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6.『俺が手を離しても、俺から離れていかないよね?』という幼馴染が俺の両手を離したから?
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ドラゴンがのんびりと待っているのを尻目に、俺と幼馴染との攻防は続いていた。
「そろそろ、戻られませんと。」
と辺境伯家の使用人。
幼馴染の注意がそれた気がしたので、手を振りほどこうと上下左右に動かしてみても、幼馴染の手は俺の手から外れない。
力を入れずに掴んでいるのに、どうして外せないんだよ!
「ドラゴンの周遊の時間か。」
と幼馴染。
「今から戻られると、急がずに準備ができます。」
と辺境伯家の使用人。
辺境伯家と男爵家の際で築山に擬態しているドラゴンには、毎日、周遊のためのお時間がもうけられている。
辺境伯家のドラゴンが飛んでいると分かるように、辺境伯家の紋章がどーんと入ったベストを着て辺境伯家の空を飛んで、辺境伯家にドラゴン有りと知らしめる。
辺境伯家とドラゴンとこの国にとって、ドラゴンの周遊は欠くことができない時間だ。
体高五メートルほどな首長竜の姿したドラゴンがベストを着るには、人間のように簡単にはいかない。
辺境伯家のドラゴンは、元々ベストなんて着ていなかった。
ドラゴンは、元々、野生の生き物だった。
ベストを着るようになったのは、かつての俺が発言がきっかけになっている。
『プレシオサウルス、空にいて腹が冷えないかなあ?上空は空気が冷たいというから。』
空を飛ぶドラゴンを地上から見上げると、ドラゴンの腹がよく見える。
というより、地上からは、腹、首、尾、翼くらいしか見えない。
辺境伯家次男の幼馴染は、お隣の男爵家三男がドラゴンを安心して見上げられるようにしたい、と、かつての俺がプレシオサウルスと呼んだドラゴンのためにベストを作らせた。
俺がプレシオサウルスと呼んだドラゴンは、ベストを着たら俺が安心するから、という幼馴染の説明を聞き、辺境伯家が用意したベスト着て周遊してくれている。
ベストを着たドラゴンが、辺境伯家の空を舞うようになってからの歴史は浅い。
他所の貴族のお家で、言ってはならぬことがあるのだということをこのときの俺は身を以て学んだ。
辺境伯家のドラゴンは寒そうにしているのに、服を着させてやっていないと辺境伯家を批判する台詞を吐いた俺を無礼者にしないでくれた幼馴染とドラゴンには頭が下がる。
「今日のドラゴンの周遊の時間に間に合うように帰ろう。」
と幼馴染。
「そうしろ。じゃあな。俺も帰る。」
「何で、手を離さないんだよ!」
俺の両手を掴んだ幼馴染は、俺の両手を掴んで、ずるずるずると俺を引きずっていく。
「離せ、離せってば。」
足を踏ん張っているのに、ズルズルと引っ張られていくのが悔しい。
幼馴染と俺とでは、体格差がありすぎるから?
体の鍛え方と元からの体の作りが違うから?
同じように野山を走り回った仲なのに。
腰を落として、引きずられる速度を落とそうとしたとき。
「今、俺が手を離したら、どうする?」
と幼馴染。
どうするも何も。
「何も聞かずに、手を離してほしい。」
ずるずる引きずられたら、靴がいたむ。
今履いている靴は、服と同様に辺境伯家から贈られたものだけど、歩きやすくて気に入っている一足なんだよ。
「お前の返事を聞いてから、手を離すか決める。」
と幼馴染。
「何でそんなことを聞きたいんだよ?」
「俺が手を離しても、俺から離れていかないよね?」
と幼馴染。
「それは。」
どう答えるのが正解?
「何で俺の手を離した後のことまで気になるんだよ?」
今すぐに、手を離して解散しようよ。
それぞれの家に帰ろう。
「お前が俺から離れずに俺についてくるのだったら、俺は今、この手を離してもいいよ。」
と幼馴染。
ニコニコしながら、俺の手をぶらぶらと揺らす幼馴染。
「へえ。」
手を離してもいいって、なんだよ。
何かの罠?
