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8.辺境伯家は元々?辺境伯家のお隣の男爵家って?王女が降嫁する話を潰したと幼馴染は言う。お前を害する予定がある人間を好きになろうとは思わない
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初恋が俺で、俺で精通して、俺をおかずにしてきたとのたまう幼馴染が、俺を主食にして、俺と結婚したいと言っている。
全部ほしいのが恋で、与えたくなるのが愛だと歌っていたのは、誰だった?
幼馴染の欲しいものも夢も希望も、俺にできることなら与えたり叶えたりしてみたい。
けれど。
「俺には、お前といつも一緒にいられる程の強さも地位も権力もないんだ。現実を見ろ。」
貴族社会の中でも、絶対的な上位貴族の次男の幼馴染と、吹けばとぶような男爵家の三男の俺が結婚したら、ますます俺がしてもらうばかりになる。
俺として俺らしく、幼馴染の力になれる場所にいたいんだよ。
「お前の今言った問題は全部、プロポーズする前に解決してきた。」
と幼馴染。
んん?
「解決済み?」
意を決して伝えたのに?
「俺達が一緒になることの気がかりはなくしたよ。」
と幼馴染。
やったー、じゃあ結婚する、とはならないよ?
「だって、お前。」
「何?」
と幼馴染。
「王女様がお前に降嫁されるという話は?」
「何それ?」
と幼馴染。
「お前に王女様が降嫁してくる話。」
「俺に降嫁させるなんて、ふざけた話はなしにしたよ。」
と幼馴染。
「なしにした?」
そんなことが可能なのかも、男爵家三男の俺にはさっぱり分からない。
「俺に王女を娶れということは、兄が継ぐはずの家督を次男の俺が奪えということだから、その話は潰した。」
と幼馴染。
王家は、辺境伯家にお家騒動を起こそうとしていた?
「王女の降嫁先を跡継ぎのお兄さんにしておけば。」
「王家は、俺しか目に入っていない。」
と幼馴染。
わあ。失礼な話だ。
「辺境伯家の跡継ぎのお兄さんを排除して、次代最強と呼ばれている次男を跡継ぎにと王家はおしたんだ?」
「王女を娶った最強の男を辺境伯にしたら、怖いものなしとふんでいたんだよ。」
と幼馴染。
次の王様の最初の仕事は、辺境伯家との関係性の再構築?
「お前に限らず、辺境伯家に王女を娶る利点は?」
「王女が辺境伯の妻になるうまみは、王家と王女にしかない。」
と幼馴染。
「えー。」
「辺境伯の妻として血を繋ぐことを求められる王女は、辺境伯家に輿入れしても、辺境伯家の人間と同じ場所には立たない。
一生を安全地帯で過ごす。」
と幼馴染。
「王女につける人員や物資、王女のために使うお金、時間について王家からの支援は?」
「王女が降嫁したときの持ち物以外は、辺境伯家が負担する。」
と幼馴染。
「王女が辺境伯家に降嫁する意味って?」
「人格者の王女は、持ち物から用立てたり、政治的な根回しを担当してくださったり奔走して辺境伯家を支えてくれた記録が残っている。」
そのときの王女によるんかーい。
「お前に降嫁予定だった王女は?」
「俺にもお前にも、辺境伯家にも男爵家にも不要な存在だったよ。」
と幼馴染。
「好きになれなかった?」
「お前を害する予定がある人間を好きになろうとは思わない。」
と幼馴染。
「俺を害するって。俺はまだ、何も。」
「辺境伯家が王女を娶ったときに一番損害を受ける家は、辺境伯家の隣の男爵家のお前の家だ。」
と幼馴染。
幼馴染は真剣だ。
分かっているよ。
「俺の家が治める領地の貴族と領民は、王女様が安全地帯にいられるように動くことを義務付けられているから。」
「王女の降嫁がある代だけ、辺境伯家の隣の領地を治める家の当主と跡継ぎと跡継ぎの補佐の若死に率が跳ね上がる。」
と幼馴染。
俺と幼馴染が子どもの時分から王女降嫁の噂は、俺の耳にも届いていた。
「王女の降嫁は、国境が荒れそうな時期に、辺境伯家が王家から離反するのを防ぐ目的でするものだと思っていたんだけど、違った?」
辺境伯家に支援するために王女を降嫁させるわけじゃないと知ったときは、衝撃を受けたよ。
今でこそ、辺境伯家と呼ばれてはいるけれど、元は別の国で、この国の王女がお輿入れするときに、辺境伯としてこの国の貴族になった。
辺境伯家は、元々、お隣の王国の貴族だった。
お隣の国の王家との間に問題が起きて揉めていたところに、うちの国が王女を輿入れさせるからうちの貴族になれ、と言い寄った歴史がある。
王家が辺境伯家を警戒しているのは、辺境伯家には、元の国の王家と揉めてうちの貴族になったという経緯から。
隣の国で起きたことと同じことがこの国でも起こるのではないか?
