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1.結婚について、どう考えているかと聞いてきたのは、恋人でも婚約者でもない、幼馴染の男。
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俺には親の顔よりも長く顔を見ている幼馴染がいる。
辺境伯家という最強の家に生まれた幼馴染は、最強の遺伝子を受け継ぎ、最強の男を育てる環境の中ですくすくと成長した。
今、幼馴染は、俺の上にいる。
パンとハムとサラダを持ってきたから、ピクニックに行こうと誘われてついてきただけなのに。
どうして、俺は、ピクニックシートの上で仰向けに転がされているんだ?
仰向けに転がされている俺の上にマウントポジションで座ってどういうつもりなんだ?
今から、軽食タイムじゃなかったのか?
新作のスパークリングワインもあるんだろう?
楽しみにしてきたんだ。
早く、蓋を開けようぜ。
こっそり持ち出した品なら、泡を舐めるだけでもいい。
俺の心の中は雄弁なのに。
現実の俺は泡食ってしまって、何も言えていない。
軽食の入っているカゴにチラチラ視線を向けるのが精一杯。
幼馴染は、マウントポジションのまま、俺に話しかけてきた。
「結婚について、どう考えている?」
「お互い、いつかはするんじゃないか?」
お年頃の俺と幼馴染は、領地がお隣さん同士の貴族子弟。
可もなく不可もなく、貴族社会の端っこにちまっとおさまってきた家の三男が俺。
幼馴染の家は、うちの近隣一帯を面倒を見てくれている。
何代かに一度、王女様が輿入れされてくるお家柄だ。
幼馴染には、俺以外にも同年代のご近所さんがいるが、だいたい俺を誘いにくる。
小さいときに幼馴染の遊びに最後まで付き合ったのが、俺だけだったからだと思う。
野山を駆け回って迷子になって捜索されたり、川に飛び込んで川から引き上げられたり。
俺と幼馴染には、子どもらしい懐かしい思い出がいっぱいある。
うちの親は、俺の首が物理的にとぶことを何度も覚悟したと後になって話してくれた。
幼馴染と会う前に、何をしたらダメなのかを教えてほしかったと、そのときに親に言ったら。
何がダメか教えてもらわないと分からない三男だから、諦めがついた、と言われた。
俺と親の首が物理的にとばなかったのは、幼馴染が怒るからという理由を聞いたときに。
権力者の子どもは権力者なんだと思ったのは秘密にしている。
子どものうちに、子どもにしかできない遊びに夢中になれた時間は幼馴染のおかげだ。
俺と幼馴染は、独身同士。
一緒に遊ぶ時間、まだまだある。
「俺達には、まだ婚約者がいない。」
と幼馴染。
「婚約者の有無について、俺達、と俺とお前をひとまとめにするなよ。」
男爵家三男と辺境伯次男の婚約者の決め方が同じでないくらい、男爵家三男の俺にも分かる。
「お前に結婚についての希望があるなら、一応聞く。」
と幼馴染。
親でもない幼馴染に結婚の希望を聞かれているのは、誰かを紹介しようとしているからかな?
マウントポジションになって聞く意味は、紹介してやるから断るなという前フリだったり?
考えたことがないせいで、答えが出ない。
「俺に関しては、高望みしているから相手が見つからないんじゃないんだよ。」
「お兄さん達は、お前と違って高望みしているのか?」
と幼馴染。
おっと。
いらんところに飛び火した。
「うちの家は代々、長男と次男は、跡継ぎとその補佐役を務めている。
お嫁さんを選ぶ基準が厳しくなるのは、家の事情があるからだから。」
お嫁さん本人だけでなく、お嫁さん同士の実家や跡継ぎとも良好な関係でないと、うちの家がゴタついてしまう。
「お兄さん達の嫁選びには参戦しないのか?」
と幼馴染。
兄二人のお嫁さんが誰になるか、興味がないと言えば嘘になる。
「三番目の役割は現場仕事。
跡継ぎと補佐の長男と次男とは会っても、現場に出てこないお嫁さん達と話す機会は多分ない。」
あるとしたら、長男と次男が同時に亡くなったときだ。
三男の俺は、長男と次男のお嫁さんの面倒を見ることになる。
俺が自分のお嫁さんを見つけてしまったら、寡婦になった長男と次男のお嫁さんを後回しにしてしまうかもしれない。
だから、俺は嫁取りをしないと決めている。
うちの家は長く続いてほしいし、家族も領民もいらん苦労はしてほしくない。
俺が亡くなった後も、うちの家が治める土地は、この領地であってほしい。
亡くなったら、幼馴染の住む辺境伯家の隣の領地に墓をたててもらって眠りたい。
「家に帰らないつもりか?」
と幼馴染。
「結婚した兄二人が仕切るようになったら、我が家のように暮らせないと思うんだよ。」
まだ誰も結婚していないので、実際にどうなるかは分からない。
出入り口が何箇所もある城なら、所在なさの心配はいらないんだろうけど。
昔ご先祖様が建てた小さな城には、最低限の部屋と設備のみ。
建て替えたりはせずに補修しながら住んでいる。
長男と次男のお嫁さんの夫になる可能性のある男が、同じ敷地内にいるのもどうかな、と思うので。
お嫁さんが家にきたら、俺は家を出る。
「お兄さん達の相手が決まるのを待つことはない。今日から俺の家に住めばいい。」
と幼馴染。
「さすがに、今日から辺境伯家にお世話になる理由がないんだけど。」
「理由なら俺がいるだろう?」
と幼馴染。
「家に遊びに行くぐらいならアリだけど、年単位の居候はさすがに悪いだろう。」
俺の神経はそれほど図太くないんだ。
「婚約者を家に招くだけだ。」
と幼馴染。
ちょっと待て。
「婚約者がいる幼馴染の家に居候しにはいかない。」
婚約者の幼馴染が同居する家にお嫁にくるご令嬢が可哀想だろう!
