28 / 126
第一章 ちかづく
28 幼馴染(1)
しおりを挟む
「……どうしたの、兄さん」
ぜーはーと息を荒げながら境内に到着した俺に、隼人は呆れたように言った。
「いや、何でもない」
言い終わる頃、げほ、と咳をする。
くっそ。体力が落ちてる。
思いながら、深呼吸して息を整えた。
「無事に着けましたか?」
隼人の後ろから、ひょこりと顔を出したのは栄太郎の手を引いた香子ちゃん。俺が頷くと、
「綺麗な方でしたね」
その含みのある笑顔に、俺は目を背ける。
数度深呼吸を繰り返すと、ようやく息が整った。
「政人、走り込みが足らへんぞ」
笑う栄太郎の頭を小突いて、参道を奥へと向かう。
ほとんどこのあたりに住む人だけが行く、小さな神社だ。
「お前らはもう参拝したんだろ?」
「うん。待ってるよ。行っておいで」
隼人にひらりと手を振って、参道を奥へと歩いた。
参拝客は他に2、3組だけだ。御手水をして、賽銭箱の前に立つ。
財布の中から出した小銭を賽銭箱に放ると、鐘を鳴らし、二礼、二拍手、一礼。
今年も一年、みんな元気に過ごせますように。
隼人と香子ちゃんの挙式が、よいものになりますように。
手を下げかけて、思いつく。
ーー橘が、いい男に出会えますように。
「ーー政人?」
目を開け、手を降ろしたとき、女の声に振り返った。驚いたような顔で立つ、子どもの手を引いた女。
コートからでも分かるほど、腹部が膨らんでいる。
その顔には、どことなく見覚えがあった。
「……遠藤、佐知?」
小、中学校の同級生だ。男勝りで活発で、いつも進んで手を挙げるタイプの子だった。
「うっわ、久しぶりー!」
嬉しそうに笑いながら、バシバシと肩を叩いて来る。
「痛ぇよ」
「その顔、昔と変わんないー!」
佐知は近くに立つ男を振り返った。
「小学校の同級生。イケメンっしょ」
「そうだね。はじめまして。夫の松江です」
男は平均的な身長で、俺たちより少しだけ年上のようだった。
子供の一人を抱きかかえて、会釈する。
「お前の子供?」
「そりゃそうでしょ。4歳、2歳、で、もうすぐ3人目」
大きいお腹を指し示して佐知は笑う。その顔は幸せそうだった。
「俺たちもそんな歳かぁ」
「そうだよー。政人は……まだみたいだね」
佐知は俺の左手に目を留めて言った。
「ま、男の人はこれからだよね。政人ならいつでも相手見つかるっしょ」
「……だといいけどね」
苦笑すると、4歳の子供が佐知の手を引いた。
「おかーさん、ガラガラしたい」
「お父さんと行こう」
松江さんが子供の手を引いて賽銭箱へ近づく。俺は横に避けて道を譲った。
ぜーはーと息を荒げながら境内に到着した俺に、隼人は呆れたように言った。
「いや、何でもない」
言い終わる頃、げほ、と咳をする。
くっそ。体力が落ちてる。
思いながら、深呼吸して息を整えた。
「無事に着けましたか?」
隼人の後ろから、ひょこりと顔を出したのは栄太郎の手を引いた香子ちゃん。俺が頷くと、
「綺麗な方でしたね」
その含みのある笑顔に、俺は目を背ける。
数度深呼吸を繰り返すと、ようやく息が整った。
「政人、走り込みが足らへんぞ」
笑う栄太郎の頭を小突いて、参道を奥へと向かう。
ほとんどこのあたりに住む人だけが行く、小さな神社だ。
「お前らはもう参拝したんだろ?」
「うん。待ってるよ。行っておいで」
隼人にひらりと手を振って、参道を奥へと歩いた。
参拝客は他に2、3組だけだ。御手水をして、賽銭箱の前に立つ。
財布の中から出した小銭を賽銭箱に放ると、鐘を鳴らし、二礼、二拍手、一礼。
今年も一年、みんな元気に過ごせますように。
隼人と香子ちゃんの挙式が、よいものになりますように。
手を下げかけて、思いつく。
ーー橘が、いい男に出会えますように。
「ーー政人?」
目を開け、手を降ろしたとき、女の声に振り返った。驚いたような顔で立つ、子どもの手を引いた女。
コートからでも分かるほど、腹部が膨らんでいる。
その顔には、どことなく見覚えがあった。
「……遠藤、佐知?」
小、中学校の同級生だ。男勝りで活発で、いつも進んで手を挙げるタイプの子だった。
「うっわ、久しぶりー!」
嬉しそうに笑いながら、バシバシと肩を叩いて来る。
「痛ぇよ」
「その顔、昔と変わんないー!」
佐知は近くに立つ男を振り返った。
「小学校の同級生。イケメンっしょ」
「そうだね。はじめまして。夫の松江です」
男は平均的な身長で、俺たちより少しだけ年上のようだった。
子供の一人を抱きかかえて、会釈する。
「お前の子供?」
「そりゃそうでしょ。4歳、2歳、で、もうすぐ3人目」
大きいお腹を指し示して佐知は笑う。その顔は幸せそうだった。
「俺たちもそんな歳かぁ」
「そうだよー。政人は……まだみたいだね」
佐知は俺の左手に目を留めて言った。
「ま、男の人はこれからだよね。政人ならいつでも相手見つかるっしょ」
「……だといいけどね」
苦笑すると、4歳の子供が佐知の手を引いた。
「おかーさん、ガラガラしたい」
「お父さんと行こう」
松江さんが子供の手を引いて賽銭箱へ近づく。俺は横に避けて道を譲った。
2
あなたにおすすめの小説
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
君に恋していいですか?
櫻井音衣
恋愛
卯月 薫、30歳。
仕事の出来すぎる女。
大食いで大酒飲みでヘビースモーカー。
女としての自信、全くなし。
過去の社内恋愛の苦い経験から、
もう二度と恋愛はしないと決めている。
そんな薫に近付く、同期の笠松 志信。
志信に惹かれて行く気持ちを否定して
『同期以上の事は期待しないで』と
志信を突き放す薫の前に、
かつての恋人・浩樹が現れて……。
こんな社内恋愛は、アリですか?
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
友達の肩書き
菅井群青
恋愛
琢磨は友達の彼女や元カノや友達の好きな人には絶対に手を出さないと公言している。
私は……どんなに強く思っても友達だ。私はこの位置から動けない。
どうして、こんなにも好きなのに……恋愛のスタートラインに立てないの……。
「よかった、千紘が友達で本当に良かった──」
近くにいるはずなのに遠い背中を見つめることしか出来ない……。そんな二人の関係が変わる出来事が起こる。
【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~
葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。
「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。
小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。
若くしてプロジェクトチームを任される彼は、
かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、
遠く、眩しい存在になっていた。
優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。
もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。
それでも——
8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。
これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる