異世界成り上がり物語～転生したけど男?!どう言う事!?～

婚約編

67

　ネイサンがアレクの姿を確認できた場所は、王城の庭に面する廊下。

「私と対面する事となった令嬢たちの為に花を用意して貰えるか？」

　そう声を掛けながら「わざと」広場へと足を向けて居た。

「庭に咲く花々を手折る事は出来ませんが、
　温室の花でしたらお持ち致しましょう」

　花を管理する者が「教えられて居ない状態」で返事をし、温室方面へと消えて行き、廊下にはバルトとアレクだけが残った状態が「作られ」る。

「アレクシス殿下。
　舞踏会まで時間が長すぎませんか？」

「隣国から訪問して下さった姫君に渡すならば有用だろう？」

「そうでございますね」

　何時、ネイサンが動くか判らない状態での会話ほど、危険な時間は無い。

　だが奴の癖は「声を出して襲い掛かる」と言う何とも単純な行動。

　だからこそ気付く事が出来るとも言えるのだが…。

（それにしてもネイサンが襲い掛かって来そうなのは、
　この庭なのだが…）

（確かにアレクを襲撃するにはうってつけの
　隠れる場所すらあるのに襲撃して来ないな）

　気配を殺してるのか、別の場所で襲撃を計画して居るのか、全く気配を感じない…と思った矢先だった。

「アレク、死ねぇーっ!!」

　と予測通り「声を出して襲撃」して来たものだからバルトとアレクが同時に

「「あ、やっぱり」」

　と声を揃えネイサンの剣はバルトの剣によって止められた。

「いい加減に気づかないと命がねぇぞ」

「五月蠅うるさい！
　バルト、邪魔するならお前も殺す!!」

「（正気じゃねぇ）・・・殺やれるもんなら殺やってみな」

　ネインはアレクだけでなく、バルトにも勝てなかった。

　アレクとバルトは互角だった為、互いに戦うと言う事に挑まなかった。

　互角の腕ならバルトに後方を守って貰えば良いと考え、実行したに過ぎない。

「くっ…」

　力技で切り込もうとするネイサンと、押されてもビクともしないバルト。

　どちらに軍配が上がるかは誰の目にも判るくらいだ。

「どうした？俺も殺すんだろ？
　そのままじゃ殺せねぇぞ」

「五月蠅いウルサイうるさい!!
　お前に俺の何が判るっ！」

「「何も？」」

「同時に言うなっ！」

　ネイサンの攻撃パターンは単純だった為、回避するのも容易い状態。

　前から切り込む事「しか」して来ないのだから、自分が怪我をしないようするには、左右にズレたり剣を流すだけで良いのだ。

　鍛錬して体力が十分に有るバルトと鍛錬すると言う事すら怠って居るネイサンとでは、どちらが勝つかは明らか。

　キーン･･･とネイサンの剣が跳ね飛ばされ、彼を捕縛すべく動いて居た騎士たちに囲まれネイサンにとっては万事休す状態となった。

「ネイサン、お前は何をしでかして居るのか判って居るのか？」

　その質問は最後通告。

　答えによっては、その日の内に斬首される事が決まってしまう。

　違う言葉を発したとしても斬首は変わらないのだが、猶予期間が設けられて居る。

　恩赦を与えてしまうのは危険すぎる、与えるとしても重労働を化すしか無い。

「何って…アレクを殺そうと…」

「お前の目の前に居るのはウォーリス村に居たアレクでは無い。
　彼はアレクシス・デ・ギルヴィア殿下だ。
　お前は王族を呼び捨てにしたんだぞ？
　それが何を意味して居るか…気づいてなさそうだな」

　バルトに指摘されても態度は変わらず、アレクが憎い・・・と言う顔のまま。

　ネイサンを救う手段が立たれた瞬間となった