「今はまだ、俺に婚約者はいない。」
と幼馴染。
「婚約者がいないのなら、なんで婚約者の話になった?」
「俺の婚約に関してなら、俺に分からないことなどない。」
と幼馴染。
「そこまで言うのなら、聞くけれど。
辺境伯家の次男に婚約者がいないのは何で?」
俺の言葉遣いが雑なのは、辺境伯家次男の幼馴染が俺にそれを許すと宣言しているから。
俺が辺境伯家と男爵家の上下関係を理解してから、辺境伯家と交流を持たせる方が不幸なことは起きないと進言した人は一人じゃなかったはず。
『理解するのがいつになるかは分かりませんよね。』
という至極真っ当な囁きを聞いてしまった辺境伯家の次男は。
『成長を待って一緒に遊べなくなる方が嫌。』
とのたまった。
俺の幼馴染への言葉遣いは不敬に問わないので、話しやすい言葉を使いなさいと教えられた俺は、素直にその教えを吸収。
敬語がだいぶ危うい男爵子息になっている。
幼馴染以外の上位貴族と会話しないで生きたい。
言葉使いでしくじって死にたくない。
俺は、領地に尽くし、領地に骨を埋めるんだ。
「俺はお前で精通したから。」
と幼馴染。
辺境伯家という最強の家に生まれた幼馴染は、最強の遺伝子を受け継ぎ、最強の男を育てる環境の中ですくすくと成長した。
今、幼馴染は、俺の上にいる。
パンとハムとサラダを持ってきたから、ピクニックに行こうと誘われてついてきただけなのに。
どうして、俺は、ピクニックシートの上で仰向けに転がされているんだ?
仰向けに転がされている俺の上にマウントポジションで座ってどういうつもりなんだ?
今から、軽食タイムじゃなかったのか?
新作のスパークリングワインもあるんだろう?
楽しみにしてきたんだ。
早く、蓋を開けようぜ。
こっそり持ち出した品なら、泡を舐めるだけでもいい。
俺の心の中は雄弁なのに。
現実の俺は泡食ってしまって、何も言えていない。
軽食の入っているカゴにチラチラ視線を向けるのが精一杯。
幼馴染は、マウントポジションのまま、俺に話しかけてきた。
「結婚について、どう考えている?」
「お互い、いつかはするんじゃないか?」
お年頃の俺と幼馴染は、領地がお隣さん同士の貴族子弟。
可もなく不可もなく、貴族社会の端っこにちまっとおさまってきた家の三男が俺。
幼馴染の家は、うちの近隣一帯を面倒を見てくれている。
何代かに一度、王女様が輿入れされてくるお家柄だ。
幼馴染には、俺以外にも同年代のご近所さんがいるが、だいたい俺を誘いにくる。
小さいときに幼馴染の遊びに最後まで付き合ったのが、俺だけだったからだと思う。
野山を駆け回って迷子になって捜索されたり、川に飛び込んで川から引き上げられたり。
俺と幼馴染には、子どもらしい懐かしい思い出がいっぱいある。
うちの親は、俺の首が物理的にとぶことを何度も覚悟したと後になって話してくれた。
幼馴染と会う前に、何をしたらダメなのかを教えてほしかったと、そのときに親に言ったら。
何がダメか教えてもらわないと分からない三男だから、諦めがついた、と言われた。
俺と親の首が物理的にとばなかったのは、幼馴染が怒るからという理由を聞いたときに。
権力者の子どもは権力者なんだと思ったのは秘密にしている。
子どものうちに、子どもにしかできない遊びに夢中になれた時間は幼馴染のおかげだ。
俺と幼馴染は、独身同士。
一緒に遊ぶ時間、まだまだある。
「俺達には、まだ婚約者がいない。」
と幼馴染。
「婚約者の有無について、俺達、と俺とお前をひとまとめにするなよ。」
男爵家三男と辺境伯次男の婚約者の決め方が同じでないくらい、男爵家三男の俺にも分かる。
「お前に結婚についての希望があるなら、一応聞く。」
と幼馴染。
親でもない幼馴染に結婚の希望を聞かれているのは、誰かを紹介しようとしているからかな?
