《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

469.オレは、この世界に来たとき、味方がいないと思っていました。オレが名前を呼ぶ人は、オレが名前で呼びたいと思った人。信頼の証なんです。

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オレは、この世界に来てからのあまりの歓迎されなさに、怒りを覚えていて。

誰の名前も覚えてやるものか、すぐに日本に帰るんだから、と考えていた。

この世界にいる人の名前を知ろうとしないことは、オレのささやかな、この世界への抵抗だった。

でも、生活していくうちに、心を許せる人や、信用できる人から順に名前を呼びたくなった。

ヤグルマさんは、初見で、オレの信用を勝ち取ったツワモノだ。

オレの中で。

名前で呼ぶのは、信頼の証。

この世界に来たとき、オレの味方は、一人もいなかったから。

信頼する人が増えていくにつれ。

寂しいけれど、日本に帰るオレは、いつかは皆とさようならだな、と、考えていた時期もあった。

ミーレ長官は、マウンテン王国の国王陛下からの刺客としての出会いだったけれど、オレに対しては、誠実だった。

オレは、ミーレ長官にだけは、騙されることはない、と全幅の信頼をおいていた。

右も左も分からないオレに誠実に付き合ってくれていたミーレ長官。

ミーレ長官からの信頼を得ることができていなかったのは、オレの不甲斐なさが原因だ。

ミーレ長官が、オレに反旗を翻した原因は、オレにある。

だから。

オレは、ミーレ長官を諦めない。

オレは、ミーレ長官が、誠実な人だと知っている。

ミーレ長官が誠実だったから、ミーレ長官の誠実さに応えられていないオレは、信頼を失った。

オレは、必ず挽回してみせる。


ミーレ長官自身に切り込んだら、通じるかな。

「オレは、ミーレ長官自身に確認したいぞ。

ミーレ長官は、息子として、自身が想定していないような人生を、親の思いによって歩まされてこなかった、と言えるかな?」

ミーレ長官は、オレの質問を想定していなかったんだと思う。

ミーレ長官には、自覚がない。

自覚はなくても、親との関わり方から、親子関係をそういうものだと学習していて、それ以外を知らないミーレ長官。

ミーレ長官が、息子さんにしようとしていることは、ミーレ長官が、親にされたことの繰り返しだと気づいてほしい。

「ミーレ長官のお母さんは、女王陛下を名乗る資格がなかったのに、女王陛下になって、ミーレ長官を王太子にした。

ミーレ長官が即位する予定がなかったのなら、ミーレ長官が王太子に就く必然性はない。

ミーレ長官を王太子に、と望んだのは、誰かな?」

「女王陛下です。女王陛下が私を王太子に指名しました。」
とミーレ長官。

「ミーレ長官のお母さんは、ミーレ長官が王太子になったことをどう思っていたのかな?

喜んだ?

悲しんだ?

申し訳なく思った?

それとも、関心がなかった?」

「ヒサツグ様は、私に女王陛下のお心を疑わせようとするのですか。」
とミーレ長官。

「ミーレ長官は、息子に同じ苦労をさせるのかな?」

「息子には父である私がいます。母である妻もいます。息子には、頼るべき親が揃っています。」
とミーレ長官。

息子さんには、両親が揃っている。

ミーレ長官の両親は?

「ミーレ長官のお母さんは、女王陛下だったと聞いたけれど、ミーレ長官のお父さんは、何をしていたのかな?」

「私の父ですか?懐かしいですね。
私に父のことを直接尋ねる人は、今までいませんでした。」
とミーレ長官。

「オレも知っていたら、わざわざ聞かないかな。」

ヒサツグ様は、ご存じないことが多いですから、とミーレ長官は、言ってから、説明してくれた。

「父は、女王陛下が即位することに反対しました。
女王陛下が即位するときに、母を止められなかった責任をとると言って、蟄居を宣言したのです。

父は、王族でした。」
とミーレ長官。

ミーレ長官のお父さんは、貴族じゃなかったんだな。

「女王陛下は、父が王配の務めを果たさなかったために、二倍忙しくなりました。

父が王配として支えてくれていたら、女王陛下は、どれほど助かったことでしょう。

女王陛下の亡き後。

父は、女王陛下の行いを諌めることをしてこなかった責任をとると、蟄居先で自害しました。

父は、女王陛下の王配である名誉と義務を投げ出しました。

王太子となった息子の私のことなど、眼中にはなかったのです。」
とミーレ長官。

ミーレ長官。

お父さんは、ミーレ長官を愛していたと思う。

ミーレ長官には、伝わっていないけれど。

ミーレ長官にお父さんの愛が伝わっていないのは、ミーレ長官が、お母さんのフィルターを通して、お父さんを見ているからだな。

ミーレ長官は、お母さんが語るお父さん像を、自分が感じてきたお父さん像だと思い込んでいる。

失礼を承知で聞いてしまおう。

「お父さんの自害は、どのタイミングかな?

お母さんが、サーバル王国で亡くなってすぐかな?

お母さんの同行者が、マウンテン王国に帰国後かな?

ミーレ長官が、毒杯を断って臣籍降下した後かな?前かな?」

「私が毒杯を断って、臣籍降下が決まってからです。
蟄居先で、命を絶つなら、女王陛下に命を捧げて欲しかったです。」
とミーレ長官。

ミーレ長官のお父さんに対する考え方は、お母さんとお父さんのミーレ長官への距離感の違いが顕著に出ているとオレは思う。

お母さんは、ミーレ長官に踏み込んで絡め取り、取り込んでしまった。

お父さんは、お母さんからミーレ長官を引き離さなかった。

もしくは、引き離せなかった。

ミーレ長官のお母さんの方が、ミーレ長官のお父さんより身分が上だから。

他にも何か、理由があるかもしれない。

オレは、ミーレ長官の認識に揺さぶりをかけて、これまでのミーレ長官の常識に亀裂を入れ、根本から、ものの見方を変えさせるつもりでいる。

オレが、しようとしていることは、ミーレ長官が、ミーレ長官のお母さんとお父さんに抱いている思いをひっくり返すこと。

そうしないと、ミーレ長官の耳に、オレの話は入っていかないだろうから。

オレは、ミーレ長官を罰したくない。

オレが、ミーレ長官を離したくないんだ。

今のまま、何も手を打たなかったら、オレとミーレ長官の道は、永遠に分かたれてしまう。

オレは、足掻ける限り、足掻いてやる。
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