元は、うちの国が誘ったから、うちの貴族になったというのに。
誘いに応えてくれた人達の子孫を誘った子孫は信じていない。
疑心暗鬼に凝り固まった人達が政治の中枢で力を持ち、王家もそちらに寄ったか染まったかと見られている。
辺境伯家は、不都合が生じたら王家を裏切ると王家から思われている中で、辺境伯をやってくれている。
辺境伯家に報いてくれる王様はときどきいるみたいだけど、次の代には反動がくる。
辺境伯家の力と歴史と、辺境伯家の人達に恐れをなしている人達はこの国にたくさんいる。
恐れをなして、手ひどく扱おうとなるところが俺には理解不能。
「普段王都にいて、辺境伯家に来てからも王女の周りの安全確保を優先するようなものは、辺境伯の戦力じゃない。」
と幼馴染。
「王女と一緒についてくる人は、辺境伯家を偵察し、離反の動きがないか調べるための人員なんだ?」
「武力が必要な場所に、使えない戦力を寄越されたら迷惑。」
と幼馴染。
「跡継ぎを後退させることを見込んでの王女の降嫁なんて愚策をよく思いついたよ。」
「王女の降嫁に合わせて戦の口火がきられたときに割を食うのは、辺境伯家でも王女でも王家でもない。
辺境伯家の隣の何もない男爵家と男爵領だ。」
と幼馴染。
力のない男爵家だから、俺も俺の家族も、王家からの扱いを粛々と受け入れる以外に生きていく道がない。
そんな俺と俺の家族のために、幼馴染は怒ってくれているんだ。
「うちの家も俺も、辺境伯家によくしてもらっているよ。」
うちの男爵家が治めている領地は、王家と辺境伯家に都合よく使われるためにある土地だ。
辺境伯の次男の遊び友達が、男爵家次男の兄ではなく、三男の俺だったのは、次男の遊び友達から始めて、自力で出世する機会を与えてやろうというありがたい辺境伯のお心遣いからだった、と聞いている。
前世の感覚と子どもの感情とがごちゃ混ぜになっていたせいで、貴族の常識が抜け落ちがちな男児だった俺は、大きくなってから辺境伯のお心遣いを聞いた。
何が不敬か分からないうちは、辺境伯家以外の偉い人達の前には出ていってはいけないと家族に言われているので、パーティーのような場所には出たことがない。
辺境伯家のパーティーなら大丈夫かと思って準備していたら、王家からご参加という人が、ふらっと現れて肝を冷やし、出席しないで帰ったこともある。
「お前のうちの領地が何もないのは、何もない場所でないと辺境伯家に降嫁される王女が好き放題できないからだ。」
と幼馴染。
知っているよ。
「うちの領地にある金目の設備は、辺境伯家に降嫁された王女が戦時中も快適にお過ごしになられるようにと王家が王女用に用意したものだよ。」
王女用の設備は、男爵家も男爵領民も使えない。
王女のために王家が金をかけた設備が使えなくなることがないように、男爵家は領民を雇い、王女用の設備の掃除したりメンテナンスしたりしている。
「お前の家が治める領地は、辺境伯家のドラゴンが自由に移動できるようにと、領地の開発にも制限がかかり、戦時中になれば一番最初に備蓄の供出を求められる。」
と幼馴染。
「うちの領地を治める貴族がときどき入れ替わるのは、うちの領地に避難されてきた王女様を守り抜けば、豊かな領地への領地替えを提案されるからだよ。」
「領地替えのときに新しい領地のランクの決め手は、王女の口添えだ。」
と幼馴染。
「この領地の領主を任ずる権限は国ではなく、国王陛下にあるから。」
「避難中の王女の不興を買った場合、領地替えどころか、貴族社会から追われることもある。」
と幼馴染。
「その代わりに平時の負担はないに等しい。辺境伯家の隣を治める男爵家は、税金が免除されるんだ。」
「男爵家の収入で税金を納めたら、領地経営は不可能だ。
貴族としての体裁も保てないだろう。」
と幼馴染。
男爵家のことを俺よりもよく知っていたりして。
「辺境伯家の常日頃からの支援には感謝しかないよ。
辺境伯家がうちを大事にしてくれているから、うちは貴族としてやってこられた。」