マウントポジションになって聞く意味は、紹介してやるから断るなという前フリだったり?
考えたことがないせいで、答えが出ない。
「俺に関しては、高望みしているから相手が見つからないんじゃないんだよ。」
「お兄さん達は、お前と違って高望みしているのか?」
と幼馴染。
おっと。
いらんところに飛び火した。
「うちの家は代々、長男と次男は、跡継ぎとその補佐役を務めている。
お嫁さんを選ぶ基準が厳しくなるのは、家の事情があるからだから。」
お嫁さん本人だけでなく、お嫁さん同士の実家や跡継ぎとも良好な関係でないと、うちの家がゴタついてしまう。
「お兄さん達の嫁選びには参戦しないのか?」
と幼馴染。
兄二人のお嫁さんが誰になるか、興味がないと言えば嘘になる。
「三番目の役割は現場仕事。
跡継ぎと補佐の長男と次男とは会っても、現場に出てこないお嫁さん達と話す機会は多分ない。」
あるとしたら、長男と次男が同時に亡くなったときだ。
三男の俺は、長男と次男のお嫁さんの面倒を見ることになる。
俺が自分のお嫁さんを見つけてしまったら、寡婦になった長男と次男のお嫁さんを後回しにしてしまうかもしれない。
だから、俺は嫁取りをしないと決めている。
うちの家は長く続いてほしいし、家族も領民もいらん苦労はしてほしくない。
俺が亡くなった後も、うちの家が治める土地は、この領地であってほしい。
亡くなったら、幼馴染の住む辺境伯家の隣の領地に墓をたててもらって眠りたい。
「家に帰らないつもりか?」
と幼馴染。
「結婚した兄二人が仕切るようになったら、我が家のように暮らせないと思うんだよ。」
まだ誰も結婚していないので、実際にどうなるかは分からない。
出入り口が何箇所もある城なら、所在なさの心配はいらないんだろうけど。
昔ご先祖様が建てた小さな城には、最低限の部屋と設備のみ。
建て替えたりはせずに補修しながら住んでいる。
長男と次男のお嫁さんの夫になる可能性のある男が、同じ敷地内にいるのもどうかな、と思うので。
お嫁さんが家にきたら、俺は家を出る。
「お兄さん達の相手が決まるのを待つことはない。今日から俺の家に住めばいい。」
と幼馴染。
「さすがに、今日から辺境伯家にお世話になる理由がないんだけど。」
「理由なら俺がいるだろう?」
と幼馴染。
「家に遊びに行くぐらいならアリだけど、年単位の居候はさすがに悪いだろう。」
俺の神経はそれほど図太くないんだ。
「婚約者を家に招くだけだ。」
と幼馴染。
ちょっと待て。
「婚約者がいる幼馴染の家に居候しにはいかない。」
婚約者の幼馴染が同居する家にお嫁にくるご令嬢が可哀想だろう!
「今はまだ、俺に婚約者はいない。」
と幼馴染。
「婚約者がいないのなら、なんで婚約者の話になった?」
「俺の婚約に関してなら、俺に分からないことなどない。」
と幼馴染。
「そこまで言うのなら、聞くけれど。
辺境伯家の次男に婚約者がいないのは何で?」
俺の言葉遣いが雑なのは、辺境伯家次男の幼馴染が俺にそれを許すと宣言しているから。
俺が辺境伯家と男爵家の上下関係を理解してから、辺境伯家と交流を持たせる方が不幸なことは起きないと進言した人は一人じゃなかったはず。
『理解するのがいつになるかは分かりませんよね。』
という至極真っ当な囁きを聞いてしまった辺境伯家の次男は。
『成長を待って一緒に遊べなくなる方が嫌。』
とのたまった。
俺の幼馴染への言葉遣いは不敬に問わないので、話しやすい言葉を使いなさいと教えられた俺は、素直にその教えを吸収。
敬語がだいぶ危うい男爵子息になっている。
幼馴染以外の上位貴族と会話しないで生きたい。
言葉使いでしくじって死にたくない。
俺は、領地に尽くし、領地に骨を埋めるんだ。
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