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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
468.ミーレ長官は、ミーレ長官の息子さんのいるべき場所を奪われたと考えていました。オレは、ミーレ長官と家族を幸せにしたいから、止めます。
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ミーレ長官のお父さんについては、ひとまず、触れずにおこう。
「ミーレ長官は、親として、息子さんにどうしたいのかな?」
「息子が生きるに相応しい場所を与えます。
王太子だった私の嫡男ですから。」
とミーレ長官。
ミーレ長官に、ちょっと待て、とオレが言うには、遅すぎたんだな。
オレは、苦いものを飲み込む。
息子さんが狙われていることをオレに話してくれたときに、オレは動かなくてはならなかった。
ミーレ長官が、誰もあてにしない、自分だけで、問題を解決して、最良の結果を出す、と決意する前に。
ミーレ長官にすれば。
今さら、何を言うのか、なんだよな。
手遅れ感は否めない。
でも。
諦めてたまるか。
オレは、この世界で、諦めることをしなくなった。
オレが諦めたら、オレの望みは、決して叶わない。
オレの望みを汲み取って、何でも叶えてあげようとする人はいない。
オレのしたいことは、オレしか知らない。
オレの願いを叶えられるのは、オレだけ。
オレとクロードの、一緒に生きたいという願いは同じだけど、希望する内容が、一から十まで全く同じであったことはない。
オレには、オレの。
クロードには、クロードの。
したいことがあって。
してほしいことがある。
一緒に生きる約束をして、愛し合っていても、願うことが揃うことはない。
オレとクロードは、譲れないところは主張して、お互いが納得のいく落としどころを探るようになった。
共に生活するということは、一方的にならないことだとオレは思う。
縁があって、思いがあって繋がった家族。
ミーレ長官には、家族と向き合ってほしい。
「息子さんと話し合いはしたのかな?」
「ヒサツグ様。
私の息子は、物心ついた頃、本来いるはずだった場所を奪われていました。
その場所を知らない息子に何を語れと言いますか?」
とミーレ長官。
ミーレ長官の『王太子』は本来与えられるものではなかったから、息子さんは、何も奪われていない。
そして、王になる予定のない王太子だったミーレ長官の息子さんを王位につけるために、クロードの大公位を狙うのは、お門違い。
ただの略奪行為。
でも、今は、おいておく。
今、重要なのは、オレの持っていきたい話の流れを中断しないことだ。
オレは、勝負どころがきた、と思った。
このタイミングを逃してはならない、と。
「ミーレ長官は、ミーレ長官のお母さんやお父さんと、ミーレ長官の将来について話し合ってきたかな?」
「ヒサツグ様。突然、何を言い出すのですか?」
ミーレ長官は、訝しんで、調子が狂った。
「ミーレ長官の息子さんは、ミーレ長官をお父さんに持ち、ミーレ長官の奥様をお母さんに持つ、ミーレ長官の家族。
ミーレ長官は、息子さんの将来について、息子さん自身や、ミーレ長官の奥様と話し合ってきたのかな?
王の生活を知らない子どもが、血筋だけでなれるほど、王になるのは容易いことかな?」
「ヒサツグ様。聞き捨てなりません。」
とミーレ長官は、青筋を立てる。
「聞け。
ミーレ長官の采配で、ミーレ長官の息子さんが王になれたとしても。
王で居続けるのは、ミーレ長官じゃなく、ミーレ長官の息子さんだ。」
「言われるまでもなく、理解しています。
私がそうすることを決めましたから。」
とミーレ長官。
「息子さんの意思を確認せずに、息子さんを王に推して、玉座に座らせた結果。
息子さんが得るものは、何か、ミーレ長官は、父として考えろ。」
「何を勿体つけているのですか?」
とミーレ長官。
通じないかな?
通じてほしい。
「ミーレ長官は、親にされてきたことを、大事にしてきた家族に繰り返そうとしていないかな?」
「親に?私が何をされたというのでしょう?」
とミーレ長官。
伝われ!