「どうする?」
と幼馴染。
ニコニコしっぱなしの幼馴染。
「俺の手を離すのが正解だと俺は思う。」
ニコニコしながら答えてみる。
「本当に?」
と幼馴染。
幼馴染は、急に真顔になった。
「うん。さあ。」
その手にとらえている俺の手を離すときがきた。
「後悔しない?」
と幼馴染。
俺は、大真面目な顔を作った。
「人は、後悔して学ぶ生き物だ。」
幼馴染は、俺の両手をぐいっと顔まで持ち上げる。
「俺が手を離しても、俺から離れずについてくるよね?」
と幼馴染。
俺の両手の指の数を数えるかのように視線を動かしていく幼馴染。
「う、うん。」
背中がゾワッとした。
「じゃあ、離すよ。」
と幼馴染。
離すといいつつ、幼馴染の手が俺から離れない。
「離すんだろう?ほら、離せよ。」
「本当に離してもいいんだね?」
と幼馴染。
やけに確認が多い。
「いいから、早く離せよ。」
幼馴染を振り切って逃げるくらい朝飯前。
幼馴染には、門限がある。
自分のとこの領地にいる俺には門限なんてない。
スタートダッシュとジグザグ走りを駆使して、幼馴染の帰る時間まで逃げ切ったらいいだけ。
マラソンはやったことがないけれど、追いかけっこなら、俺は負けない。
「今から離すけれど、忘れないでよ?」
と幼馴染。
「何をだよ?」
「俺から離れたり、逃げたりしないということ。」
と幼馴染。
「分かった。分かったから。」
「離すよ?」
と幼馴染。
離れた!
俺は、ばっと身を翻したかった。
でも我慢した。
幼馴染は、俺の真正面にいて、俺の出方をうかがっている。
今、幼馴染に背中を向けるのは早計。
スズメバチと遭遇したときは、後退りしろと前世で言われたことがある。
今、俺は、スズメバチに遭遇したとき並に警戒して幼馴染と向き合っている。
「逃げないね?」
と幼馴染。
じっと真正面から俺を見つめてくる幼馴染。
「逃げていないだろう?」
今は、まだ。
逃げるときじゃない。
粘れ、俺。
「先に歩いていくけど、俺についてこられるよね?」
と幼馴染。
幼馴染の青い瞳の中に、俺が映り込んでいるのが見えた。
俺は、大きく息を吸って吐く。
「いけるよ。」
ニコッと笑う幼馴染。
瞳の中が覗けるほどの至近距離で幼馴染の顔を見るのも、今日で最後だ。
掌にかいた汗をそっとズボンで拭き。
俺は、待った。
幼馴染が俺に背中を見せて先に歩き出すのを。
一歩、二歩。
幼馴染が歩き出す。
鍛えられた体にまとっているシャツの裾が揺れている。
風が吹いて、幼馴染の金色の髪を通り抜けていく。
俺はまだじっとしていた。
二歩の間隔くらいじゃ、追いかけられたら俺は逃げ切れない。
捕まらないためには、五歩くらいの間隔がほしい。
三歩、四歩。
幼馴染がくるりと振り返った。
手を離した位置から一歩も動いていない俺の全身を穴が開くくらい強く見てくる。
「お前は俺についてくるんだよね?」
と幼馴染。
これ以上は引っ張れない。
俺は、幼馴染に背を向ける。
返事はしなかった。
一目散に、辺境伯家の護衛がいない方向へ走り出す。
辺境伯家の護衛に捕まったら、幼馴染に捕まるより洒落にならない。
辺境伯家の護衛には、辺境伯家の次男である幼馴染が俺に何を言ったかが聞こえている。
辺境伯家の次男の幼馴染に口約束をして念押しまでされておきながら、約束を破って逃げ出したとなると。
辺境伯家の護衛も黙って見ているだけでは済ませてくれない。
俺は、残りの人生を幼馴染のベッドで寝起きする人生にはしない!
次世代最強の呼び名を持つ幼馴染と同じ時代を生きることを喜び。
幼馴染のお隣の領地で、領地を守る一助になると決めて、今日まで俺は生きてきた。
幼馴染と遊ぶのが、今日で最後になったとしても。
幼馴染が元気に活躍する話を聞きながら生きていければ、俺はそれでいい。
何にもない土地を治める男爵家の三男に異世界転生した俺は、家族と幼馴染に恵まれた生まれに感謝しているんだ。
大活躍はできなくていいから。
俺にできる地道な努力で、今の俺を育んでくれた人達の暮らしを守って生きたい。
幼馴染の伴侶とかいう、たいそうなものは求めていないんだ。
隣の領地に住む一人の男として、幼馴染が活躍する土台になる。
異世界転生してきた俺にとっての最高な人生は、辺境伯の次男と幼馴染になったことから始まった。
お前の幼馴染だというだけで、お前に守られ、庇われ続けているのに何も返せないままでいいとは思っていないんだよ。
お前の人生の役に立つ形でこの生を全うしたい。
頼むから、逃げ出す俺を捕まえずに見送って。
辺境伯家に気をつけて帰ってくれよ。
ドラゴンと一緒に。
「そろそろ、戻られませんと。」
と辺境伯家の使用人。
幼馴染の注意がそれた気がしたので、手を振りほどこうと上下左右に動かしてみても、幼馴染の手は俺の手から外れない。
力を入れずに掴んでいるのに、どうして外せないんだよ!
