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幼馴染み襲来編
閑話 信頼
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女王陛下の恋人という配役はレオンから見ても絶妙の采配だった。自分でなければ、と注釈がつくが。
元貴族で現平民の宰相。もうすでに扱いが困る。爵位を授ければ問題は解決しそうだが、そうすれば計画は知られることになる。宰相となったあとに爵位と話をしようとしても、彼女は取り合わない。
そうなるだろうとレオンが見込んだ思った通りだ。
今、彼女は貴族ではない役人を増やしている。貴族だけで回る社会を切り崩すのだから、貴族にする必要がない。
それに抗議するものもいたが、仕事が回らない。国民の生活が脅かされている。役目を放り投げて退職した者たちの穴埋めで入れている。そんな反論に苦い顔で引き下がったという。
役職を辞すれば女王陛下がどうしてもと懇願してくると思っていたのだろう。その目論見が外れた。そして、空いた席には他の誰かを座らせている。
その結果といえば、庶民にも目をかける女王陛下への忠誠を誓うことになる。少なくとも多少の感謝は覚えるだろう。
着実に王城の勢力図を入れ替えている。
だからこそ、貴族も平民も刺激しない女王陛下の恋人として選ばれた。
光栄で腹立たしい。
そこにマシな点があるとすれば、ほかの誰よりも信頼されているということだろう。
自らの誇りを、自分自身を失ってなお生きていたくないという気持ちを理解するであろうと。
ひどく凪いだ表情にざわつく気持ちを押し込めて、諾と答えられたのは上等だろう。もし、その場面になったらレオンは確実に実行するつもりだ。死さえも救いになるということがあることを知っているから。
そして、それほどの嫌悪を持ちながら、ついていってしまうかもしれないと怯える気持ちを少し不思議に思った。
それを上回る怒りもあったが。
「それにしても皇帝本人が直接出歩くなんてな」
思わずつぶやく程度には驚きの出来事ではあった。実際、帝都を出たという情報が手元にやってきた。
帝国とは複数の属国で成り立っている。主のない間どのくらい持ちこたえるだろうか。皇帝として即位して間もあまりないという。先代からの忠誠心ある部下はいるだろうが、ほかの候補たちの親族も残っている。そして、属国にも火種は残っていた。
そういった情報はレオンの手元に集まっていた。情報としては多少古いにしても使えなくはない。こんなこともあろうかとと集めた情報ではない。
ローガンや他の者たちがせっせと用意してきたのだ。
これでなんとかなるだろう? と。
本来なら女王陛下の役目だろうが、今回に限っては期待できない。そう判断されている。それほどに、傷を残したことがあった。
それを語ることは許されてないんだとローガンはレオンを拝んで、どうか頼むといった。
ユリアは、お仕事ですよ。黙って持っていかせないでくださいよ? と凄んだ。
ごめんね、悪いと思っているよ、でも、姉さんを頼んだよ、とフィンレーが。
どいつもこいつも人を便利屋のように。そう思うところはあったが、情報は役に立つ。
「さて、どこから崩してやろうか」
帰るころには帰るところがないかもしれないが。
それは傲慢で盲目なのが悪いのだ。
元貴族で現平民の宰相。もうすでに扱いが困る。爵位を授ければ問題は解決しそうだが、そうすれば計画は知られることになる。宰相となったあとに爵位と話をしようとしても、彼女は取り合わない。
そうなるだろうとレオンが見込んだ思った通りだ。
今、彼女は貴族ではない役人を増やしている。貴族だけで回る社会を切り崩すのだから、貴族にする必要がない。
それに抗議するものもいたが、仕事が回らない。国民の生活が脅かされている。役目を放り投げて退職した者たちの穴埋めで入れている。そんな反論に苦い顔で引き下がったという。
役職を辞すれば女王陛下がどうしてもと懇願してくると思っていたのだろう。その目論見が外れた。そして、空いた席には他の誰かを座らせている。
その結果といえば、庶民にも目をかける女王陛下への忠誠を誓うことになる。少なくとも多少の感謝は覚えるだろう。
着実に王城の勢力図を入れ替えている。
だからこそ、貴族も平民も刺激しない女王陛下の恋人として選ばれた。
光栄で腹立たしい。
そこにマシな点があるとすれば、ほかの誰よりも信頼されているということだろう。
自らの誇りを、自分自身を失ってなお生きていたくないという気持ちを理解するであろうと。
ひどく凪いだ表情にざわつく気持ちを押し込めて、諾と答えられたのは上等だろう。もし、その場面になったらレオンは確実に実行するつもりだ。死さえも救いになるということがあることを知っているから。
そして、それほどの嫌悪を持ちながら、ついていってしまうかもしれないと怯える気持ちを少し不思議に思った。
それを上回る怒りもあったが。
「それにしても皇帝本人が直接出歩くなんてな」
思わずつぶやく程度には驚きの出来事ではあった。実際、帝都を出たという情報が手元にやってきた。
帝国とは複数の属国で成り立っている。主のない間どのくらい持ちこたえるだろうか。皇帝として即位して間もあまりないという。先代からの忠誠心ある部下はいるだろうが、ほかの候補たちの親族も残っている。そして、属国にも火種は残っていた。
そういった情報はレオンの手元に集まっていた。情報としては多少古いにしても使えなくはない。こんなこともあろうかとと集めた情報ではない。
ローガンや他の者たちがせっせと用意してきたのだ。
これでなんとかなるだろう? と。
本来なら女王陛下の役目だろうが、今回に限っては期待できない。そう判断されている。それほどに、傷を残したことがあった。
それを語ることは許されてないんだとローガンはレオンを拝んで、どうか頼むといった。
ユリアは、お仕事ですよ。黙って持っていかせないでくださいよ? と凄んだ。
ごめんね、悪いと思っているよ、でも、姉さんを頼んだよ、とフィンレーが。
どいつもこいつも人を便利屋のように。そう思うところはあったが、情報は役に立つ。
「さて、どこから崩してやろうか」
帰るころには帰るところがないかもしれないが。
それは傲慢で盲目なのが悪いのだ。
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