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7.初恋の重さ。逃げるなら捕まる。捕まえたら離さない。逃さない。お前の幼馴染ではいてやれない、と言う幼馴染の吐息が熱い。
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走り出した足の前に足が出てきた。
足を引っかけられた、と思った。
転びそうになったときには、前に回り込まれていた。
ドンと、真正面からぶつかる。
俺は、急いで体を離そうとした。
俺がぶつかっても、おっとっと、とならない体幹の持ち主の胸板に正面から飛び込んだ形になっている俺。
「逃げたね?」
と幼馴染。
耳にかぶりつけるほどの距離から、幼馴染の声が聞こえてくる。
く、食われそう。
ヒッとなったけれど、怯えている暇はない。
逃げたとバレたなら。
逃げ切らないと。
幼馴染の胸板を突っぱねようとした俺は、手首が自由なことに気付いた。
俺の手首は掴まれていない。
じゃあ、何で、俺は動けなくなっている?
目の前には、幼馴染の胸板。
抱き込まれている距離感。
今までこんな近かったことなんてなかった。
顔を上げると、幼馴染の顔が目に入ってしまう。
顔は上げたくない。
手を離してもついていく、と約束したのに約束を破った俺を捕まえた幼馴染は、今、どんな表情をしているんだろう?
幼馴染の顔を直視できない。
言い訳をしないといけないのに、言い訳が思いつかない。
目と目が合えば、運命の恋、となるほど恋愛体質じゃない俺には。
剥き出しの牙に引っ掛けられて餌場につれていかれる自分の姿が想像できてしまう。
牙を隠した猛獣の尻尾を踏んだ気分。
幼馴染は、目を合わせてはいけないと思うくらい、じっと見つめてくる。
幼馴染の視界から外れたい、切実に。
幼馴染の胸板から距離をとろうと、体を捻って気がついた。
俺、両腕を掴まれている。
掴んでいる手に力が込められていなかったために、掴まれていると分からなかった。
幼馴染にとっては、塩をひとつまみつまむくらいの力加減。
「離せ。」
「離したら逃げたよね。」
と幼馴染。
約束を破って逃げたから離さないんだよ?
そんな言葉が聞こえてきそうなくらい、甘くて優しげな声。
俺相手に、甘い声で語りかけなくてもいいんだよ。
「それは。逃げないわけにはいかない状況だったから。」
「俺が手を離したら逃げるんだよね?なら、なおさら掴んでおかないと。」
と幼馴染。
「幼馴染だと思っている男にプロポーズされて家においでムーブかまされてみろ!逃げるだろ!」
俺は、お前のプロポーズを断っているんだから。
「お前が好きだよ。」
と幼馴染。
耳たぶをカプッとされそうなくらいに口を近付けてくるなよ。
「どうして俺に好きだなんて。」
「恋に落ちるのに、理由がいる?」
と幼馴染。
「人によるとは思うけれど。」
俺の初恋は、前世の小学校の入学式で優しくしてくれた上級生だった。
新一年生一人一人の名前を呼び、お祝いの造花を一本ずつ手に持って、おめでとうと言いながら、名札の横に飾ってくれる六年生のお姉さんがドンピシャだった俺は、入学後、六年生の教室の前の廊下をうろうろしていた。
俺は、優しくされたら好きになってしまう性格なんだよ。
お前は、俺に優しくなんかするんじゃない。
「お前、初恋の経験があるんだ?」
と幼馴染。
幼馴染の声は、こころもち低くなった。
「そりゃ、生きていれば。」
前世の話だけど。
「俺、お前の初恋を把握していないんだけど?」
と幼馴染。
いくら毎日のように遊んでいた幼馴染でも、初恋を把握されているのはちょっと。
「把握しなくてもいいだろう?」
そもそも、俺の前世にお前はいなかった。
「誰?いつ?」
と幼馴染。
「普段は秘めておいて、思い出したときに甘酸っぱいなと感じるまでが、初恋なんだよ。」
「お前のことは何でも知っておきたい。」
と幼馴染。
その知りたい気持ちは、好奇心から?
それとも、俺のことが好きという恋心から?
「初恋なんて実らないものなんだ。お前は知らなくてもいいよ。」
話す気なんてない。
「初恋は実らないとお前に言ったのは誰?」
と幼馴染。
幼馴染の声が、一段、低くなった。
「誰でもいいだろう。」
前世で見た映画の挿入歌の歌詞にあったんだ。
前世の話をする気はないから、この話も広げない。
「良くない。お前の周りに、お前に間違ったことを教えた者がいる。」
と幼馴染。
「初恋に関しては、間違ってはいないから。」
俺の初恋は実らなかったんだよ。
「お前に間違った刷り込みをした者を見つけ出さないと。」
と幼馴染。
見つけ出したら何をする気だよ?