「ドラゴンの周遊の時間か。」
と幼馴染。
「今から戻られると、急がずに準備ができます。」
と辺境伯家の使用人。
辺境伯家と男爵家の際で築山に擬態しているドラゴンには、毎日、周遊のためのお時間がもうけられている。
辺境伯家のドラゴンが飛んでいると分かるように、辺境伯家の紋章がどーんと入ったベストを着て辺境伯家の空を飛んで、辺境伯家にドラゴン有りと知らしめる。
辺境伯家とドラゴンとこの国にとって、ドラゴンの周遊は欠くことができない時間だ。
体高五メートルほどな首長竜の姿したドラゴンがベストを着るには、人間のように簡単にはいかない。
辺境伯家のドラゴンは、元々ベストなんて着ていなかった。
ドラゴンは、元々、野生の生き物だった。
ベストを着るようになったのは、かつての俺が発言がきっかけになっている。
『プレシオサウルス、空にいて腹が冷えないかなあ?上空は空気が冷たいというから。』
空を飛ぶドラゴンを地上から見上げると、ドラゴンの腹がよく見える。
というより、地上からは、腹、首、尾、翼くらいしか見えない。
辺境伯家次男の幼馴染は、お隣の男爵家三男がドラゴンを安心して見上げられるようにしたい、と、かつての俺がプレシオサウルスと呼んだドラゴンのためにベストを作らせた。
俺がプレシオサウルスと呼んだドラゴンは、ベストを着たら俺が安心するから、という幼馴染の説明を聞き、辺境伯家が用意したベスト着て周遊してくれている。
ベストを着たドラゴンが、辺境伯家の空を舞うようになってからの歴史は浅い。
他所の貴族のお家で、言ってはならぬことがあるのだということをこのときの俺は身を以て学んだ。
辺境伯家のドラゴンは寒そうにしているのに、服を着させてやっていないと辺境伯家を批判する台詞を吐いた俺を無礼者にしないでくれた幼馴染とドラゴンには頭が下がる。
「今日のドラゴンの周遊の時間に間に合うように帰ろう。」
と幼馴染。
「そうしろ。じゃあな。俺も帰る。」
「何で、手を離さないんだよ!」
俺の両手を掴んだ幼馴染は、俺の両手を掴んで、ずるずるずると俺を引きずっていく。
「離せ、離せってば。」
足を踏ん張っているのに、ズルズルと引っ張られていくのが悔しい。
幼馴染と俺とでは、体格差がありすぎるから?
体の鍛え方と元からの体の作りが違うから?
同じように野山を走り回った仲なのに。
腰を落として、引きずられる速度を落とそうとしたとき。
「今、俺が手を離したら、どうする?」
と幼馴染。
どうするも何も。
「何も聞かずに、手を離してほしい。」
ずるずる引きずられたら、靴がいたむ。
今履いている靴は、服と同様に辺境伯家から贈られたものだけど、歩きやすくて気に入っている一足なんだよ。
「お前の返事を聞いてから、手を離すか決める。」
と幼馴染。
「何でそんなことを聞きたいんだよ?」
「俺が手を離しても、俺から離れていかないよね?」
と幼馴染。
「それは。」
どう答えるのが正解?
「何で俺の手を離した後のことまで気になるんだよ?」
今すぐに、手を離して解散しようよ。
それぞれの家に帰ろう。
「お前が俺から離れずに俺についてくるのだったら、俺は今、この手を離してもいいよ。」
と幼馴染。
ニコニコしながら、俺の手をぶらぶらと揺らす幼馴染。
「へえ。」
手を離してもいいって、なんだよ。
何かの罠?
