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4章 霊峰編
32 そして決戦へ
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「師匠!大丈夫か!」
と琥太郎は倒れた三岳坊の前に駆け寄った。
「琥太郎、ワシはこれまでじゃ」
「そんなことはない!師匠の霊力ならまだ回復できる!」
と琥太郎は必死に説得する。
「無理じゃよ。何せ刺された得物が悪い。神剣に刺された傷は回復できん」
「そんな、諦めるって言うのか!」
「諦めはせんよ。琥太郎、ワシの首を斬れ」
その一言に周囲は息を呑んだ。
「坂田家に伝わる異能狩りの能力は、妖刀で斬った妖の力を得るものじゃ。ワシの力を、最後に愛弟子のお前に授けたい。わしの力を継いではくれんか」
「俺に、トドメを刺せってことか」
「どの道この傷ではワシは長生きできん。苦しんで死ぬなら、せめて愛弟子の手で葬って欲しい」
「そんなこと、できるはずないじゃないか!」
と琥太郎は涙を浮かべて叫ぶ。
「ワシからの最後のお願いじゃ、琥太郎。ワシがここまで納めて来た武術は、全てお前に継いだつもりじゃ。最後にワシの力をお前に授けたい。」
「そんな残酷な……」
と姫華は絶句する。
「育ての親を斬れって言うのかよ」
と賀茂が呟いた。
「師匠の最後のお願いなんて、そんな言い方ずるいよ……」
と琥太郎は涙をこぼす。
「そんなの、断れるわけないじゃないか」
「琥太郎、これで終わりじゃない。ワシだけじゃない、お主の父も、母も、死んでいった者たちの想いは繋がっている。お主には、その想いを繋げていける器がある。育てて来たワシにはわかる」
と三岳坊は静かに言い、最後の力を振り絞ってその場に正座し佇まいを直した。
「さあ、ワシももう苦しい。ひと思いに斬ってくれ」
琥太郎はそっと静かに安綱を構える。最後の瞬間、三岳坊と目があった。
「琥太郎!信じた道をまっすぐ往け!」
その瞬間、琥太郎の脳裏にこれまでの三岳坊との思い出が駆け巡った。最初は両親を惨殺されたショックから一言も話さず、ただ蹲ることしか出来なかった琥太郎に、武を教えることで生きる意味を与えた。ひたすら殺意を募らせて修行する鬼気迫る姿を、少し寂しそうに見つめる三岳坊の瞳。その意味を、琥太郎は今初めて理解した。今、琥太郎の後ろには仲間がいる。そして、救うべき人がいる。三岳坊が最後に発した言葉は、初めて会ったあの日とまったく同じだった。
ザン!と三岳坊の首が宙を飛んだ。そのまま俯いた顔を見せずに、琥太郎は歩みを進めた。
「おい!琥太郎!どこへ行くんだ」
と賀茂が慌てて琥太郎を引き止めようとする。その手を振り払い、琥太郎は言った。
「当たり前だろう。京へ柚を助けに行く」
「そんな傷でか!」
三岳坊との修行の後の七鬼衆との連戦で、さすがの琥太郎の体も傷だらけになっていた。全身に血が滲んでいる。
「琥太郎、聞いて!」
と、感極まった様子の姫華が声をあげた。
「琥太郎、私、あなたの事が好きよ!あなたのことを愛しているわ!」
そのまま駆け出した姫華は、琥太郎の胸に飛び込んだ。
「お願い、琥太郎。話を聞いて。あなた、京に死にに行く気でしょ」
その言葉を聞いて、メルと賀茂は息を呑む。
「そ、そんな。お兄ちゃん、死なないでほしいニャ!」
と美乃梨が慌てて言う。
「妖刀を奮い、七鬼衆の力を使い続けた琥太郎の体はすでに限界よ。今動いているのが不思議なくらいだわ。あなたと過ごして来た時間はまだ短いけど、それでもあなたは私にとって大切な人。あなたが死ぬなんて耐えられないわ」