「風の噂だったかな。」
「どこから吹いてきた風だった?」
と幼馴染。
深堀りしないで聞き流してほしい。
「初恋が実ろうが実るまいが、俺達とは縁のない話だろう?」
「縁のない話じゃないよ。」
と幼馴染。
「そうかなあ。」
「俺の初恋は、お前だから。」
と幼馴染。
息をし忘れるところだったよ。
「俺、初恋を体が大人になる前の淡い思いと思っていたんだけど。」
「始まりは淡い思いだったけれど、もう淡くはない。」
と幼馴染。
「淡くなくなって、今は、そのう?」
おかずにしていた、と。
「独り占めしたい。」
と幼馴染。
俺を独り占めしたがるのは、お前だけだよ。
「俺を独り占めするのは、その、急がなくても。」
幼馴染はいつから俺が好きだったんだろう?
分からなかったよ。
一緒に遊ぶのが楽しいという感情で幼馴染を見てきたから。
「独り占めするための準備は、終わらせたよ。」
と幼馴染。
「へ、へえ。」
どんな準備をしてきたのかを聞く方がいいのか、聞かない方がいいのか。
「俺から逃さないよ。」
と幼馴染。
ひときわ低い声が鼓膜を震わせてくる。
「ひい。」
俺は幼馴染の胸板にぺとっと張り付いた状態で、悲鳴をあげていた。
「返事は?」
と幼馴染。
俺の肩の上に顎を乗せて、俺の横顔を凝視するのは止めろよ。
怖いから。
「俺の返事が必要な会話なんてしている?」
俺は声を絞り出した。
プロポーズを断ったから?
約束を破って逃げ出したから?
俺は何かを間違えた?
「一生離さないよ。」
と幼馴染。
「恐ろしい予告は止めろ。」
「お前、俺から離れて生きていこうとはしていないよね?」
と幼馴染。
安易に口約束をしてはいけないと俺は学習済み。
「大丈夫。人は生まれてくるときも死ぬときも一人。」
「死ぬときは一緒がいいって?」
と幼馴染。
それ、心中のお誘い?
「別々でお願いします。」
心中の誓いなんて、たてたくない!
「死ぬときは別々がいいというお前のお願いは叶えてあげるよ。」
と幼馴染。
「あ、ありがとう。」
ありがとう、で合っている?
「生きている間はずっと一緒にいたいという俺の願いは、お前が叶えるんだよ?」
と幼馴染。
ぎゃー。
なんか怖いのきた!
「俺、別にそういうつもりで言ったわけじゃ。」
「俺、お前と一緒にいられない時間は、お前と生きている時間には加算しないよ?」
と幼馴染。
ヒィ。
「物心がついた頃には、俺とお前って、だいたい一緒にいたと思うんだけど。」
懐柔しよう、そうしよう!
「お前といると、生きていることを実感するよね。」
と幼馴染。
どうしよう、懐柔できていない!
「別々にいた時間もあったけれど問題なかったんだから、これからも、同じやり方をすれば。」
「俺が限界なんだ。」
と幼馴染。
「何が?」
「お前と離れていることが。」
と幼馴染。
俺は、お隣の領地に住んでいるだけの男だよ?
「何の限界がきたんだよ?」
「お前を抱きたい。朝から晩までだけでなく、翌朝まで。」
と幼馴染。
どれだけ長い妄想をしているんだよ。
「俺とお前は、幼馴染で。」
大人になってこの関係が変わるなんて想像したことなかったよ。
「俺は、お前の幼馴染のままでいてはやれない。」
と幼馴染。
「俺を意識させるために、俺に結婚を迫ったのかよ?」
「結婚して毎日お前を抱きたい気持ちに偽りはない。」
と幼馴染。
熱のこもった吐息が耳にかかる。
「ひとまず、その性欲を発散してから考えるのがいいと思うんだ。」
「好きだから抱きたい。一つに繋がりたいんだよ。」
と幼馴染。
ブレないのは性欲?
それとも一途さのあらわれ?
「おかずは性癖であって、愛情とはまた別物では?」
筋肉フェチの結婚相手が、筋骨隆々とは限らないだろ?
「俺は一途だよ。お前一筋だ。」
と幼馴染。
幼馴染を性の対象として見たことがない俺には踏み込めない分野だ。
どうしよう?
