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第二章 本日は前田ワールドにご来場くださり、誠にありがとうございます。
49 鉄仮面破顔の真意を探れ!
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自分からタンカを切った手前、歩み寄るきっかけも掴めず、定例ミーティングの日を迎えた。
困惑した気持ちのまま会議室まで行った私は、前田の代わりに尾木くんの姿を見つけて入室をためらう。尾木くんが気づいて近づいて来てくれた。
「今日、前田くん夏風邪引いてお休みで。俺代理なんだ」
それを聞いてほっと肩の力を抜く。あからさま過ぎて居心地悪く、私はちょっと目線を反らした。
尾木くんは私を見て、会議室を見て、壁にかかっている時計を見てーーSEは何故か腕時計をしていない人が多い。多分携帯が普及して以降、時計はそれで確認できるので腕時計は不必要だという認識なのだろうーー私を目線で廊下に誘い出た。
気まずく思いながら渋々廊下に出る。
「この前、吉田さんが前田くんに怒ったときの話ーー聞いた?」
「レイラちゃんから、一応……」
尾木くんはにこりと笑った。
「前田くん、ほんとウケちゃって、翌日も俺の顔見て噴き出して、メイちゃんに会っても笑うの堪えてて」
おいおい何だそれ。長引きすぎだろ。
「俺、同じ配属だし、四年間つき合って来たけど、初めてあんな顔見たからびっくりしちゃって。確かに吉田さんの台詞はちょっとよくわからないところとかツッコミ所はあったけど、そんなにウケる程ではない気がして」
フォローしている気はないだろうけどフォローになってない。最も直近の黒歴史として胸に刻まれた思い出をわずかに呼び起こされて目をそらした。
「でも、あれってーーほっとしたんだろうな」
私は尾木くんに目を向けた。
尾木くんは微笑んだまま、ちょっと自信なさげに首を傾げている。
「今までの中で、一番似てる雰囲気だったのって、納期ギリギリで仕事終えたときとか、致命的なミスが発覚して慌てて修正してどうにか間に合ったときとか、そういうときだなと思ったんだ」
ほっとした?
ーー何に?
私、あのとき、
「……何て言ったっけ?」
小さな呟きは口をついて出た。尾木くんは笑う。
「わからないよ、俺には。前田くんに響いた言葉が何なのかなんて。直接確かめてみたら?」
直接、って言ったって。
もう週末だし。今日は前田、いないし。
「まあ、ただの夏風邪って言ってたから、きっと週明けには出てくるよ。ーー何か伝えたいことあったら言って。スマホに送るなり、デスクにメモ残すなり伝言するなり、するから」
私は困惑したまま目をさ迷わせ、尾木くんの顔を覗き見るようにして言った。
「……とっとと風邪治して出てこい、って伝えて」
照れを隠すように不機嫌な響きになった言葉を聞き取り、尾木くんが笑う。
「了解」
いい同期に恵まれてるなぁ、と私は思った。
私も、前田も。
困惑した気持ちのまま会議室まで行った私は、前田の代わりに尾木くんの姿を見つけて入室をためらう。尾木くんが気づいて近づいて来てくれた。
「今日、前田くん夏風邪引いてお休みで。俺代理なんだ」
それを聞いてほっと肩の力を抜く。あからさま過ぎて居心地悪く、私はちょっと目線を反らした。
尾木くんは私を見て、会議室を見て、壁にかかっている時計を見てーーSEは何故か腕時計をしていない人が多い。多分携帯が普及して以降、時計はそれで確認できるので腕時計は不必要だという認識なのだろうーー私を目線で廊下に誘い出た。
気まずく思いながら渋々廊下に出る。
「この前、吉田さんが前田くんに怒ったときの話ーー聞いた?」
「レイラちゃんから、一応……」
尾木くんはにこりと笑った。
「前田くん、ほんとウケちゃって、翌日も俺の顔見て噴き出して、メイちゃんに会っても笑うの堪えてて」
おいおい何だそれ。長引きすぎだろ。
「俺、同じ配属だし、四年間つき合って来たけど、初めてあんな顔見たからびっくりしちゃって。確かに吉田さんの台詞はちょっとよくわからないところとかツッコミ所はあったけど、そんなにウケる程ではない気がして」
フォローしている気はないだろうけどフォローになってない。最も直近の黒歴史として胸に刻まれた思い出をわずかに呼び起こされて目をそらした。
「でも、あれってーーほっとしたんだろうな」
私は尾木くんに目を向けた。
尾木くんは微笑んだまま、ちょっと自信なさげに首を傾げている。
「今までの中で、一番似てる雰囲気だったのって、納期ギリギリで仕事終えたときとか、致命的なミスが発覚して慌てて修正してどうにか間に合ったときとか、そういうときだなと思ったんだ」
ほっとした?
ーー何に?
私、あのとき、
「……何て言ったっけ?」
小さな呟きは口をついて出た。尾木くんは笑う。
「わからないよ、俺には。前田くんに響いた言葉が何なのかなんて。直接確かめてみたら?」
直接、って言ったって。
もう週末だし。今日は前田、いないし。
「まあ、ただの夏風邪って言ってたから、きっと週明けには出てくるよ。ーー何か伝えたいことあったら言って。スマホに送るなり、デスクにメモ残すなり伝言するなり、するから」
私は困惑したまま目をさ迷わせ、尾木くんの顔を覗き見るようにして言った。
「……とっとと風邪治して出てこい、って伝えて」
照れを隠すように不機嫌な響きになった言葉を聞き取り、尾木くんが笑う。
「了解」
いい同期に恵まれてるなぁ、と私は思った。
私も、前田も。
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