「ありがとう、姫華」
と涙を流す姫華の頭を琥太郎はポン、ポンと優しく叩く。
「私と結婚しましょう。土御門家にあなたが婿入りするの。そうすれば兄だってあなたにこれ以上手出しできないわ。兄はただ強くなることにしか興味がない。柚だって返してもらえるはずよ」
「そうかもしれないな」
と琥太郎は頷く。涙を流し、頬を紅潮させた姫華は上目遣いで琥太郎を見て、意を決したように言った。
「坂田琥太郎さん、私はあなたのことを愛しています。私と結婚してください。」
その光景に、賀茂と美乃梨は息を呑んだ。沈黙の時間が過ぎ去る。沈黙を破ったのは琥太郎だった。姫華の肩に優しく手を掛け……そしてそっと引き離した。
「ありがとう、姫華。姫華の気持ちは受け取った。でも、俺には愛する人がいるんだ。」
「そう。あなたはそれでも行くのね」
と姫華はまるでわかっていたかのように言う。
「愛する人のために、俺は行かなければならない」
「あなたならそう答えるって知ってたわ。だって、そんなあなたのことを私は好きになったんだもの」
と言うと、姫華はいきなり琥太郎に近づき、そのままキスをした。
「!」
さすがに琥太郎は驚いた表情を見せる。
「あなた、この私に恥をかかせたわね!これでおあいこね。いいわ、京まで案内しましょう」
「そうだな、琥太郎が決めたんだ。俺たちは全力でサポートするのみだ」
と賀茂は納得して言う。
「みんな、おまたせー!京へ向かう式神を用意したよ!」
とメルが言うと、呪符を空に投げた。
「出でよ、八咫烏!」
現れた五羽のカラスたちは、琥太郎たちをそれぞれ背に乗せた。
「さあ、八咫烏たち、みんな。準備は良い?いざ行こう、京へ!」
「琥太郎様、行ってください!中岳山神社は師の意志を継ぐ我々が必ず復興させます!」
と黒羽と白羽が言う。生き残った天狗達に見送られながら、琥太郎らは京へと旅立った。
と琥太郎は倒れた三岳坊の前に駆け寄った。
「琥太郎、ワシはこれまでじゃ」
「そんなことはない!師匠の霊力ならまだ回復できる!」
と琥太郎は必死に説得する。
「無理じゃよ。何せ刺された得物が悪い。神剣に刺された傷は回復できん」
「そんな、諦めるって言うのか!」
「諦めはせんよ。琥太郎、ワシの首を斬れ」
その一言に周囲は息を呑んだ。
「坂田家に伝わる異能狩りの能力は、妖刀で斬った妖の力を得るものじゃ。ワシの力を、最後に愛弟子のお前に授けたい。わしの力を継いではくれんか」
「俺に、トドメを刺せってことか」
「どの道この傷ではワシは長生きできん。苦しんで死ぬなら、せめて愛弟子の手で葬って欲しい」
「そんなこと、できるはずないじゃないか!」
と琥太郎は涙を浮かべて叫ぶ。
「ワシからの最後のお願いじゃ、琥太郎。ワシがここまで納めて来た武術は、全てお前に継いだつもりじゃ。最後にワシの力をお前に授けたい。」
「そんな残酷な……」
と姫華は絶句する。
「育ての親を斬れって言うのかよ」
と賀茂が呟いた。
「師匠の最後のお願いなんて、そんな言い方ずるいよ……」
と琥太郎は涙をこぼす。
「そんなの、断れるわけないじゃないか」
「琥太郎、これで終わりじゃない。ワシだけじゃない、お主の父も、母も、死んでいった者たちの想いは繋がっている。お主には、その想いを繋げていける器がある。育てて来たワシにはわかる」
と三岳坊は静かに言い、最後の力を振り絞ってその場に正座し佇まいを直した。
「さあ、ワシももう苦しい。ひと思いに斬ってくれ」