貴族として引き立ててくれて、俺が死なないようにもしてくれた。
「お前のお兄さん達の嫁探しが難航していることは理解している?」
と幼馴染。
「なかなか見つからないとは聞いているよ。」
「辺境伯家当主交代と、王女の降嫁を行うと張り切っているやつらが王都にはいる。」
と幼馴染。
「王女様の避難先となる男爵家は、お預かりする準備もままならないまま、王女様に滞在いただくことになるよ?」
「戦が始まったら、王女の滞在までに何もかもが間に合わない。」
と幼馴染。
「うん、お母さん以外の女主人がいない今の男爵家に、王女が満足するような接待はできないよ。」
「戦が終わった後、王女がどんな口添えをするか。
そんなことは、もう、分かりきっている。」
と幼馴染。
「王女様の不興を買って落ちぶれることが分かっている男爵家の長男と次男へ嫁を出したい貴族家なんて、いない。」
「お兄さん達の婚約者探しは暗礁に乗り上げている。」
と幼馴染。
「うちの家の先行きが思ったり悪くて、慌てるんだけど。」
「王女が辺境伯家に降嫁しなければ、いいだけの話なんだよ。」
と幼馴染。
「だから、王女様の降嫁話を潰したんだ?」
「辺境伯家とお前の家を不幸にすることしか頭にないやつらには従わない。」
と幼馴染。
「ありがとう。」
「辺境伯家とお前の家を両方不幸にしないやり方で、俺は国を守る。」
と幼馴染。
「俺も俺にできることをしたい。」
「俺と一緒に、俺とお前のやり方で国を守ろう。」
と幼馴染。
「勿論。」
「結婚しよう。」
と幼馴染。
今、再プロポーズの場面だったかな?
「お前と結婚しなくても、俺はお前と一緒に国を守る。」
「俺が戦うときは、戦えば、俺の大事なものを幸せにできるという確信があるときだけだよ。」
と幼馴染。
なんてこと言うんだよ。
「自分の幸せを追求するのは、人が生きていく上での本能だよ。
お前には、お前自身が幸せであることを重視してほしい。」
「俺の幸せは、お前と結婚して一生一緒に生きることだよ。」
と幼馴染。
満面の笑みを浮かべる幼馴染と、言葉に詰まる俺。
「えーと、あの。」
「今日結婚して、今夜から俺に抱かれてほしい。」
と幼馴染。
全部ほしいのが恋で、与えたくなるのが愛だと歌っていたのは、誰だった?
幼馴染の欲しいものも夢も希望も、俺にできることなら与えたり叶えたりしてみたい。
けれど。
「俺には、お前といつも一緒にいられる程の強さも地位も権力もないんだ。現実を見ろ。」
貴族社会の中でも、絶対的な上位貴族の次男の幼馴染と、吹けばとぶような男爵家の三男の俺が結婚したら、ますます俺がしてもらうばかりになる。
俺として俺らしく、幼馴染の力になれる場所にいたいんだよ。
「お前の今言った問題は全部、プロポーズする前に解決してきた。」
と幼馴染。
んん?
「解決済み?」
意を決して伝えたのに?
「俺達が一緒になることの気がかりはなくしたよ。」
と幼馴染。
やったー、じゃあ結婚する、とはならないよ?
「だって、お前。」
「何?」
と幼馴染。
「王女様がお前に降嫁されるという話は?」
「何それ?」
と幼馴染。
「お前に王女様が降嫁してくる話。」
「俺に降嫁させるなんて、ふざけた話はなしにしたよ。」
と幼馴染。
「なしにした?」
そんなことが可能なのかも、男爵家三男の俺にはさっぱり分からない。
「俺に王女を娶れということは、兄が継ぐはずの家督を次男の俺が奪えということだから、その話は潰した。」
と幼馴染。
王家は、辺境伯家にお家騒動を起こそうとしていた?
「王女の降嫁先を跡継ぎのお兄さんにしておけば。」
「王家は、俺しか目に入っていない。」
と幼馴染。
わあ。失礼な話だ。
「辺境伯家の跡継ぎのお兄さんを排除して、次代最強と呼ばれている次男を跡継ぎにと王家はおしたんだ?」
「王女を娶った最強の男を辺境伯にしたら、怖いものなしとふんでいたんだよ。」
と幼馴染。
次の王様の最初の仕事は、辺境伯家との関係性の再構築?
