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ep.13
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工房には、メルが槌を振るうリズムカルな音が響いている。
その隣で、アルベールは複雑な表情でそれを見守っていた。
「メル。……そんなに丁寧に打たなくていいんだよ? 相手はただの王女だ。適当に形を整えて、宝石を散りばめておけば喜ぶはずだ」
「ダメですよ、アルベール様。……使う人が、いざという時に自分を守れるように。『絶対に折れない心』を込めて打たないと」
メルがそう言って微笑むと、アルベールは「なんて高潔なんだ……!」と再び自分の独占欲を恥じて跪いた。
メルは、アルベールの不壊の剣を調整した時に出た、最高品質の鉄の破片を丁寧に熱し、叩いていく。
それは王女が望んだ「キラキラした装飾品」ではない。一見すると、白銀色に輝く、小ぶりで地味なナイフ。けれど、刃先からは触れるものすべてを断ち切るような、静かな鋭気が溢れていた。
「……できました。アルベール様、これなら王女様も安心です」
完成したのは、装飾など一切ない、機能美の極致のような一振り。
そこへちょうど、ロゼッタ王女が「私の可愛い剣はできたかしら?」と意気揚々と現れた。
「……えっ。何これ、ただの包丁じゃない! もっとこう、宝石をジャラジャラつけて、ピンク色とかにできなかったの?」
不満げな王女。その瞬間、アルベールの目がリチャードのような冷徹な光を宿した。
「……王女殿下。そのナイフを『ただの包丁』と呼ぶなら、今すぐその首を撥ねて、彼女の技術がどれほどのものか証明してあげましょうか? これは、僕の不壊の剣と同じ素材、同じ魂が宿った双子の刃だ。……それを手にできる光栄を噛みしめろ」
「ひっ……! 冗談よ、わかったわよ! でも、本当に守ってくれるんでしょうね?」
王女が恐る恐るそのナイフを手に取り、工房の隅にある「練習用の分厚い鉄板」を軽く突いてみた。
――シュンッ。
抵抗は、一切なかった。
まるで熱いナイフでバターを撫でたかのように、鋼鉄の板が真っ二つに泣き別れる。
「…………え?」
「あら。……少し、切れ味を良くしすぎちゃいましたねぇ。王女様、お料理には使わないでくださいね。まな板まで真っ二つになっちゃいますから」
メルが忠告する中、王女は「これ、護身用っていうか……暗殺用じゃないの……?」と震えながら、その至宝を大切に抱えて帰っていった。
その隣で、アルベールは複雑な表情でそれを見守っていた。
「メル。……そんなに丁寧に打たなくていいんだよ? 相手はただの王女だ。適当に形を整えて、宝石を散りばめておけば喜ぶはずだ」
「ダメですよ、アルベール様。……使う人が、いざという時に自分を守れるように。『絶対に折れない心』を込めて打たないと」
メルがそう言って微笑むと、アルベールは「なんて高潔なんだ……!」と再び自分の独占欲を恥じて跪いた。
メルは、アルベールの不壊の剣を調整した時に出た、最高品質の鉄の破片を丁寧に熱し、叩いていく。
それは王女が望んだ「キラキラした装飾品」ではない。一見すると、白銀色に輝く、小ぶりで地味なナイフ。けれど、刃先からは触れるものすべてを断ち切るような、静かな鋭気が溢れていた。
「……できました。アルベール様、これなら王女様も安心です」
完成したのは、装飾など一切ない、機能美の極致のような一振り。
そこへちょうど、ロゼッタ王女が「私の可愛い剣はできたかしら?」と意気揚々と現れた。
「……えっ。何これ、ただの包丁じゃない! もっとこう、宝石をジャラジャラつけて、ピンク色とかにできなかったの?」
不満げな王女。その瞬間、アルベールの目がリチャードのような冷徹な光を宿した。
「……王女殿下。そのナイフを『ただの包丁』と呼ぶなら、今すぐその首を撥ねて、彼女の技術がどれほどのものか証明してあげましょうか? これは、僕の不壊の剣と同じ素材、同じ魂が宿った双子の刃だ。……それを手にできる光栄を噛みしめろ」
「ひっ……! 冗談よ、わかったわよ! でも、本当に守ってくれるんでしょうね?」
王女が恐る恐るそのナイフを手に取り、工房の隅にある「練習用の分厚い鉄板」を軽く突いてみた。
――シュンッ。
抵抗は、一切なかった。
まるで熱いナイフでバターを撫でたかのように、鋼鉄の板が真っ二つに泣き別れる。
「…………え?」
「あら。……少し、切れ味を良くしすぎちゃいましたねぇ。王女様、お料理には使わないでくださいね。まな板まで真っ二つになっちゃいますから」
メルが忠告する中、王女は「これ、護身用っていうか……暗殺用じゃないの……?」と震えながら、その至宝を大切に抱えて帰っていった。
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