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第二章 本日は前田ワールドにご来場くださり、誠にありがとうございます。
50 自問自答、再び。
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週末はゆっくり自分と向き合う時間にした。ウィンドウショッピングを楽しんだり、食べたいと思うものを食べたり、図書館で気になる本を借りてみたりーーそういう時間。
ときどき、歩きながら思い出す。自問自答した問いを。そして、できるだけ素直な自分の思いで答えてみた。
Q1 今気になっていることは何ですか。
同期の前田という男について。そしてその男に対する自分の気持ちについて。
Q2 気になったきっかけは何ですか。
ーーあんなに冷たくあしらう人は初めてだったから、驚いたし腹が立った。
冷静に考えてみれば、前田のことが気になったきっかけは私がキスしたことじゃない。
もっともっと前、再会したその日。
黒縁眼鏡の奥に優しい瞳を隠して、私に悪態をつく男の真意を探りかねたーー今まで会ったことのない態度だったから。
冷たいのに、優しい。無愛想なのに、私のことをよく見ていて、知っている。不思議と理解している。それが何故なのか気になって、気になってーー
気づけば、追いかけている。
次の質問にさしかかる。 綺麗な黄色だなと思ってプリーツスカートを手にした。
Q3 その人のことが好きですか。ーー
はっとして、手にしたプリーツスカートが揺れる。まだ残暑厳しい折なのに、店はどこも秋物を売り始めている。ボルドー。カーキ。そんな深い色に紛れた銀杏を思わせるイエロー。
私はスカートをラックに戻した。
ーー黄色?
私の耳を震わせた前田の小さな声を思い出す。溶けたアイスクリーム。考え無しに裾をまくったスカート、見られた下着。耳元で響いたハスキーボイス。
そのとき感じた、意識を奪われたような感覚を思い出し、頭を振った。
どきりと高鳴った私の胸はーー何を、告げていたのか。
つい、苦笑する。この期に及んで、私はまだ、前田が好きだと認められずにいる。
好きーー恋愛対象として、男としてーー好き。愛している。
愛するって何だろう。
ーーなーんて、詩人か哲学者みたい。
余りに私のガラじゃない気分に自分で笑う。
前田は、どんな気持ちで私に好きだと言ったんだろう。
前田こそ、他人どころか自分の気持ちにも鈍感そうに思える。そんな男が、どうしてーー好き、なんていう言葉を、あんなに大切そうに、口にしたのか。
鈍感、じゃないのかもしれない。前田は私の様子をよく見て、私の気持ちを察してくれていた。本当に鈍感な人間にそんなことはできないだろう。
もしかしたら、むしろ前田は敏感で、敏感すぎて、それを覆い隠すようにああいうキャラになったのかもしれない。何事にも動じない鎧を身にまとう癖が付いたのかもしれない。
前田は、私の何が好きだと思ったんだろう。
直情型で、単純で、考え無しな私のどこを。
自分で思って苦笑した。見栄えばかり女らしくておしとやかでも、これだけ内面が伴っていないのなら男たちが駄目出しする気持ちもわかろうというものだ。逆に自分だったらきっとそうするだろう。
前田はーーそうは、思わなかったんだろうか。
期待を裏切られたと。見た目と違ったと、思わなかったんだろうか。
第一印象の得点が一番高くて、後は減点されていく私の女としての魅力。
前田は呆れはするが、突き放したりはしなかった。
黒縁眼鏡の奥に優しい目を隠して、無表情の下に思いやりを隠して、仕方ないなというポーズでつき合ってくれた。
私は腹を立てて、仕方ないなんて思うならつき合う必要ないのに、なんて思いながら、どこかで知っていた。甘えていた。前田が突き放したりしないことを。
ーー甘えてた。
知らず知らずに。
それが一番しっくり来る。
ーーでも。
それでいいのかな。
