モテ男とデキ女の奥手な恋

松丹子

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閑話(時系列については数字でご確認ください)

115.1 指輪の効力(『期待外れな吉田さん』公開記念/サリー視点)

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 大学時代のサークルで出会った二人が結婚することになった。新婦の香子は高校時代からの友人でもあり、楽しみに出かけた。
 新郎新婦と写真を撮ろうと、仲間と連れ立って高砂へ向かう。
「あれ、ざっきー兄だよね?」
 問うと、新郎であるざっきーはちらりと目線を向け、うんと頷いた。
「超かっこよくね。やばくね」
 隣で言うのは高校からの友人、幸弘。その隣で、彼の妻である早紀が穏やかに微笑んでいる。
「指輪してたよね」
 左手の薬指を示して言うと、ざっきーは苦笑した。
「女の人って目ざといね。よくあんな小さいの気づくよね」
「いや、気づくでしょ。見るでしょ。あんなイケメンやったら」
「サリーちゃん、タイプ?」
「ストライクゾーンど真ん中ですけど何か」
 寸分のためらいもなく答えると、新郎新婦は噴き出した。
「いやだってあの色気。やばいっしょ」
「ガチで観察すんのやめて。今、その弟の結婚式だからね」
 常識的なコメントはうちの代の部長だった相ちゃんだ。その腕の中には生後六か月のかわいい女の子。隣に立つその妻えみりんが、
「分かるわー。でも奥さんらしい人いないよね」
「お前もか」
 呆れる夫はそのままに、で、どうなのと新郎に詰め寄る。
「婚約中、ってとこかな。彼女が心配でつけて行けって言ったらしい」
 苦笑した新郎ざっきーの言葉に、女性陣が頷く。
「分かるわー。彼女の気持ち超分かる」
「あれ、なかったら行ってたかも」
「マジか。そんなに?」
「そんなに。だってみんな次々決まっちゃってさー、焦るー!」
 ちゃんと彼女の言いつけを守るくらいに、大事に思ってるということだろう。そういうところも素敵。残念だけど眼福と思ってその姿を目に焼き付けることにする。
 ただのスーツ姿なのに、やたらと目につく。長い手足に引き締まった腰回り。さらりと流れる黒い髪は特段ワックスなどで固めていない。多分弟と同じで変な癖がないのだろう。兄の方がやや髪が短めだが、足腰の筋肉の付き方から何かスポーツをやっていそうだ。日焼けしていないので室内スポーツだろうか。
 そこまで観察したとき、我ながら気持ち悪いなと気づいて反省する。
「ああ、だめだ。これ以上見るのやめとこう。もー誰かいい人紹介してー」
「サリー、何だかんだで注文多いんだもん。なかなか見つかんないよ」
 新婦の香子が笑った。
 新郎新婦は二人とも背が高くて和洋どっちも似合う。まだお色直し前だが、ドレス決めのときにつき合わせてもらったので、大きな着せ替え人形のように楽しませてもらった。
 写真を撮り終わって席につきつつ、嘆息する。
「あーあ、私の番はいつかなぁ」
 ついついぽろりと言うと、サークル一のチャラ男、ケイケイが手を挙げた。
「だから俺は?」
「断る。あり得ん。だったら独身で通す」
 そこまで言うかと男性陣が苦笑した。
 席につくと、たまたま目線の先にざっきー兄の席がある。嬉しいような悲しいような。だって手の届かない理想像がすぐそこに。とりあえず触るだけ触りに行ってみるか。いやそれはさすがに変態くさいからやめておこう。
 そんな葛藤を知ってか知らずか、サークル男子は次々ビール瓶を片手にざっきー兄に挨拶に行った。グラスを手に立ち上がり、次から次に注がれるそれを飲み干しながら、顔色一つ変えずに笑っている。営業でもやっているのかと思うくらいに人当りがいい。私だけではなく未婚女性、いや一部の既婚女性の視線も奪っている自覚はあるのかないのか。
 その隣に座るお姉さんもこれまた綺麗な人だった。バービーちゃんをリアルにしたらこんな感じかなと思う。あれ?でも私が空手やってたと言ったとき、姉もやってたとざっきーが言ってなかったか。それも有段者とかなんとか、とにかくかなりお強いとのこと。
 あの容姿で強いとか惚れるわー。女の私が惚れるわ。
 その更に隣には小学生くらいの男の子。その子を挟んで座るきりりとした顔立ちの男性が旦那さんか。背筋が伸びてきちっとしている。公務員とかそういう感じの生真面目そうな雰囲気だが、妻と息子に向ける目は優しく、これまた渋みを感じるいい男。
 --幸せそうでいいなぁ。
 私は思いながら、相変わらず立ってお酌を受け続けるざっきー兄に目線を戻した。
 顔立ちもさることながら、すらりと長い手も魅力的だ。私が言うことじゃないけど、あんなに色っぽくて大丈夫なんだろうかと心配になる。私だって事情が許せば襲いたいくらいだ。
 とりあえず妄想はこの辺で、ついついざっきー兄に吸い寄せられる目線を高砂に戻し、十年来の友人の幸せそうな笑顔を見やった。
 いつか、私もあそこで笑えますように。
 友達の幸せを祝福すると同時に、そう祈る自分がいた。



 * * *

 彩乃の杞憂はただの杞憂じゃなかったという話でした。
 サリーの話は『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』にて…(えらいテンションの高いヒロインのため、上記でも本人比では大人しめな文体です。そして割とがっつり政人たちの後日談が出てきます)
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