「他に試してみたら意外に勃ったり?」
「他では試さない。」
と幼馴染。
ぴしゃりと一言。
優しくて綺麗なお姉さんなら、ムクムクするかもよ、と付け足さなくて正解だった。
「おかずの幅を広げてみようとは?」
「俺はお前だけだ。お前をおかずにして妄想するよりも、現実のお前を抱きたい。」
と幼馴染。
足を引っかけられた、と思った。
転びそうになったときには、前に回り込まれていた。
ドンと、真正面からぶつかる。
俺は、急いで体を離そうとした。
俺がぶつかっても、おっとっと、とならない体幹の持ち主の胸板に正面から飛び込んだ形になっている俺。
「逃げたね?」
と幼馴染。
耳にかぶりつけるほどの距離から、幼馴染の声が聞こえてくる。
く、食われそう。
ヒッとなったけれど、怯えている暇はない。
逃げたとバレたなら。
逃げ切らないと。
幼馴染の胸板を突っぱねようとした俺は、手首が自由なことに気付いた。
俺の手首は掴まれていない。
じゃあ、何で、俺は動けなくなっている?
目の前には、幼馴染の胸板。
抱き込まれている距離感。
今までこんな近かったことなんてなかった。
顔を上げると、幼馴染の顔が目に入ってしまう。
顔は上げたくない。
手を離してもついていく、と約束したのに約束を破った俺を捕まえた幼馴染は、今、どんな表情をしているんだろう?
幼馴染の顔を直視できない。
言い訳をしないといけないのに、言い訳が思いつかない。
目と目が合えば、運命の恋、となるほど恋愛体質じゃない俺には。
剥き出しの牙に引っ掛けられて餌場につれていかれる自分の姿が想像できてしまう。
牙を隠した猛獣の尻尾を踏んだ気分。
幼馴染は、目を合わせてはいけないと思うくらい、じっと見つめてくる。
幼馴染の視界から外れたい、切実に。
幼馴染の胸板から距離をとろうと、体を捻って気がついた。
俺、両腕を掴まれている。
掴んでいる手に力が込められていなかったために、掴まれていると分からなかった。
幼馴染にとっては、塩をひとつまみつまむくらいの力加減。
「離せ。」
「離したら逃げたよね。」
と幼馴染。
約束を破って逃げたから離さないんだよ?
そんな言葉が聞こえてきそうなくらい、甘くて優しげな声。
俺相手に、甘い声で語りかけなくてもいいんだよ。
「それは。逃げないわけにはいかない状況だったから。」
「俺が手を離したら逃げるんだよね?なら、なおさら掴んでおかないと。」
と幼馴染。
「幼馴染だと思っている男にプロポーズされて家においでムーブかまされてみろ!逃げるだろ!」
俺は、お前のプロポーズを断っているんだから。
「お前が好きだよ。」
と幼馴染。
耳たぶをカプッとされそうなくらいに口を近付けてくるなよ。
「どうして俺に好きだなんて。」
「恋に落ちるのに、理由がいる?」
と幼馴染。
「人によるとは思うけれど。」
俺の初恋は、前世の小学校の入学式で優しくしてくれた上級生だった。
新一年生一人一人の名前を呼び、お祝いの造花を一本ずつ手に持って、おめでとうと言いながら、名札の横に飾ってくれる六年生のお姉さんがドンピシャだった俺は、入学後、六年生の教室の前の廊下をうろうろしていた。
俺は、優しくされたら好きになってしまう性格なんだよ。
お前は、俺に優しくなんかするんじゃない。
「お前、初恋の経験があるんだ?」
と幼馴染。
幼馴染の声は、こころもち低くなった。
「そりゃ、生きていれば。」
前世の話だけど。
「俺、お前の初恋を把握していないんだけど?」
と幼馴染。
いくら毎日のように遊んでいた幼馴染でも、初恋を把握されているのはちょっと。
「把握しなくてもいいだろう?」
そもそも、俺の前世にお前はいなかった。
「誰?いつ?」
と幼馴染。
「普段は秘めておいて、思い出したときに甘酸っぱいなと感じるまでが、初恋なんだよ。」
「お前のことは何でも知っておきたい。」
と幼馴染。
その知りたい気持ちは、好奇心から?
それとも、俺のことが好きという恋心から?
「初恋なんて実らないものなんだ。お前は知らなくてもいいよ。」
話す気なんてない。
「初恋は実らないとお前に言ったのは誰?」
と幼馴染。
幼馴染の声が、一段、低くなった。
「誰でもいいだろう。」
前世で見た映画の挿入歌の歌詞にあったんだ。
前世の話をする気はないから、この話も広げない。
「良くない。お前の周りに、お前に間違ったことを教えた者がいる。」
と幼馴染。
「初恋に関しては、間違ってはいないから。」
俺の初恋は実らなかったんだよ。
「お前に間違った刷り込みをした者を見つけ出さないと。」
と幼馴染。
見つけ出したら何をする気だよ?
