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もう終わった
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あの出来事の後、家に帰って荷物をまとめた。とても一人でいることに耐えれそうもなかった。電車で三十分かけて実家へと向かった。
何も言わずに帰ったので母は驚いていたが普段なかなか家に寄り付かない娘の帰宅に「ご飯は食べたの?」と嬉しそうに食事の準備を始めた。父親は居間でテレビを見ていたが寝静まった頃そっと心配そうに部屋を覗く気配がした。やはり親子だ。心配をかけてしまい申し訳なかったが、ありがたかった。そっと涙を流したがきっとバレていたかもしれない。
あくる日は週末ということもあり大忙しだった。里美は最寄り駅からから数駅離れた雑貨店で働いている。文房具からインテリアまで多くの商品を扱う店だ。革を使った商品も多く、良いものを長く使いたい客層に人気だ。季節はもう夏だ。しばらくの間売り場は落ち着いているだろうと思っていたがまさかの賑わいを見せている。数日前にあるテレビ番組の取材を受けたことも影響しているかもしれない。
「ごめんね、田中さん。もう少しいてもらえる?」
店長が申し訳なさそうに里美に声をかける。そんな店長の手には包装予定の商品が握られている。とてもじゃないがこんな状況で帰られるわけがない。
「大丈夫です! これ、私が包みます」
「お願いね」と言うと店長は在庫確認のため裏の方へ消えた。正直、ここまでバタバタしている方が良かった。いらないことを考えなくて済む。この店で働き始めてすぐ憲司と出会った。税理士になってすぐの駆け出しの頃だった。自分へのご褒美に革のメガネケースを買いに来ていた。欲しい色の在庫がなくちょうど後ろを通りかかった里美に取り寄せを依頼した。それがきっかけで付き合うことになったのだった。
あの時の二人は何も考えずに笑い合えたのに、どこから間違ったのかしら。
「すみません、これください」
「はい、ご自宅用ですか? プレゼント用ですか?」
懐かしい思い出に浸りながらラッピング作業をしているとレジに女子高校生がやって来た。里美は一気に現実に戻った。そこからはもう憲司のことは考えなかった。
家に帰る気がしない。朝から晩までろくに休憩も無く働きすぎて頭痛もする。昨日持ち出した荷物は実家に置いたままだ。里美はそのまま実家へと帰った。実家に着く前に母に連絡しようと電車の中で携帯電話を手に取ったが画面が真っ暗だった。昨日からずっと電源を切っていたことを思い出した。今日の昼休憩に入れようと思っていたのに忙しくてすっかり忘れていた。恐る恐る電源ボタンを押す。
もしかしたら、メールも何もないかもしれない。
着信も一件もないかもしれない。
一通だけあって、わかった……とだけ書かれているかもしれない。
画面を見る瞬間が恐ろしかった。
画面が明るくなりホーム画面が表示された。着信が十件、メールが八件あった……怖い。やはり見るんじゃなかった。胸が冷たくなるような気がして母にそちらへ向かうことをメールで送るとそのままカバンの中へと戻した。
お風呂に入り、自分のベッドへと早々に潜ると携帯電話を握りしめていた。勇気を出し着信履歴を見るとそれはやはり憲司からだった。記念日と、今日数回着信があったようだ。今まで里美が電話をかけても次の日までかけてこないこともあったのに、こんなにもかけてくるのが意外だった。嬉しいことのはずなのに心はどこか冷めていた。続けてメールを見ると全て憲司だった。
どこにいる
どういうことだ
何があった
電話でて
大丈夫か
家の前にいる
すまない
電話にでてくれ、頼むから
全てのメールに目を通す。なぜだろう涙が出てくる。私の事なんてどうでもいいくせに、放っておいていまさら宝物みたいに扱わないで。憲司なんて、もう愛していないのだから。
何も言わずに帰ったので母は驚いていたが普段なかなか家に寄り付かない娘の帰宅に「ご飯は食べたの?」と嬉しそうに食事の準備を始めた。父親は居間でテレビを見ていたが寝静まった頃そっと心配そうに部屋を覗く気配がした。やはり親子だ。心配をかけてしまい申し訳なかったが、ありがたかった。そっと涙を流したがきっとバレていたかもしれない。
あくる日は週末ということもあり大忙しだった。里美は最寄り駅からから数駅離れた雑貨店で働いている。文房具からインテリアまで多くの商品を扱う店だ。革を使った商品も多く、良いものを長く使いたい客層に人気だ。季節はもう夏だ。しばらくの間売り場は落ち着いているだろうと思っていたがまさかの賑わいを見せている。数日前にあるテレビ番組の取材を受けたことも影響しているかもしれない。
「ごめんね、田中さん。もう少しいてもらえる?」
店長が申し訳なさそうに里美に声をかける。そんな店長の手には包装予定の商品が握られている。とてもじゃないがこんな状況で帰られるわけがない。
「大丈夫です! これ、私が包みます」
「お願いね」と言うと店長は在庫確認のため裏の方へ消えた。正直、ここまでバタバタしている方が良かった。いらないことを考えなくて済む。この店で働き始めてすぐ憲司と出会った。税理士になってすぐの駆け出しの頃だった。自分へのご褒美に革のメガネケースを買いに来ていた。欲しい色の在庫がなくちょうど後ろを通りかかった里美に取り寄せを依頼した。それがきっかけで付き合うことになったのだった。
あの時の二人は何も考えずに笑い合えたのに、どこから間違ったのかしら。
「すみません、これください」
「はい、ご自宅用ですか? プレゼント用ですか?」
懐かしい思い出に浸りながらラッピング作業をしているとレジに女子高校生がやって来た。里美は一気に現実に戻った。そこからはもう憲司のことは考えなかった。
家に帰る気がしない。朝から晩までろくに休憩も無く働きすぎて頭痛もする。昨日持ち出した荷物は実家に置いたままだ。里美はそのまま実家へと帰った。実家に着く前に母に連絡しようと電車の中で携帯電話を手に取ったが画面が真っ暗だった。昨日からずっと電源を切っていたことを思い出した。今日の昼休憩に入れようと思っていたのに忙しくてすっかり忘れていた。恐る恐る電源ボタンを押す。
もしかしたら、メールも何もないかもしれない。
着信も一件もないかもしれない。
一通だけあって、わかった……とだけ書かれているかもしれない。
画面を見る瞬間が恐ろしかった。
画面が明るくなりホーム画面が表示された。着信が十件、メールが八件あった……怖い。やはり見るんじゃなかった。胸が冷たくなるような気がして母にそちらへ向かうことをメールで送るとそのままカバンの中へと戻した。
お風呂に入り、自分のベッドへと早々に潜ると携帯電話を握りしめていた。勇気を出し着信履歴を見るとそれはやはり憲司からだった。記念日と、今日数回着信があったようだ。今まで里美が電話をかけても次の日までかけてこないこともあったのに、こんなにもかけてくるのが意外だった。嬉しいことのはずなのに心はどこか冷めていた。続けてメールを見ると全て憲司だった。
どこにいる
どういうことだ
何があった
電話でて
大丈夫か
家の前にいる
すまない
電話にでてくれ、頼むから
全てのメールに目を通す。なぜだろう涙が出てくる。私の事なんてどうでもいいくせに、放っておいていまさら宝物みたいに扱わないで。憲司なんて、もう愛していないのだから。
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