モテ男とデキ女の奥手な恋

松丹子

文字の大きさ
125 / 126
閑話(時系列については数字でご確認ください)

3years after*かしまし二人娘(『初恋旅行に出かけます』公開記念)

しおりを挟む
 毎度恒例の公開記念SSです♪

 * * *

『もしもしマーシー?』
 十月某日。かかってきた内線に出ると、どことなく笑いを含んだ阿久津の声がした。
「何だよ急に」
 俺が言うと、
『お前に電話だ』
「はぁ?」
『福岡にある○中の卒業生だそうだ』
 俺は一瞬息を飲んだ。
「……はぁっ!?」
『繋ぐぞー』
 ぷつ、と電話が切り替わるや否や、
『あ、あの、もしもしっ?』
 緊張した女子の声。
『何、繋がった!?』
『わ、分からんけど、何か違う人に変わってくれた!』
 懐かしい方言に、思わず額を押さえる。
「どうかしたんすか?」
 隣でこっそりとジョーが聞いてくるのに適当に手で答え、
「……もしかして、ミチとマキか?」
『きゃーーーー!!!!!』
 悲鳴のような歓声に、俺は思わず受話器を遠くに離した。おかげで課内の人間全員がこちらを振り向く。
「……す、すみません」
 なんで俺が謝らなきゃいけねぇんだよ! ったく。
 思いながら、恐る恐る受話器を耳に寄せる。鼓膜を破られでもしたらたまらない。
『神崎さんやん!神崎さん!久しぶり!!』
『今修学旅行で東京来てるんよ!神崎さんどこにおるん!?』
「どこって会社に決まってんだろ」
 じゃなかったら電話に出てねぇよ。
 呆れ返りながらも、二人の変わらない二人の様子に苦笑する。ヒカルと同じ女子バスケ部に所属していた同級生だ。
 最後に会ったのは、彼女らの初めての公式戦に応援に行ったときか。三年は経っている。
『電話かけてみたら、神崎さんってだけじゃ分からんて言うて、でも分かる人がおるかもしれんて営業の方に回してくれたんよ。そしたら、阿久津さん?て人が、多分そうだろうから繋げるって言うてくれて!』
 興奮気味に説明するマキの声は、受話器を少し離していてもよく聞こえる。彼女たちにしてみたら、会社に電話すること自体が大冒険なのだろう。
 阿久津の笑いを含んだ声はそういうことだったか。また後で何か言われそうだな。
「……で、何だって?修学旅行?」
 また懐かしい言葉を言うもんだと思いつつ答えると、そうなんよ!と相槌が返ってきた。
「せっかくやから会えんかなと思って。今日、自由行動やから」
「今日?」
 俺は思わず苦笑した。今は午後二時で、昼休みが終わったばかりだ。
「お前らなぁ。そんな私用で外出られるわけないだろ。昼休みならともかく」
『昼休み!?』
 何だその食いつき。
『じゃあ、明日の昼休みに来たら会える!?』
「自由行動そんなに多いのかよ」
『先生に頼んでみる!!』
 おいおいおい訳分かんねぇこと言うなよ。
「先生困らせんな、諦めて帰れ」
『そんなー!』
『やったら、今から会社に乗り込む!』
『神崎さんの隠し子ですって言う!』
『生き別れた妹ですって言う!』
「盛り上がんな!分かった!分かったから!」
 俺は慌てて二人をなだめ、嘆息した。
 ったく、女子は複数揃うと暴走しだすから困る。
「分かったよ。じゃあ、明日な。会社の場所分かんのか?」
『うん。スマホで調べた。駅からまっすぐ?』
 最寄り駅からはそんなに分かりにくい道ではないが、二人はなにぶん東京に不慣れな女子高生だ。俺はふと不安を感じて頭をかいた。
「……迎え行ってやるから、とりあえず駅で待ってろ。12時過ぎに駅の改札でな」
『やったー!』
「でも先生が駄目だって言ったら諦めて帰れよ!」
『絶対説得するー!』
 喜ぶ二人の声を聞きながら、ふと3年前を思い出した。ボールを追いかけて歓声をあげる六人の女子中学生の姿。
 そうか、こいつらももう高校生か。
 感慨にふけりながら、問われるままに連絡先を教え、電話を切る。
「賑やかでしたね」
「あー」
 ジョーが隣で笑っている。俺は気まずさに目を反らした。
「ま、若さだな」
「若さねぇ」
 ジョーは笑いながらデスク横のコーヒーを飲んだ。
「そのノリについて行けるマーシーも若いと思うけど」
 ついていけてねぇよ。お前のノリにすらついて行けてる自信ねぇし。
 思ったが、あえて訂正する気もわかず、目の前の仕事に取り掛かる。
「ジョー。悪いけど明日の昼、ちょっとフライングするわ」
 何となく気恥ずかしく思いながらそう言うと、ジョーは笑って、了解と手を挙げた。

 ***
 女子学生の(無駄な)勢いは書いていると楽しいです。
 何だかんだ言って(相変わらず?)押しに弱い政人でした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

君に恋していいですか?

櫻井音衣
恋愛
卯月 薫、30歳。 仕事の出来すぎる女。 大食いで大酒飲みでヘビースモーカー。 女としての自信、全くなし。 過去の社内恋愛の苦い経験から、 もう二度と恋愛はしないと決めている。 そんな薫に近付く、同期の笠松 志信。 志信に惹かれて行く気持ちを否定して 『同期以上の事は期待しないで』と 志信を突き放す薫の前に、 かつての恋人・浩樹が現れて……。 こんな社内恋愛は、アリですか?

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

友達の肩書き

菅井群青
恋愛
琢磨は友達の彼女や元カノや友達の好きな人には絶対に手を出さないと公言している。 私は……どんなに強く思っても友達だ。私はこの位置から動けない。 どうして、こんなにも好きなのに……恋愛のスタートラインに立てないの……。 「よかった、千紘が友達で本当に良かった──」 近くにいるはずなのに遠い背中を見つめることしか出来ない……。そんな二人の関係が変わる出来事が起こる。

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...