それだけでーーもし、前田が他人のモノになったとして、私は?私は、どう思うんだろう。
前田と話そう。
確信するように、思った。
前田と、話したい。ちゃんと、互いの気持ちに向き合って。
ときどき、歩きながら思い出す。自問自答した問いを。そして、できるだけ素直な自分の思いで答えてみた。
Q1 今気になっていることは何ですか。
同期の前田という男について。そしてその男に対する自分の気持ちについて。
Q2 気になったきっかけは何ですか。
ーーあんなに冷たくあしらう人は初めてだったから、驚いたし腹が立った。
冷静に考えてみれば、前田のことが気になったきっかけは私がキスしたことじゃない。
もっともっと前、再会したその日。
黒縁眼鏡の奥に優しい瞳を隠して、私に悪態をつく男の真意を探りかねたーー今まで会ったことのない態度だったから。
冷たいのに、優しい。無愛想なのに、私のことをよく見ていて、知っている。不思議と理解している。それが何故なのか気になって、気になってーー
気づけば、追いかけている。
次の質問にさしかかる。 綺麗な黄色だなと思ってプリーツスカートを手にした。
Q3 その人のことが好きですか。ーー
はっとして、手にしたプリーツスカートが揺れる。まだ残暑厳しい折なのに、店はどこも秋物を売り始めている。ボルドー。カーキ。そんな深い色に紛れた銀杏を思わせるイエロー。
私はスカートをラックに戻した。
ーー黄色?
私の耳を震わせた前田の小さな声を思い出す。溶けたアイスクリーム。考え無しに裾をまくったスカート、見られた下着。耳元で響いたハスキーボイス。
そのとき感じた、意識を奪われたような感覚を思い出し、頭を振った。
どきりと高鳴った私の胸はーー何を、告げていたのか。
つい、苦笑する。この期に及んで、私はまだ、前田が好きだと認められずにいる。
好きーー恋愛対象として、男としてーー好き。愛している。
愛するって何だろう。
ーーなーんて、詩人か哲学者みたい。
余りに私のガラじゃない気分に自分で笑う。
前田は、どんな気持ちで私に好きだと言ったんだろう。
前田こそ、他人どころか自分の気持ちにも鈍感そうに思える。そんな男が、どうしてーー好き、なんていう言葉を、あんなに大切そうに、口にしたのか。
鈍感、じゃないのかもしれない。前田は私の様子をよく見て、私の気持ちを察してくれていた。本当に鈍感な人間にそんなことはできないだろう。
もしかしたら、むしろ前田は敏感で、敏感すぎて、それを覆い隠すようにああいうキャラになったのかもしれない。何事にも動じない鎧を身にまとう癖が付いたのかもしれない。
前田は、私の何が好きだと思ったんだろう。
直情型で、単純で、考え無しな私のどこを。
自分で思って苦笑した。見栄えばかり女らしくておしとやかでも、これだけ内面が伴っていないのなら男たちが駄目出しする気持ちもわかろうというものだ。逆に自分だったらきっとそうするだろう。
前田はーーそうは、思わなかったんだろうか。
期待を裏切られたと。見た目と違ったと、思わなかったんだろうか。
第一印象の得点が一番高くて、後は減点されていく私の女としての魅力。
前田は呆れはするが、突き放したりはしなかった。
黒縁眼鏡の奥に優しい目を隠して、無表情の下に思いやりを隠して、仕方ないなというポーズでつき合ってくれた。
私は腹を立てて、仕方ないなんて思うならつき合う必要ないのに、なんて思いながら、どこかで知っていた。甘えていた。前田が突き放したりしないことを。
ーー甘えてた。
知らず知らずに。
それが一番しっくり来る。
ーーでも。
それでいいのかな。
それだけでーーもし、前田が他人のモノになったとして、私は?私は、どう思うんだろう。
前田と話そう。
確信するように、思った。
前田と、話したい。ちゃんと、互いの気持ちに向き合って。
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