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第三章 アラサー女子よ、大志を抱け!
79 扉を開く鍵は、いつだって好奇心と情熱だ。
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「どうすればいいのか、よくわかんないんだけど」
二人、ベッド脇で抱きしめ合って。
気恥ずかしさがわずかに和らいだ私が口にすると、前田も笑った。
「俺だって分からないよ」
そう言いながらも、私の髪を撫でる。
「でも、吉田さーー里沙が、嫌なことはしたくないから、嫌だなと思ったら言って」
「うん」
答えながら、私は思っていた。きっと、嫌だと思っても思わなくても、前田は私の表情から察してしまうんだろう。私以上に私のことをよく分かっている人だから。
ぎゅう、と前田の首に回した腕の力を強める。前田もそれに応えるように、私の背中と、後頭部に回した手に力を込めた。
前田は私の頭を撫でていた手を、首横に滑らせる。髪と指に撫でられた首から、ぞくりと背中へ痺れが走った。
「里沙」
前田が掠れた声で呼ぶ。私は少しだけ身体を浮かせて、前田の顔を見やる。
右目も左目も、黒い瞳には私の顔が映っていた。
どちらからともなく、目を閉じ、顔が近づく。
唇が静かに重なった。
部屋の中は何も音がないはずなのに、なんだかすごくうるさい。うるさいのは自分の心臓の音だと気づいた。身体中で鳴り続ける早鐘に、何も考えられなくなる。
唇がわずかに離れ、互いの目を確認した。
前田しか見えない。それだけで充分だ。
私は前田の両頬を手で覆った。今度は明確に、私から、口づける。
手を、頬から、首へ、そして胸へ滑らせる。
シャワーを浴びてしっとりと湿った白い肌は、私の手に吸い付いて来るようだった。筋肉質ではないけれど、骨々しくもない。女のように、柔らかでもない。
「ヨ、シ、カ、ズ」
唇が離れた隙に、小さく呼んだ。ちょっとだけ気恥ずかしい。けど、それよりも喜びが勝った。ーーただ、名前を呼ぶだけなのに。
前田が照れ臭そうに微笑んだ、かと思うと顔を反らした。
「駄目、もう限界」
呟きが聞こえたと思ったら、景色がぐらりと揺れた。わ、と、あ、の間のような声が出る。ベッドに仰向けに横たわった私の上に、前田の半身がある。
「ーーいい光景」
前田が呟いた。その声に、征服感が滲み出ている。それがますます私を煽った。気恥ずかしさで顔を反らす。
「駄目だよ」
前田は見たこともないくらい意地悪そうに微笑んで、私の首筋に唇を寄せた。
「ちゃんと見てて」
煽られて、私の目が潤む。
睨みつけると、前田は嬉しそうに笑った。
「ちょっとだけ分かった気がする」
前田は弾む声で言う。
何が、と問うと、
「こういうの、気分がいいって」
言いながら、私の鼻先に鼻先を寄せた。前田の髪がさらりと私の額に当たる。
「俺だけが、好きにできる、って感じ」
その瞳には、好奇心の奥底に燃える、欲求。
前田が随分余裕ありげで悔しくなった。
「何で、初めてなのにそんな冷静なのよ」
「冷静じゃないよ」
前田は私の頭を自分の胸に抱き寄せた。頬に、自分と別の心音が伝わる。ドキドキと響く音は、私とさして変わらない大きさで鳴っていた。
「里沙」
声は、耳からだけでなく、胸元に寄せた頬からも聞こえた気がした。
「服、脱がせていい?」
私は前田の背中に手を回して、こくり、と頷いた。
二人、ベッド脇で抱きしめ合って。
気恥ずかしさがわずかに和らいだ私が口にすると、前田も笑った。
「俺だって分からないよ」
そう言いながらも、私の髪を撫でる。
「でも、吉田さーー里沙が、嫌なことはしたくないから、嫌だなと思ったら言って」
「うん」
答えながら、私は思っていた。きっと、嫌だと思っても思わなくても、前田は私の表情から察してしまうんだろう。私以上に私のことをよく分かっている人だから。
ぎゅう、と前田の首に回した腕の力を強める。前田もそれに応えるように、私の背中と、後頭部に回した手に力を込めた。
前田は私の頭を撫でていた手を、首横に滑らせる。髪と指に撫でられた首から、ぞくりと背中へ痺れが走った。
「里沙」
前田が掠れた声で呼ぶ。私は少しだけ身体を浮かせて、前田の顔を見やる。
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どちらからともなく、目を閉じ、顔が近づく。
唇が静かに重なった。
部屋の中は何も音がないはずなのに、なんだかすごくうるさい。うるさいのは自分の心臓の音だと気づいた。身体中で鳴り続ける早鐘に、何も考えられなくなる。
唇がわずかに離れ、互いの目を確認した。
前田しか見えない。それだけで充分だ。
私は前田の両頬を手で覆った。今度は明確に、私から、口づける。
手を、頬から、首へ、そして胸へ滑らせる。
シャワーを浴びてしっとりと湿った白い肌は、私の手に吸い付いて来るようだった。筋肉質ではないけれど、骨々しくもない。女のように、柔らかでもない。
「ヨ、シ、カ、ズ」
唇が離れた隙に、小さく呼んだ。ちょっとだけ気恥ずかしい。けど、それよりも喜びが勝った。ーーただ、名前を呼ぶだけなのに。
前田が照れ臭そうに微笑んだ、かと思うと顔を反らした。
「駄目、もう限界」
呟きが聞こえたと思ったら、景色がぐらりと揺れた。わ、と、あ、の間のような声が出る。ベッドに仰向けに横たわった私の上に、前田の半身がある。
「ーーいい光景」
前田が呟いた。その声に、征服感が滲み出ている。それがますます私を煽った。気恥ずかしさで顔を反らす。
「駄目だよ」
前田は見たこともないくらい意地悪そうに微笑んで、私の首筋に唇を寄せた。
「ちゃんと見てて」
煽られて、私の目が潤む。
睨みつけると、前田は嬉しそうに笑った。
「ちょっとだけ分かった気がする」
前田は弾む声で言う。
何が、と問うと、
「こういうの、気分がいいって」
言いながら、私の鼻先に鼻先を寄せた。前田の髪がさらりと私の額に当たる。
「俺だけが、好きにできる、って感じ」
その瞳には、好奇心の奥底に燃える、欲求。
前田が随分余裕ありげで悔しくなった。
「何で、初めてなのにそんな冷静なのよ」
「冷静じゃないよ」
前田は私の頭を自分の胸に抱き寄せた。頬に、自分と別の心音が伝わる。ドキドキと響く音は、私とさして変わらない大きさで鳴っていた。
「里沙」
声は、耳からだけでなく、胸元に寄せた頬からも聞こえた気がした。
「服、脱がせていい?」
私は前田の背中に手を回して、こくり、と頷いた。
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