「お前に限らず、辺境伯家に王女を娶る利点は?」
「王女が辺境伯の妻になるうまみは、王家と王女にしかない。」
と幼馴染。
「えー。」
「辺境伯の妻として血を繋ぐことを求められる王女は、辺境伯家に輿入れしても、辺境伯家の人間と同じ場所には立たない。
一生を安全地帯で過ごす。」
と幼馴染。
「王女につける人員や物資、王女のために使うお金、時間について王家からの支援は?」
「王女が降嫁したときの持ち物以外は、辺境伯家が負担する。」
と幼馴染。
「王女が辺境伯家に降嫁する意味って?」
「人格者の王女は、持ち物から用立てたり、政治的な根回しを担当してくださったり奔走して辺境伯家を支えてくれた記録が残っている。」
そのときの王女によるんかーい。
「お前に降嫁予定だった王女は?」
「俺にもお前にも、辺境伯家にも男爵家にも不要な存在だったよ。」
と幼馴染。
「好きになれなかった?」
「お前を害する予定がある人間を好きになろうとは思わない。」
と幼馴染。
「俺を害するって。俺はまだ、何も。」
「辺境伯家が王女を娶ったときに一番損害を受ける家は、辺境伯家の隣の男爵家のお前の家だ。」
と幼馴染。
幼馴染は真剣だ。
分かっているよ。
「俺の家が治める領地の貴族と領民は、王女様が安全地帯にいられるように動くことを義務付けられているから。」
「王女の降嫁がある代だけ、辺境伯家の隣の領地を治める家の当主と跡継ぎと跡継ぎの補佐の若死に率が跳ね上がる。」
と幼馴染。
俺と幼馴染が子どもの時分から王女降嫁の噂は、俺の耳にも届いていた。
「王女の降嫁は、国境が荒れそうな時期に、辺境伯家が王家から離反するのを防ぐ目的でするものだと思っていたんだけど、違った?」
辺境伯家に支援するために王女を降嫁させるわけじゃないと知ったときは、衝撃を受けたよ。
今でこそ、辺境伯家と呼ばれてはいるけれど、元は別の国で、この国の王女がお輿入れするときに、辺境伯としてこの国の貴族になった。
辺境伯家は、元々、お隣の王国の貴族だった。
お隣の国の王家との間に問題が起きて揉めていたところに、うちの国が王女を輿入れさせるからうちの貴族になれ、と言い寄った歴史がある。
王家が辺境伯家を警戒しているのは、辺境伯家には、元の国の王家と揉めてうちの貴族になったという経緯から。
隣の国で起きたことと同じことがこの国でも起こるのではないか?
元は、うちの国が誘ったから、うちの貴族になったというのに。
誘いに応えてくれた人達の子孫を誘った子孫は信じていない。
疑心暗鬼に凝り固まった人達が政治の中枢で力を持ち、王家もそちらに寄ったか染まったかと見られている。
辺境伯家は、不都合が生じたら王家を裏切ると王家から思われている中で、辺境伯をやってくれている。
辺境伯家に報いてくれる王様はときどきいるみたいだけど、次の代には反動がくる。
辺境伯家の力と歴史と、辺境伯家の人達に恐れをなしている人達はこの国にたくさんいる。
恐れをなして、手ひどく扱おうとなるところが俺には理解不能。
「普段王都にいて、辺境伯家に来てからも王女の周りの安全確保を優先するようなものは、辺境伯の戦力じゃない。」
と幼馴染。
「王女と一緒についてくる人は、辺境伯家を偵察し、離反の動きがないか調べるための人員なんだ?」
「武力が必要な場所に、使えない戦力を寄越されたら迷惑。」
と幼馴染。
「跡継ぎを後退させることを見込んでの王女の降嫁なんて愚策をよく思いついたよ。」
「王女の降嫁に合わせて戦の口火がきられたときに割を食うのは、辺境伯家でも王女でも王家でもない。
辺境伯家の隣の何もない男爵家と男爵領だ。」
と幼馴染。
力のない男爵家だから、俺も俺の家族も、王家からの扱いを粛々と受け入れる以外に生きていく道がない。
そんな俺と俺の家族のために、幼馴染は怒ってくれているんだ。
「うちの家も俺も、辺境伯家によくしてもらっているよ。」
うちの男爵家が治めている領地は、王家と辺境伯家に都合よく使われるためにある土地だ。
辺境伯の次男の遊び友達が、男爵家次男の兄ではなく、三男の俺だったのは、次男の遊び友達から始めて、自力で出世する機会を与えてやろうというありがたい辺境伯のお心遣いからだった、と聞いている。
前世の感覚と子どもの感情とがごちゃ混ぜになっていたせいで、貴族の常識が抜け落ちがちな男児だった俺は、大きくなってから辺境伯のお心遣いを聞いた。