「ミーレ長官。
ミーレ長官の満足度や悲願とは別に。
父から王になれと望まれ、誰からも意思を確認されることなく、玉座に座ることになる息子さんの姿を想像してみるといいぞ?」
「私の息子は、立派な王として君臨することでしょう。」
とミーレ長官。
立派な傀儡の王、という言葉をオレはのみ込んだ。
「ミーレ長官は、ミーレ長官の辿ってきた人生を息子さんに繰り返させたいのかな?」
「息子の未来は明るいものです。
私の人生と重なるところはありません。」
とミーレ長官は、一顧だにしない。
手強い。
「ミーレ長官。
息子自身の環境や心境に支えられていないと叶えられない親の思いを、何と呼ぶか知っているかな?」
「ヒサツグ様は、私を侮辱したいのでしょうか?」
とミーレ長官。
ミーレ長官の雰囲気が、一気に尖った。
「いいや。
ミーレ長官は、まだ、引き返せる。
まだ、過ちは、形になっていないだろう?」
オレは、歯がゆさを表に出さないように、強気で対応する。
「過ち、とはとんだ言い草もあったものですね。」
とミーレ長官は、冷たい反応になった。
だってさ、ミーレ長官。
ミーレ長官は、息子さんに確認していないよな?
今のミーレ長官とミーレ長官の息子さんの立ち位置で、ミーレ長官の息子さんに玉座に座る正統性は、ないんだ。
ミーレ長官の息子さんが、選べたなら、略奪してでも玉座に座る未来を選びたいかどうか。
今の生活を捨てて、略奪して得た玉座に座る傀儡の王になりたいかどうか。
親の思いと子どもの思いが一致するとは、限らない。
ミーレ長官には、実行に移す前に、気づいて踏みとどまってほしい。
ミーレ長官もミーレ長官の奥様も息子さんも、オレは幸せにしたいと思っている。
ミーレ長官には、ずっと助けられてきたから。
オレ、ミーレ長官のことは、出会って早いうちから名前で呼んでいたんだぞ?
「ミーレ長官は、親として、息子さんにどうしたいのかな?」
「息子が生きるに相応しい場所を与えます。
王太子だった私の嫡男ですから。」
とミーレ長官。
ミーレ長官に、ちょっと待て、とオレが言うには、遅すぎたんだな。
オレは、苦いものを飲み込む。
息子さんが狙われていることをオレに話してくれたときに、オレは動かなくてはならなかった。
ミーレ長官が、誰もあてにしない、自分だけで、問題を解決して、最良の結果を出す、と決意する前に。
ミーレ長官にすれば。
今さら、何を言うのか、なんだよな。
手遅れ感は否めない。
でも。
諦めてたまるか。
オレは、この世界で、諦めることをしなくなった。
オレが諦めたら、オレの望みは、決して叶わない。
オレの望みを汲み取って、何でも叶えてあげようとする人はいない。
オレのしたいことは、オレしか知らない。
オレの願いを叶えられるのは、オレだけ。
オレとクロードの、一緒に生きたいという願いは同じだけど、希望する内容が、一から十まで全く同じであったことはない。
オレには、オレの。
クロードには、クロードの。
したいことがあって。
してほしいことがある。
一緒に生きる約束をして、愛し合っていても、願うことが揃うことはない。
オレとクロードは、譲れないところは主張して、お互いが納得のいく落としどころを探るようになった。
共に生活するということは、一方的にならないことだとオレは思う。
縁があって、思いがあって繋がった家族。
ミーレ長官には、家族と向き合ってほしい。
「息子さんと話し合いはしたのかな?」
「ヒサツグ様。
私の息子は、物心ついた頃、本来いるはずだった場所を奪われていました。
その場所を知らない息子に何を語れと言いますか?」
とミーレ長官。
ミーレ長官の『王太子』は本来与えられるものではなかったから、息子さんは、何も奪われていない。
そして、王になる予定のない王太子だったミーレ長官の息子さんを王位につけるために、クロードの大公位を狙うのは、お門違い。
ただの略奪行為。
でも、今は、おいておく。
今、重要なのは、オレの持っていきたい話の流れを中断しないことだ。
オレは、勝負どころがきた、と思った。
このタイミングを逃してはならない、と。
「ミーレ長官は、ミーレ長官のお母さんやお父さんと、ミーレ長官の将来について話し合ってきたかな?」
「ヒサツグ様。突然、何を言い出すのですか?」
ミーレ長官は、訝しんで、調子が狂った。
「ミーレ長官の息子さんは、ミーレ長官をお父さんに持ち、ミーレ長官の奥様をお母さんに持つ、ミーレ長官の家族。
ミーレ長官は、息子さんの将来について、息子さん自身や、ミーレ長官の奥様と話し合ってきたのかな?
