魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ

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幕間:銀髪の魔導師の独り言

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幕間:銀髪の魔導師の独り言
​ 陽炎のように庭園から姿を消したフェリクスは、王宮の時計塔のさらに上、誰も来ることのない尖塔の縁に腰を下ろしていた。
 銀色の髪が夜風になびき、灰色の瞳が下界を見下ろす。

​「ふぅ……。ちょっと煽りすぎちゃったかな」

​ フェリクスは自分の指先を見つめ、苦笑した。そこには、先ほどエリナの近くで感じ取った「聖なる魔力」の残滓が、かすかな熱として残っている。

​「いやぁ、でもカイルのあんな顔、初めて見たよ。戦場であんなに返り血を浴びても眉一つ動かさなかった男が、あんなちっぽけな女の子一人に必死になっちゃって」

​ 彼は夜空を見上げ、独り言をこぼす。

​「カイルには悪いことしちゃったかなぁ……。でもさ、あのままじゃあの子の『光』はカイルの重すぎる執着に押し潰されて消えちゃうからね。たまには外部から揺さぶって、換気してあげないと」

​ フェリクスはふと真面目な表情になり、自嘲気味に呟いた。

​「『魔力ゼロ』なんて、測定した奴の顔が見てみたいよ。……あれゼロじゃない。既存の魔法体系の枠に収まらない『無限』だ。彼女がその力に自覚を持ったとき、この国はどうなるのか……」

​ 彼はポケットから小さな魔導具を取り出し、弄びながら立ち上がる。

​「ま、嫌われ役は僕が引き受けてあげるよ。親友が幸せになるための『スパイス』としては、最高に効いたはずだしね」

​ フェリクスは再び飄々とした笑みを浮かべると、夜の闇に溶け込むように姿を消した。
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