「どうする?」
と幼馴染。
ニコニコしっぱなしの幼馴染。
「俺の手を離すのが正解だと俺は思う。」
ニコニコしながら答えてみる。
「本当に?」
と幼馴染。
幼馴染は、急に真顔になった。
「うん。さあ。」
その手にとらえている俺の手を離すときがきた。
「後悔しない?」
と幼馴染。
俺は、大真面目な顔を作った。
「人は、後悔して学ぶ生き物だ。」
幼馴染は、俺の両手をぐいっと顔まで持ち上げる。
「俺が手を離しても、俺から離れずについてくるよね?」
と幼馴染。
俺の両手の指の数を数えるかのように視線を動かしていく幼馴染。
「う、うん。」
背中がゾワッとした。
「じゃあ、離すよ。」
と幼馴染。
離すといいつつ、幼馴染の手が俺から離れない。
「離すんだろう?ほら、離せよ。」
「本当に離してもいいんだね?」
と幼馴染。
やけに確認が多い。
「いいから、早く離せよ。」
幼馴染を振り切って逃げるくらい朝飯前。
幼馴染には、門限がある。
自分のとこの領地にいる俺には門限なんてない。
スタートダッシュとジグザグ走りを駆使して、幼馴染の帰る時間まで逃げ切ったらいいだけ。
マラソンはやったことがないけれど、追いかけっこなら、俺は負けない。
「今から離すけれど、忘れないでよ?」
と幼馴染。
「何をだよ?」
「俺から離れたり、逃げたりしないということ。」
と幼馴染。
「分かった。分かったから。」
「離すよ?」
と幼馴染。
離れた!
俺は、ばっと身を翻したかった。
でも我慢した。
幼馴染は、俺の真正面にいて、俺の出方をうかがっている。
今、幼馴染に背中を向けるのは早計。
スズメバチと遭遇したときは、後退りしろと前世で言われたことがある。
今、俺は、スズメバチに遭遇したとき並に警戒して幼馴染と向き合っている。
「逃げないね?」
と幼馴染。
じっと真正面から俺を見つめてくる幼馴染。
「逃げていないだろう?」
今は、まだ。
逃げるときじゃない。
粘れ、俺。
「先に歩いていくけど、俺についてこられるよね?」
と幼馴染。
幼馴染の青い瞳の中に、俺が映り込んでいるのが見えた。
俺は、大きく息を吸って吐く。
「いけるよ。」
ニコッと笑う幼馴染。
瞳の中が覗けるほどの至近距離で幼馴染の顔を見るのも、今日で最後だ。
掌にかいた汗をそっとズボンで拭き。
俺は、待った。
幼馴染が俺に背中を見せて先に歩き出すのを。
一歩、二歩。
幼馴染が歩き出す。
鍛えられた体にまとっているシャツの裾が揺れている。
風が吹いて、幼馴染の金色の髪を通り抜けていく。
俺はまだじっとしていた。
二歩の間隔くらいじゃ、追いかけられたら俺は逃げ切れない。
捕まらないためには、五歩くらいの間隔がほしい。
三歩、四歩。
幼馴染がくるりと振り返った。
手を離した位置から一歩も動いていない俺の全身を穴が開くくらい強く見てくる。
「お前は俺についてくるんだよね?」
と幼馴染。
これ以上は引っ張れない。
俺は、幼馴染に背を向ける。
返事はしなかった。
一目散に、辺境伯家の護衛がいない方向へ走り出す。
辺境伯家の護衛に捕まったら、幼馴染に捕まるより洒落にならない。
辺境伯家の護衛には、辺境伯家の次男である幼馴染が俺に何を言ったかが聞こえている。
辺境伯家の次男の幼馴染に口約束をして念押しまでされておきながら、約束を破って逃げ出したとなると。
辺境伯家の護衛も黙って見ているだけでは済ませてくれない。
俺は、残りの人生を幼馴染のベッドで寝起きする人生にはしない!
次世代最強の呼び名を持つ幼馴染と同じ時代を生きることを喜び。
幼馴染のお隣の領地で、領地を守る一助になると決めて、今日まで俺は生きてきた。
幼馴染と遊ぶのが、今日で最後になったとしても。
幼馴染が元気に活躍する話を聞きながら生きていければ、俺はそれでいい。
何にもない土地を治める男爵家の三男に異世界転生した俺は、家族と幼馴染に恵まれた生まれに感謝しているんだ。
大活躍はできなくていいから。
俺にできる地道な努力で、今の俺を育んでくれた人達の暮らしを守って生きたい。
幼馴染の伴侶とかいう、たいそうなものは求めていないんだ。
隣の領地に住む一人の男として、幼馴染が活躍する土台になる。
異世界転生してきた俺にとっての最高な人生は、辺境伯の次男と幼馴染になったことから始まった。
お前の幼馴染だというだけで、お前に守られ、庇われ続けているのに何も返せないままでいいとは思っていないんだよ。
お前の人生の役に立つ形でこの生を全うしたい。
頼むから、逃げ出す俺を捕まえずに見送って。
辺境伯家に気をつけて帰ってくれよ。
ドラゴンと一緒に。
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