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第一部
組長の見合い
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「はぁ?」
組長は清々しい朝を迎え屋敷で朝食をとっていた。そこへ爺がニヤニヤしながらやってきたのだが……。
まぁなんというか……◯◯の星とかの親父の気持ちがわかる。今すぐテーブルをひっくり返しこの素晴らしい朝を台無しにしたい。
「ふむ、やる気でうれしいのう」
「俺のどこ見てほざいてやがる。メガネ買ってやろうか」
目の前には清純そうな女が着物を着てポーズをとっている。いわゆる見合い写真だ。
「どうしてもと頼まれてしまってな……どうやら街で見かけたお前に心奪われたらしい」
「そいつにも買ってやらねぇとな」
どこでどうなってこのお嬢さんが切れ味鋭いヤクザの俺に心惹かれるのかさっぱりわからない。
パタンと見合い写真を畳むと爺に突き返す。
「俺は見合いはいい。他を当たってくれ」
「親父さんは明徳会の次期会長じゃ、断れんわい」
龍晶会と肩を並べるほど規模がでかい。向こうの親としては娘のこともあるがこれを好機ととらえたのだろう。
「やってらんねぇな……」
組長は食事の途中だが席を立つ。見合い話を持ってこられたのは今回が初めてじゃない。今回もいつものようにすっぽかすだけだ。
「すっぽかすと……どうなるかわかっとるな?着物を着た女性を長く待たせたら──」
こちらを振り返らない爺の背中から恐ろしいほどの怒気を感じる。年齢を重ねて小さくなったはずの爺の背中が大きく見える。こういうときの爺はマジだ。一度爺のお気に入りの盆栽をハート型に切り込んだ時を思い出す。
「……チッ」
組長は大きな足音を立てて部屋を出ていった。
◇
おかしい。
いつもの時間になっても組長が現れない。チラチラと時計を見る幸を光田が目で追う。
「何かあったのかしら」
「さぁ? まぁ、大丈夫ですよ──」
光田はヤクザの割に正直な男だ。幸と目を合わせようとしない。
「キツネちゃん、なんか隠してるでしょ」
「まさか!いや、俺正直、誠実、努力の男です!」
確定だ。いつから光田は大企業に勤め出したのか。
なかなか吐かない光田に幸はため息をつく。仕方がない……素早くポケットから携帯電話を取り出すと自撮りモードにして光田の顔に近づき素早く写真を撮る。その様子を見ていた光田がぽかんと口を開けている。
「……これで取引ね」
「先生、組長に似てきましたね……」
以前あまりに暇だったので町田と携帯電話でカメラのきせかえを利用してかわいいクマに変身したのだが、そのあと組長とも一緒に撮った際に町田と撮った画像が見つかり組長が拗ねた。
その日町田は壁をみつめながら鼻をすすっていた。光田が諦めたように話し始めた。
「俺が言ったのは内緒ですよ! その……今日組長は──お見合いです」
「……え?……あ、そうなんだ……」
予想を反する答えだった。
いや、別にいいんだけどね? 別に恋人同士じゃないし。ただ、ただなんかチクリとどこかが痛いだけ。
ドアが叩かれる音がした。
この音はきっと組長だ。どんな顔をして会おうかと考えていたが、ドアを開けた瞬間そんなことはすっかりと忘れてしまった。
「こんにちは」
「……こんにちは……」
ドアを開けるとピンクの花柄の着物を着た黒髪の可憐そうな少女と横には黒の高級スーツで決めた組長が仲良く立っていた。
組長は清々しい朝を迎え屋敷で朝食をとっていた。そこへ爺がニヤニヤしながらやってきたのだが……。
まぁなんというか……◯◯の星とかの親父の気持ちがわかる。今すぐテーブルをひっくり返しこの素晴らしい朝を台無しにしたい。
「ふむ、やる気でうれしいのう」
「俺のどこ見てほざいてやがる。メガネ買ってやろうか」
目の前には清純そうな女が着物を着てポーズをとっている。いわゆる見合い写真だ。
「どうしてもと頼まれてしまってな……どうやら街で見かけたお前に心奪われたらしい」
「そいつにも買ってやらねぇとな」
どこでどうなってこのお嬢さんが切れ味鋭いヤクザの俺に心惹かれるのかさっぱりわからない。
パタンと見合い写真を畳むと爺に突き返す。
「俺は見合いはいい。他を当たってくれ」
「親父さんは明徳会の次期会長じゃ、断れんわい」
龍晶会と肩を並べるほど規模がでかい。向こうの親としては娘のこともあるがこれを好機ととらえたのだろう。
「やってらんねぇな……」
組長は食事の途中だが席を立つ。見合い話を持ってこられたのは今回が初めてじゃない。今回もいつものようにすっぽかすだけだ。
「すっぽかすと……どうなるかわかっとるな?着物を着た女性を長く待たせたら──」
こちらを振り返らない爺の背中から恐ろしいほどの怒気を感じる。年齢を重ねて小さくなったはずの爺の背中が大きく見える。こういうときの爺はマジだ。一度爺のお気に入りの盆栽をハート型に切り込んだ時を思い出す。
「……チッ」
組長は大きな足音を立てて部屋を出ていった。
◇
おかしい。
いつもの時間になっても組長が現れない。チラチラと時計を見る幸を光田が目で追う。
「何かあったのかしら」
「さぁ? まぁ、大丈夫ですよ──」
光田はヤクザの割に正直な男だ。幸と目を合わせようとしない。
「キツネちゃん、なんか隠してるでしょ」
「まさか!いや、俺正直、誠実、努力の男です!」
確定だ。いつから光田は大企業に勤め出したのか。
なかなか吐かない光田に幸はため息をつく。仕方がない……素早くポケットから携帯電話を取り出すと自撮りモードにして光田の顔に近づき素早く写真を撮る。その様子を見ていた光田がぽかんと口を開けている。
「……これで取引ね」
「先生、組長に似てきましたね……」
以前あまりに暇だったので町田と携帯電話でカメラのきせかえを利用してかわいいクマに変身したのだが、そのあと組長とも一緒に撮った際に町田と撮った画像が見つかり組長が拗ねた。
その日町田は壁をみつめながら鼻をすすっていた。光田が諦めたように話し始めた。
「俺が言ったのは内緒ですよ! その……今日組長は──お見合いです」
「……え?……あ、そうなんだ……」
予想を反する答えだった。
いや、別にいいんだけどね? 別に恋人同士じゃないし。ただ、ただなんかチクリとどこかが痛いだけ。
ドアが叩かれる音がした。
この音はきっと組長だ。どんな顔をして会おうかと考えていたが、ドアを開けた瞬間そんなことはすっかりと忘れてしまった。
「こんにちは」
「……こんにちは……」
ドアを開けるとピンクの花柄の着物を着た黒髪の可憐そうな少女と横には黒の高級スーツで決めた組長が仲良く立っていた。
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