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第一章 ギャップ萌えって、いい方向へのギャップじゃなきゃ萌えないよね。
24 炸裂する腐女子の妄想と母からの緊急指令。
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ーー一体、何だったんだろう。
ファミリーデー以後、前田はやたらとよそよそしくなった。
いや、元々好意的な対応をされていたとは思えないのだけど、やたら絡んで来たのが嘘のように事務的なのだ。
まあジャージも返したし、問題ないといえばないか。
そう思いながらも、気になるのは自然だと思う。
何だったんだろう、といえば、マサトさんもだ。
「ろくでもない男とは別れて正解。いい男つかまえろよ」
ファミリーデーの別れ際。穏やかな笑顔と、禁断の(!)頭ポンに、ほとんど魂を抜かれた私は、夢見心地で浮き立つばかりだったのだけれどーー
考えてみれば、あれもいつものマサトさんにしてはトゥーマッチな振るまいだ。
二人が何やら険悪な(いや、前田が一方的に噛み付いていたようにも見えるが)ムードだったことを考えると、これは何かーー
「サリーちゃん」
社食でランチを一緒していたレイラちゃんが、真剣な顔で言ったので、私は我に返った。
「ど、どうしたの?」
「私ね、見ちゃったのよ」
「見ちゃったって?」
「例のお兄さんと、フリーダムーー」
レイラちゃんの深刻な様子に、私はついつい飲まれる。見たって何を?私が見た場面じゃないところでも会っていたんだろうか。
ごくり、と唾を飲み込み次の言葉を待っていると、レイラちゃんは顔を覆った。
「あれじゃ、お兄さんはやっぱり攻めだわ。総受けを想定してたけど攻守入れ代わる可能性も大ね。私としたことが見誤った!」
ーー知るかぁああ!!
と、叫びたい気持ちをどうにか心中に留め、私は乾いた笑いを返してごまかしたのだった。
そうこうしていると、誕生日ももう来週だ。
ああ、とうとう三十になってしまうーー
思っていたとき、母からメッセージが入った。
【緊急指令!今週末、家族会議を開催します。用事の有無について返信ください。なお、重要度の低い用事は後日に延期する手筈をお願いします!】
ーーって何だこれ。
娘の私もときどき戸惑うくらい、うちの両親は茶目っ気のある人たちだ。とはいえここまでガチ?なのも珍しい。本当に何か大事なことがあるのだろうか。
思いながらスケジュールを思い出した。特に予定は無いはずーーそう、彼氏がいたときにはいつもそのくらいの時期に誕生日を祝ってもらっていたけれど、今は残念ながらその彼氏がいないのであるから用事もない。
苦笑しながら私は了解と返した。
もし、本当に重要な話だったとしてーー
私は考えて、はっとした。
ーーもしかして、弟の結婚が決まったとか?
私には、二歳離れた弟が二人いる。一卵性双生児で、名前は達哉と勝哉。
え?どこかで聞いた気がするって?それを言っちゃあおしまいよ。
ちなみに私はミナミと名付けられずに済んでよかったと心から思っているが、これは母が阻止してくれたらしい。グッジョブ、母上。
でも、二人の弟はよくこう言っていた。
「姉さんの結婚が決まったら自分も考える。だって姉さん、焦っちゃうでしょ?焦ってろくでもないの連れて来られたら嫌だし」
姉のことをよく理解してくれている弟たちである。
ーーってことは、結婚はないか。
思いながらも可能性は捨てきれない。そわそわした気持ちで週末を迎えた。
ファミリーデー以後、前田はやたらとよそよそしくなった。
いや、元々好意的な対応をされていたとは思えないのだけど、やたら絡んで来たのが嘘のように事務的なのだ。
まあジャージも返したし、問題ないといえばないか。
そう思いながらも、気になるのは自然だと思う。
何だったんだろう、といえば、マサトさんもだ。
「ろくでもない男とは別れて正解。いい男つかまえろよ」
ファミリーデーの別れ際。穏やかな笑顔と、禁断の(!)頭ポンに、ほとんど魂を抜かれた私は、夢見心地で浮き立つばかりだったのだけれどーー
考えてみれば、あれもいつものマサトさんにしてはトゥーマッチな振るまいだ。
二人が何やら険悪な(いや、前田が一方的に噛み付いていたようにも見えるが)ムードだったことを考えると、これは何かーー
「サリーちゃん」
社食でランチを一緒していたレイラちゃんが、真剣な顔で言ったので、私は我に返った。
「ど、どうしたの?」
「私ね、見ちゃったのよ」
「見ちゃったって?」
「例のお兄さんと、フリーダムーー」
レイラちゃんの深刻な様子に、私はついつい飲まれる。見たって何を?私が見た場面じゃないところでも会っていたんだろうか。
ごくり、と唾を飲み込み次の言葉を待っていると、レイラちゃんは顔を覆った。
「あれじゃ、お兄さんはやっぱり攻めだわ。総受けを想定してたけど攻守入れ代わる可能性も大ね。私としたことが見誤った!」
ーー知るかぁああ!!
と、叫びたい気持ちをどうにか心中に留め、私は乾いた笑いを返してごまかしたのだった。
そうこうしていると、誕生日ももう来週だ。
ああ、とうとう三十になってしまうーー
思っていたとき、母からメッセージが入った。
【緊急指令!今週末、家族会議を開催します。用事の有無について返信ください。なお、重要度の低い用事は後日に延期する手筈をお願いします!】
ーーって何だこれ。
娘の私もときどき戸惑うくらい、うちの両親は茶目っ気のある人たちだ。とはいえここまでガチ?なのも珍しい。本当に何か大事なことがあるのだろうか。
思いながらスケジュールを思い出した。特に予定は無いはずーーそう、彼氏がいたときにはいつもそのくらいの時期に誕生日を祝ってもらっていたけれど、今は残念ながらその彼氏がいないのであるから用事もない。
苦笑しながら私は了解と返した。
もし、本当に重要な話だったとしてーー
私は考えて、はっとした。
ーーもしかして、弟の結婚が決まったとか?
私には、二歳離れた弟が二人いる。一卵性双生児で、名前は達哉と勝哉。
え?どこかで聞いた気がするって?それを言っちゃあおしまいよ。
ちなみに私はミナミと名付けられずに済んでよかったと心から思っているが、これは母が阻止してくれたらしい。グッジョブ、母上。
でも、二人の弟はよくこう言っていた。
「姉さんの結婚が決まったら自分も考える。だって姉さん、焦っちゃうでしょ?焦ってろくでもないの連れて来られたら嫌だし」
姉のことをよく理解してくれている弟たちである。
ーーってことは、結婚はないか。
思いながらも可能性は捨てきれない。そわそわした気持ちで週末を迎えた。
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