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しおりを挟む目覚ましの音で目を覚まし、枕元にあるスマホに手を伸ばす。
スマホを見ると、メッセージが届いていた。茅野だ。珍しい。
『おはよう』
ただその一言だけ。俺は首をかしげる。茅野はあまり文字のコミュニケーションをとりたがる奴ではない。メッセージを送る前にすぐに電話してくるし、既読無視もしょっちゅうだ。
『おはよう』
俺もメッセージを返し、ついでにスタンプも送る。するとまたメッセージが返ってきた。
『一緒に学校へ行こう。コンビニの前の信号で待ってる』
今までも部活から下校は一緒だったけど、朝は一人で登校していた。朝も茅野に会えるのか、と思うと自然に口元がにやついてしまう。
俺は了解、とスタンプを返した。
足早に家を出る。もう茅野がいるかもしれない。近頃は朝からもう暑い。アスファルトから照り返す熱気が強いのだ。
学校近くの信号の前で、茅野は立っていた。俺に気付き、笑顔を見せる。
あぁ好きだな。あの告白の後、もう親友どころか友達でもいられないと思ったとき、何とかこの気持ちを消そうと思っていたけど、きっと無理だ。こうして毎日顔を合わせる度に、俺はこいつを好きだと思ってしまうのだから。
「はよ。今日はどうした」
「おはよ。どうしたって、お前が言ったんだろ。恋人は一緒にいるもんだって」
「まぁ、そうだけど」
茅野は、ん、と手を出した。
「手つなごう」
俺は呆れた。もしかしてこいつ、俺が言った“恋人がすること”を全部こなそうとしているのか。
いや、こいつは本気なのだ。俺の良い恋人になる、と言っていた。やると決めたら全力。茅野怜とはそういう奴だった。
「いや、お前……こんなとこで。学校の奴らに見られるぞ」
おれはため息をつく。茅野はそんな俺に不服そうな顔をした。いや、可愛いな。
「茅野。普通に付き合ってる奴らだって、ずっと手つないだりしてるわけじゃない。それにお前、まさか隠さないつもりか、その、俺らが付き合ったこと」
「隠すのか?」
「俺ら、男同士だぞ。陰で何を言われるか分からないだろ。やめとこうぜ。ほら、行こう」
手を繋がずに俺が歩き始めると、茅野も付いてきた。
今日の部活は走り込みの日だな、とか、どうでもいい話をして歩く。俺は話しながらも、こっそりと茅野を見た。
自然と茅野の唇に目がいき、途端に昨日のことを思い返して、頬に熱が集まりそうになる。
お前は平気なのか。昨日はあんなに顔が近付いて、唇が重なったんだぞ。俺はとても平静でいられない。
学校が見えて、道を歩く生徒も多くなった。こんなところで手なんてつないでいたら、どうなっていたんだろう。
「千尋! 茅野!」
「あ、京島」
後ろから声をかけてきたのは京島だ。俺たちが二人で登校しているのを見て意外そうに目を丸くしている。
京島が合流し、そのまま三人で歩き始めると、茅野は分かりやすく無口になった。こいつはいつもそうだ。俺以外の誰かがいると口数が減る。
「おはよー。なに、お前ら。仲直りしたんだ」
「はよ。まぁな。悪かった、気ぃ使わせて」
「本当にな! こっちはめっちゃ気まずかったぞ。お前ら部活でも喋んねぇし。いやー良かったなぁ」
京島はバシバシと俺の肩を叩いた。確かにこいつにはそれなりに面倒をかけたので、割と痛いが抵抗せずに受け入れる。あの日以来、京島は俺たちの伝書鳩になってくれたり、教室でも俺がいないと一人になろうとする茅野を気にかけて話しかけていたのを見た。何よりも京島は茅野に対する俺の気持ちに気付いていた。俺たちが付き合い始めたことも、こいつなら感づくかもしれない。
そんな京島の手を、何も言わず茅野が掴んだ。
「ん? どうしたぁ、茅野」
「いや……別に」
そっかぁ、と言って京島は手をひっこめた。そのまま校門に着いて、教室に入った。
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