《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

383.愛こんにゃく家のお母さんは、親友キニーの一生のお願いを叶えようとしていました。『娘を国から逃がして。』娘本人は、というと?

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オレが口を挟むより、愛こんにゃく家のお母さん刑事に任せる方がスムーズにいきそうだな。

「兼業スパイと専業スパイは、何が違うの?」
と愛こんにゃく家のお母さん。

愛こんにゃく家のお母さん、ナイス!

オレも兼業スパイと専業スパイの違いを、本人から聞きたかった。

「専業はスパイしかできないから、危険です。

兼業は、副業がスパイだから、危なくありません。

兼業スパイの登録をして、依頼がきたときにスパイの仕事をしますが、普段は本業で生活しています。

皆、登録だけはしてます。

登録は、タダなので。

私の本業は、小物を作って売るお仕事です。」

副業でスパイ?

本業が休みの日に、単発バイトを入れる感覚かな?

弟嫁その二にスパイとしての技術がなかったのは、登録だけして研修的なものがなかったからなのかな。

兼業スパイは、あえて素人らしさを失わせないようにして、外国で活動しても怪しまれないようにしているのかもしれないなー。

オレは、弟嫁その二の話を聞きながら、あれやこれやを考えている。

弟嫁その二の本業が、スパイじゃないなら、弟嫁その二を母国に引き取らせるのが難しくなった。

本業があるせいで、弟嫁その二が、自分はスパイだと自白しただけでは、証拠にならない気がするぞ。

当事者からしか聞けない有益な情報だったなー。

弟嫁その二と愛こんにゃく家お母さんの会話から、弟嫁その二の母国は、本業が別にある単発の兼業スパイが珍しくないという情報を手に入れられた。

弟嫁その二の母国は、どこか聞いておいた方がいいよな。

スパイ禁止条項を作って入国禁止にするくらいしか、思いつかないけれどさ。

国民皆、兼業スパイ。

可能性があるからな。

入国禁止にするくらいなら、国交を開かないという手もあるけれどなー。

どんな国か分からないうちは、棚上げしておく。

兼業スパイのバイトは、危ないから止めておきな、と言われても、皆がやっているから、と危険性を考えずに、国民全員が始めてしまう感じだとすると。

弟嫁その二の国は、怖い国だよなー。

スパイであることがバレたら、兼業だろうと専業だろうと同じ未来しかないとオレは思う。

専業スパイと同じ未来になることを、兼業スパイの登録をするときには知らされない。

失敗したときに初めて、知らされる。

弟嫁その二のように。

愛こんにゃく家のお母さんは、弟嫁その二に、別のアプローチをした。

「本業に集中して、お金を稼ぐのが目的だったら。

外国に来てスパイをするんじゃなく、国で本業を頑張るんじゃ、だめだったの?」
と愛こんにゃく家のお母さん。

「本業だけで生活できていたら、国を出ていません。
私は、私の生活を豊かにするために、国を出ました。」
と弟嫁その二。

「生活を豊かにしたいなら、兼業スパイの登録をする必要はなかったんじゃない?

本業だけで勝負しても良かったんじゃない?」
と愛こんにゃく家のお母さん。

弟嫁その二の表情は、愛こんにゃく家のお母さんを、現実を知らないで理想を語る人と相対したときみたいになっている。

「兼業スパイの登録をしたら、国を出るときに十分な支度金がもらえます。

登録をしないで国を出たら、貧乏な暮らししかできません。

生活レベルを下げるために国を出る人はいません。

私も、他の人も。」
と弟嫁その二。

愛こんにゃく家のお母さんは、ふぅと大きく息を吐いた。

「あなたのお母さんキニーは、あなたとおなじくらいの年頃に、あなたと同じように小物を作っていた。

小物を作って渡した相手と大恋愛をして、あなたの国へ渡ったけれど。

あなたが手紙を携えて、私を訪ねてくるまで、キニーからは音沙汰がなかったのよ。

一度も。

私だけではなく、キニーの親しい人は誰も、キニーが国を出た後を知ることができなかった。

結婚して国を出たキニーからの初めての手紙には、
『娘が国に帰らなくて済むように助けて。
娘が新天地で骨を埋めることを願っている。』
と書かれていたわ。」

愛こんにゃく家のお母さんの顔は、今までで一番気迫があった。

愛こんにゃく家のお母さんは、母親である親友の思いが親友の娘に伝わってほしいと心をこめて話している。

愛こんにゃく家のお母さんは、親友のキニーからの手紙の文面から読み取ったんだな。

『娘を国から逃がして。』

二度と会えないだろう親友からの一生のお願い。

弟嫁その二が、小物を渡して謝礼をもらった相手は、愛こんにゃく家のお母さんの知り合いであり、同時に愛こんにゃく家のお母さんの親友キニーをよく知る人だったんじゃないのかな。

キニーが娘を国に戻さないことを願っているなら、キニーの娘の弟嫁その二に、マウンテン王国での居場所を作ってあげようとしていたんじゃないかな。

弟嫁その二は、母親の願いを知らず、母親の願いを叶えようとした人の思いを理解していなかった。

弟嫁その二に、国から逃げないと、という考えがなかったから。

「知っています。お母さんに持たされた手紙は、間違いないかチェックされてから、国を出ました。

よくある文章だって言われました。」
と弟嫁その二。

弟嫁その二の返事を聞いた愛こんにゃく家のお母さんは、目を見開いて、言葉を失っていた。

「あなたは、そうとらえていたのね。

もう、私から伝えられることは、何もないわ。

キニーの分も、娘のあなたが元気でいることだけを祈っているわね。」

愛こんにゃく家のお母さんは、弟嫁その二の顔を寂し気に見つめて、それっきり口を閉ざした。

弟嫁その二は、母親に持たされた手紙は検閲されているとナチュラルに話しているぞ?

検閲されることに抵抗がないんだろうな。

愛こんにゃく家のお母さん、お疲れ様。

ありがとう。

オレに選手交代の時間だな。
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