何が不敬か分からないうちは、辺境伯家以外の偉い人達の前には出ていってはいけないと家族に言われているので、パーティーのような場所には出たことがない。
辺境伯家のパーティーなら大丈夫かと思って準備していたら、王家からご参加という人が、ふらっと現れて肝を冷やし、出席しないで帰ったこともある。
「お前のうちの領地が何もないのは、何もない場所でないと辺境伯家に降嫁される王女が好き放題できないからだ。」
と幼馴染。
知っているよ。
「うちの領地にある金目の設備は、辺境伯家に降嫁された王女が戦時中も快適にお過ごしになられるようにと王家が王女用に用意したものだよ。」
王女用の設備は、男爵家も男爵領民も使えない。
王女のために王家が金をかけた設備が使えなくなることがないように、男爵家は領民を雇い、王女用の設備の掃除したりメンテナンスしたりしている。
「お前の家が治める領地は、辺境伯家のドラゴンが自由に移動できるようにと、領地の開発にも制限がかかり、戦時中になれば一番最初に備蓄の供出を求められる。」
と幼馴染。
「うちの領地を治める貴族がときどき入れ替わるのは、うちの領地に避難されてきた王女様を守り抜けば、豊かな領地への領地替えを提案されるからだよ。」
「領地替えのときに新しい領地のランクの決め手は、王女の口添えだ。」
と幼馴染。
「この領地の領主を任ずる権限は国ではなく、国王陛下にあるから。」
「避難中の王女の不興を買った場合、領地替えどころか、貴族社会から追われることもある。」
と幼馴染。
「その代わりに平時の負担はないに等しい。辺境伯家の隣を治める男爵家は、税金が免除されるんだ。」
「男爵家の収入で税金を納めたら、領地経営は不可能だ。
貴族としての体裁も保てないだろう。」
と幼馴染。
男爵家のことを俺よりもよく知っていたりして。
「辺境伯家の常日頃からの支援には感謝しかないよ。
辺境伯家がうちを大事にしてくれているから、うちは貴族としてやってこられた。」
貴族として引き立ててくれて、俺が死なないようにもしてくれた。
「お前のお兄さん達の嫁探しが難航していることは理解している?」
と幼馴染。
「なかなか見つからないとは聞いているよ。」
「辺境伯家当主交代と、王女の降嫁を行うと張り切っているやつらが王都にはいる。」
と幼馴染。
「王女様の避難先となる男爵家は、お預かりする準備もままならないまま、王女様に滞在いただくことになるよ?」
「戦が始まったら、王女の滞在までに何もかもが間に合わない。」
と幼馴染。
「うん、お母さん以外の女主人がいない今の男爵家に、王女が満足するような接待はできないよ。」
「戦が終わった後、王女がどんな口添えをするか。
そんなことは、もう、分かりきっている。」
と幼馴染。
「王女様の不興を買って落ちぶれることが分かっている男爵家の長男と次男へ嫁を出したい貴族家なんて、いない。」
「お兄さん達の婚約者探しは暗礁に乗り上げている。」
と幼馴染。
「うちの家の先行きが思ったり悪くて、慌てるんだけど。」
「王女が辺境伯家に降嫁しなければ、いいだけの話なんだよ。」
と幼馴染。
「だから、王女様の降嫁話を潰したんだ?」
「辺境伯家とお前の家を不幸にすることしか頭にないやつらには従わない。」
と幼馴染。
「ありがとう。」
「辺境伯家とお前の家を両方不幸にしないやり方で、俺は国を守る。」
と幼馴染。
「俺も俺にできることをしたい。」
「俺と一緒に、俺とお前のやり方で国を守ろう。」
と幼馴染。
「勿論。」
「結婚しよう。」
と幼馴染。
今、再プロポーズの場面だったかな?
「お前と結婚しなくても、俺はお前と一緒に国を守る。」
「俺が戦うときは、戦えば、俺の大事なものを幸せにできるという確信があるときだけだよ。」
と幼馴染。
なんてこと言うんだよ。
「自分の幸せを追求するのは、人が生きていく上での本能だよ。
お前には、お前自身が幸せであることを重視してほしい。」
「俺の幸せは、お前と結婚して一生一緒に生きることだよ。」
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満面の笑みを浮かべる幼馴染と、言葉に詰まる俺。
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