琥太郎はそっと静かに安綱を構える。最後の瞬間、三岳坊と目があった。
「琥太郎!信じた道をまっすぐ往け!」
その瞬間、琥太郎の脳裏にこれまでの三岳坊との思い出が駆け巡った。最初は両親を惨殺されたショックから一言も話さず、ただ蹲ることしか出来なかった琥太郎に、武を教えることで生きる意味を与えた。ひたすら殺意を募らせて修行する鬼気迫る姿を、少し寂しそうに見つめる三岳坊の瞳。その意味を、琥太郎は今初めて理解した。今、琥太郎の後ろには仲間がいる。そして、救うべき人がいる。三岳坊が最後に発した言葉は、初めて会ったあの日とまったく同じだった。
ザン!と三岳坊の首が宙を飛んだ。そのまま俯いた顔を見せずに、琥太郎は歩みを進めた。
「おい!琥太郎!どこへ行くんだ」
と賀茂が慌てて琥太郎を引き止めようとする。その手を振り払い、琥太郎は言った。
「当たり前だろう。京へ柚を助けに行く」
「そんな傷でか!」
三岳坊との修行の後の七鬼衆との連戦で、さすがの琥太郎の体も傷だらけになっていた。全身に血が滲んでいる。
「琥太郎、聞いて!」
と、感極まった様子の姫華が声をあげた。
「琥太郎、私、あなたの事が好きよ!あなたのことを愛しているわ!」
そのまま駆け出した姫華は、琥太郎の胸に飛び込んだ。
「お願い、琥太郎。話を聞いて。あなた、京に死にに行く気でしょ」
その言葉を聞いて、メルと賀茂は息を呑む。
「そ、そんな。お兄ちゃん、死なないでほしいニャ!」
と美乃梨が慌てて言う。
「妖刀を奮い、七鬼衆の力を使い続けた琥太郎の体はすでに限界よ。今動いているのが不思議なくらいだわ。あなたと過ごして来た時間はまだ短いけど、それでもあなたは私にとって大切な人。あなたが死ぬなんて耐えられないわ」
「ありがとう、姫華」
と涙を流す姫華の頭を琥太郎はポン、ポンと優しく叩く。
「私と結婚しましょう。土御門家にあなたが婿入りするの。そうすれば兄だってあなたにこれ以上手出しできないわ。兄はただ強くなることにしか興味がない。柚だって返してもらえるはずよ」
「そうかもしれないな」
と琥太郎は頷く。涙を流し、頬を紅潮させた姫華は上目遣いで琥太郎を見て、意を決したように言った。
「坂田琥太郎さん、私はあなたのことを愛しています。私と結婚してください。」
その光景に、賀茂と美乃梨は息を呑んだ。沈黙の時間が過ぎ去る。沈黙を破ったのは琥太郎だった。姫華の肩に優しく手を掛け……そしてそっと引き離した。
「ありがとう、姫華。姫華の気持ちは受け取った。でも、俺には愛する人がいるんだ。」
「そう。あなたはそれでも行くのね」
と姫華はまるでわかっていたかのように言う。
「愛する人のために、俺は行かなければならない」
「あなたならそう答えるって知ってたわ。だって、そんなあなたのことを私は好きになったんだもの」
と言うと、姫華はいきなり琥太郎に近づき、そのままキスをした。
「!」
さすがに琥太郎は驚いた表情を見せる。
「あなた、この私に恥をかかせたわね!これでおあいこね。いいわ、京まで案内しましょう」
「そうだな、琥太郎が決めたんだ。俺たちは全力でサポートするのみだ」
と賀茂は納得して言う。
「みんな、おまたせー!京へ向かう式神を用意したよ!」
とメルが言うと、呪符を空に投げた。
「出でよ、八咫烏!」
現れた五羽のカラスたちは、琥太郎たちをそれぞれ背に乗せた。
「さあ、八咫烏たち、みんな。準備は良い?いざ行こう、京へ!」
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