変えるとしましょう。

「殿下、午後はどうされるのですか?」
「ん? あぁ。履修希望票を提出してから、生徒会を覗いてみようと思っているよ」

 殿下が憐れむような顔でアレクシス様を見ながら答えました。怖がっていることを知っているのなら、連れてこなければいいのに。

 そういえばゲームでは、殿下は3年生時に生徒会長でしたね。
 生徒会長は選挙制ですが、その他のメンバーの采配は生徒会長に一任されています。現在の生徒会長は第二王子フランツ・モノクロード殿下でございます。
 ヘンリー殿下は第二王子の母君である側妃様に命を狙われていたはずですが・・・フランツ殿下とはどうなのでしょうか。

「生徒会へ入るおつもりですか?」
「クラブへ所属するより、有意義だからね。カムも入るかい?」

 何れかのクラブへ所属するように義務づけられていますが、生徒会へ入れば、それが免除されます。
 後々、ゲーム主人公も入ってきますし、いくつかのゲームイベントの舞台にもなっていますから、私は入る気がありませんけど。

「いいえ。私にはとても務まらないでしょうから、遠慮させていただきます」
「だろうね」

 殿下が苦笑しました。本気で誘ったわけではないようです。
 それにしても殿下の履修希望・・・気になります。かぶりたくないという理由で。

「殿下は何を履修されるのですか?」
「気になるの?」

 きょとんと首を傾げる、殿下。
 相変わらず何も企んでいない時は、ぐっと来るほど可愛いですね。こちらを窺いみる見る宝石のような碧眼と、さらさらと額を滑っていく金茶の髪に、一瞬目を奪われかけます。
 はっ! 危ない危ない。悪魔に見とれてしまえば、魂を奪われかねません。

「はい。気になります」

 別に隠すことでもないので、やや視線を殿下の襟元へ下ろしつつ、素直に吐露してみました。隠さなかったことが功を奏したのか、殿下が答えてくれます。

「私は魔法学と、武術、馬術にしたよ」

 あ。よかった。かぶったのは武術だけでした。しかし王族なのですから、もっとがっつり履修するものと思っていたのですが。

「なに?」

 疑問が顔に出てしまったようです。殿下が再び顔を傾げました。
 やっぱり可愛いな。と、思いながら疑問をそのまま口にします。

「いえ。思ったより少なかったので」
「あぁ・・・私の王位継承権は3位だからね。そう目立ちたくはないのさ。あれこれ履修することで、王位を欲していると勘違いされても困るし。すでに学び終えているというのもあるけれど」

 さすが。帝王学ってやつですか。
 この学園に入学したのも、義務だからとか、人脈作りとかのためで、学ぶことが目的ではないのでしょう。王族って大変だな。
 そうだ。念のため、アレクシス様のも聞いておこうかな。

「アレクシス様は、どうされるのですか?」
「私は・・・お、俺は家政学以外のすべて履修するつもりだ。父上もそうしたと聞いたからな」

 おうふ。未来の宰相様はすごいですね。考えただけでも頭が痛くなってきましたよ。威厳ある口調と発言内容に反して、安定しない視線が残念ですけど。
 軽く眉間を揉んでいると、殿下がこちらを向きました。

「そういうカムは何を履修するのかな?」
「武術、植物学、家政学にしようかと」

 かぶった科目はひとつだけでしたから、隠すこともないかと正直に答えました。

「ん? 魔法学は?」

 案の定、そこを疑問に思われましたか。ここへは皆、それを目的に学びに来ますからね。精霊と契約済みの私たちは、学ばずとも魔法が使えますけど。

「魔法学は3年時のみ履修することにいたしました。私も目立ちたくはありませんから」

 にっこり笑って見せると、殿下が変な顔をしました。

「カムはもう、十分目立っているよ」
「あぁ、黒髪のせいですよね」

 入学式もそのせいで阿鼻叫喚でした。
 殿下が静かに紅茶を飲んでいた、他の面々を見渡します。しかし皆、あからさまに目をそらしています。クラウドに至っては、まだあまり減っていない紅茶を新しいものと取り換えようというのか、壁際のローチェストの方へと離れていきました。
 ひとつ小さなため息を漏らして、殿下が口を開きます。

「それもあるけれど・・・それ。その制服。やっぱり女色にょしょくなんだって、もう噂になっているよ」
「・・・なるほど」

 男装をしたことで、そちらの噂が一気に加速したようですね。縁談避けとして、いい仕事をしてくれることを期待します。

「カムはやっぱり・・・その・・・そうなの?」

 カップをテーブルへ戻して、レオンが俯き気味に私を見ています。そう、とは・・・話の流れ的に女色かという事でしょうか。

「だって、僕に全く反応しないよね?」 

 時々漏れ出すレオンの色気は、どうやら意図的に出しているようでございます。しかし精神年齢43歳の私に、14歳の色気が通用するはずもなく。
 いや、だって無理でしょう?! 背徳感が半端ないのですって!!

「私、可愛いらしい方が好みなので」

 ふふふ、と手で口元を覆いながら笑ってみました。何度、訊ねられようと答えは同じです。

 攻略対象たちの反応が知りたくて、順に視線を巡らせると、弟のルーカスはなんとなく嬉しそうに紅茶を飲んでいて、レオンは不満そうに口をとがらせていました。
 アレクシス様は胸を押さえて俯いています。どうやら私への恐怖が増してしまったようですよ。申し訳ない。
 そしてじっとこちらを見ていた、なんとなく頬が赤いような殿下と目が合ったので、ぱちんとウインクしてみました。さらに頬を染めて俯く、殿下。またユリの濡れ場でも想像していたのでしょうか。私のお相手は誰を想定したのかな。
 殿下から目をそらさずにいると、居たたまれなくなったらしい殿下が話題を変えました。

「歴史の先生は服装に厳しいと聞いたよ。明日はスカートにした方がいいのではないかな」
「校則には触れていませんよ」
「そうだろうけど・・・目立ちたくないのだろう?」

 殿下はアレを見ていないから言えるのでしょうけど。
 まあ、いいや。その1日だけ着ていけば、誰も文句を言わなくなると思いますし。

「わかりました。そういたします」

 けけけ。泣いて詫びるがいい! ちょっと黒い気持ちでにいっと笑むと、皆が何とも言えない表情でため息をつきました。


しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜

みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。 悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。 私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私はただのモブ。 この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。 ……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……? ※2025年5月に副題を追加しました。

処理中です...