王の生活を知らない子どもが、血筋だけでなれるほど、王になるのは容易いことかな?」
「ヒサツグ様。聞き捨てなりません。」
とミーレ長官は、青筋を立てる。
「聞け。
ミーレ長官の采配で、ミーレ長官の息子さんが王になれたとしても。
王で居続けるのは、ミーレ長官じゃなく、ミーレ長官の息子さんだ。」
「言われるまでもなく、理解しています。
私がそうすることを決めましたから。」
とミーレ長官。
「息子さんの意思を確認せずに、息子さんを王に推して、玉座に座らせた結果。
息子さんが得るものは、何か、ミーレ長官は、父として考えろ。」
「何を勿体つけているのですか?」
とミーレ長官。
通じないかな?
通じてほしい。
「ミーレ長官は、親にされてきたことを、大事にしてきた家族に繰り返そうとしていないかな?」
「親に?私が何をされたというのでしょう?」
とミーレ長官。
伝われ!
「ミーレ長官。
ミーレ長官の満足度や悲願とは別に。
父から王になれと望まれ、誰からも意思を確認されることなく、玉座に座ることになる息子さんの姿を想像してみるといいぞ?」
「私の息子は、立派な王として君臨することでしょう。」
とミーレ長官。
立派な傀儡の王、という言葉をオレはのみ込んだ。
「ミーレ長官は、ミーレ長官の辿ってきた人生を息子さんに繰り返させたいのかな?」
「息子の未来は明るいものです。
私の人生と重なるところはありません。」
とミーレ長官は、一顧だにしない。
手強い。
「ミーレ長官。
息子自身の環境や心境に支えられていないと叶えられない親の思いを、何と呼ぶか知っているかな?」
「ヒサツグ様は、私を侮辱したいのでしょうか?」
とミーレ長官。
ミーレ長官の雰囲気が、一気に尖った。
「いいや。
ミーレ長官は、まだ、引き返せる。
まだ、過ちは、形になっていないだろう?」
オレは、歯がゆさを表に出さないように、強気で対応する。
「過ち、とはとんだ言い草もあったものですね。」
とミーレ長官は、冷たい反応になった。
だってさ、ミーレ長官。
ミーレ長官は、息子さんに確認していないよな?
今のミーレ長官とミーレ長官の息子さんの立ち位置で、ミーレ長官の息子さんに玉座に座る正統性は、ないんだ。
ミーレ長官の息子さんが、選べたなら、略奪してでも玉座に座る未来を選びたいかどうか。
今の生活を捨てて、略奪して得た玉座に座る傀儡の王になりたいかどうか。
親の思いと子どもの思いが一致するとは、限らない。
ミーレ長官には、実行に移す前に、気づいて踏みとどまってほしい。
ミーレ長官もミーレ長官の奥様も息子さんも、オレは幸せにしたいと思っている。
ミーレ長官には、ずっと助けられてきたから。
オレ、ミーレ長官のことは、出会って早いうちから名前で呼んでいたんだぞ?
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