「風の噂だったかな。」
「どこから吹いてきた風だった?」
と幼馴染。
深堀りしないで聞き流してほしい。
「初恋が実ろうが実るまいが、俺達とは縁のない話だろう?」
「縁のない話じゃないよ。」
と幼馴染。
「そうかなあ。」
「俺の初恋は、お前だから。」
と幼馴染。
息をし忘れるところだったよ。
「俺、初恋を体が大人になる前の淡い思いと思っていたんだけど。」
「始まりは淡い思いだったけれど、もう淡くはない。」
と幼馴染。
「淡くなくなって、今は、そのう?」
おかずにしていた、と。
「独り占めしたい。」
と幼馴染。
俺を独り占めしたがるのは、お前だけだよ。
「俺を独り占めするのは、その、急がなくても。」
幼馴染はいつから俺が好きだったんだろう?
分からなかったよ。
一緒に遊ぶのが楽しいという感情で幼馴染を見てきたから。
「独り占めするための準備は、終わらせたよ。」
と幼馴染。
「へ、へえ。」
どんな準備をしてきたのかを聞く方がいいのか、聞かない方がいいのか。
「俺から逃さないよ。」
と幼馴染。
ひときわ低い声が鼓膜を震わせてくる。
「ひい。」
俺は幼馴染の胸板にぺとっと張り付いた状態で、悲鳴をあげていた。
「返事は?」
と幼馴染。
俺の肩の上に顎を乗せて、俺の横顔を凝視するのは止めろよ。
怖いから。
「俺の返事が必要な会話なんてしている?」
俺は声を絞り出した。
プロポーズを断ったから?
約束を破って逃げ出したから?
俺は何かを間違えた?
「一生離さないよ。」
と幼馴染。
「恐ろしい予告は止めろ。」
「お前、俺から離れて生きていこうとはしていないよね?」
と幼馴染。
安易に口約束をしてはいけないと俺は学習済み。
「大丈夫。人は生まれてくるときも死ぬときも一人。」
「死ぬときは一緒がいいって?」
と幼馴染。
それ、心中のお誘い?
「別々でお願いします。」
心中の誓いなんて、たてたくない!
「死ぬときは別々がいいというお前のお願いは叶えてあげるよ。」
と幼馴染。
「あ、ありがとう。」
ありがとう、で合っている?
「生きている間はずっと一緒にいたいという俺の願いは、お前が叶えるんだよ?」
と幼馴染。
ぎゃー。
なんか怖いのきた!
「俺、別にそういうつもりで言ったわけじゃ。」
「俺、お前と一緒にいられない時間は、お前と生きている時間には加算しないよ?」
と幼馴染。
ヒィ。
「物心がついた頃には、俺とお前って、だいたい一緒にいたと思うんだけど。」
懐柔しよう、そうしよう!
「お前といると、生きていることを実感するよね。」
と幼馴染。
どうしよう、懐柔できていない!
「別々にいた時間もあったけれど問題なかったんだから、これからも、同じやり方をすれば。」
「俺が限界なんだ。」
と幼馴染。
「何が?」
「お前と離れていることが。」
と幼馴染。
俺は、お隣の領地に住んでいるだけの男だよ?
「何の限界がきたんだよ?」
「お前を抱きたい。朝から晩までだけでなく、翌朝まで。」
と幼馴染。
どれだけ長い妄想をしているんだよ。
「俺とお前は、幼馴染で。」
大人になってこの関係が変わるなんて想像したことなかったよ。
「俺は、お前の幼馴染のままでいてはやれない。」
と幼馴染。
「俺を意識させるために、俺に結婚を迫ったのかよ?」
「結婚して毎日お前を抱きたい気持ちに偽りはない。」
と幼馴染。
熱のこもった吐息が耳にかかる。
「ひとまず、その性欲を発散してから考えるのがいいと思うんだ。」
「好きだから抱きたい。一つに繋がりたいんだよ。」
と幼馴染。
ブレないのは性欲?
それとも一途さのあらわれ?
「おかずは性癖であって、愛情とはまた別物では?」
筋肉フェチの結婚相手が、筋骨隆々とは限らないだろ?
「俺は一途だよ。お前一筋だ。」
と幼馴染。
幼馴染を性の対象として見たことがない俺には踏み込めない分野だ。
どうしよう?
「他に試してみたら意外に勃ったり?」
「他では試さない。」
と幼馴染。
ぴしゃりと一言。
優しくて綺麗なお姉さんなら、ムクムクするかもよ、と付け足さなくて正解だった。
「おかずの幅を広げてみようとは?」
「俺はお前だけだ。お前をおかずにして妄想するよりも、現実のお前を抱きたい。」
と幼馴染。
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